犬の白内障は、目の水晶体という部分が白く濁る病気です。
水晶体は主に「水」と「タンパク質」でできています。
そのタンパク質の代謝(新旧の入れ替わり)に異常が起きて、透明な状態を保てなくなります。
~水晶体とは?~
水晶体はピントを調節するレンズのような部分です。
人間の白内障=高齢者というイメージですが、犬の場合は若年性(6歳未満)が多いです。
遺伝的に白内障になりやすい犬種もあり、若年性の白内障は進行スピードが非常に速いため、1歳からでも注意が必要となります。
【注意】
若年性の場合、1~2週間で視力が一気に低下するケースもあります。
このぺージは犬の白内障の原因、症状、治療、予防についてわかりやすく説明していきます。
☑すぐに見たい項目があれば下の目次から選んでください
目次
白内障になりやすい犬種は?
犬種でいうと、
トイプードル、柴犬、雑種、チワワ、アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア、マルチーズ、シーズーといった犬種があげられます。
犬種の他にも、
・糖尿病の持病がある
・甲状腺機能低下症がある
という場合には、高確率で白内障を合併します。
特に糖尿病で高血糖があると白内障の進行が速いです。(糖尿病性白内障)
白内障の原因は?
犬の白内障は、大きく分けて「原発性白内障」と「後天性白内障」の2つがあります。
1.原発性白内障
原発性白内障は遺伝的な原因により発症します。
生まれつき症状が現れている場合や、比較的若い年齢で発見されることが多いのが特徴です。
先天性 : 生まれた時から
若年性 : 6歳未満で発症
【注意】
若年性の場合、症状が急速に進行することが多い。
1~2週間で視力が一気に低下することがあるため注意が必要です。
2.後天性白内障
後天性白内障には栄養性、老齢性、外傷性など様々な原因があります。
他にも糖尿病や甲状腺機能低下などの代謝性のもの、ブドウ膜炎のような他の病気が原因で起きる続発性のものがあります。
栄養性:ビタミンや必須アミノ酸などが不足して起きる
老齢性:加齢によって水晶体が変性して起きる
外傷性:ケガや紫外線で水晶体を傷つけて起きる
代謝性:糖尿病、甲状腺などの病気で代謝異常が原因になって起きる
続発性:他の目の病気が原因となって起きる
犬の白内障の症状
白内障は、進行度合いに応じて4つのステージに分けられます。
犬の白内障「4つのステージ」
~初発期~
水晶体の15%未満が混濁した状態です。
視力:ほとんど影響はなく、この段階で気付くのは少ないです
治療:点眼液やサプリメント
~未熟期~
水晶体の15%以上が混濁した状態です。
視力:混濁の箇所によって視力低下がみられます
治療:点眼液やサプリメント
~成熟期~
全体的に水晶体が白濁している状態です。
水晶体の脱水により、硬く縮小しはじめます。
視力:ほとんど見えなくなるので、あまり動きたがらないなどの症状が出ます
※光に対する反応はあり、近くで動くものには対応できることがあります。
治療:手術適応
~過熟期~
混濁がさらに強まります。
水晶体がずれたり、溶け出します。
たんぱく質起因性ぶどう膜炎によって網膜隔離、緑内障を続発することがある危険な状態です。
視力:完全に消失。「動きが慎重になる」「障害物にぶつかる」「はいつくばる」などの行動がみられるようになる
治療:手術適応
犬の白内障の進行スピードは?
一般的に老齢性白内障は通常は段階を経て、緩やかに進行していきます。
しかし6歳未満で発症する若年性白内障や糖尿病性白内障は急に進行します。
1週間から2週間で一気に成熟期まで重症化してしまうケースもあります。
また、一気に進行するタイプはブドウ膜炎などの合併症を引き起こすことが多いので特に注意が必要です。
犬の白内障の治療は?
白内障の治療は、症状の進行により内科的治療と外科的治療に分けられます。
白内障が早期であれば点眼薬とサプリで進行を遅らせることができます。
ただし、
現在白内障を完治させる方法は、手術しかありません。
逆に言うと、重度の合併症が出る前の早い段階で手術を行えば殆どが治ります。
手術を受けない場合は、白内障の進行を抑える目薬などを使いながら経過観察になりますが、失明や合併症のリスクが伴います。
しかしながら、手術は全身麻酔で行うので、犬の年齢や健康状態によって出来ない場合があるのです。
老齢犬だと、心臓病や腎臓病などの基礎疾患があるとリスクが高くなります。
ですので基礎疾患の有無、平均的な寿命を考えて愛犬にとって最善の方法を選ぶことになります。
内科的治療
初期段階の犬の白内障は、点眼薬を使った内科療法で進行を抑えることができます。
ただし、この治療では進行を遅らせることは望めますが、水晶体の白濁を取り除くことはできず、視力の回復は期待できません。
しかしながら、老齢犬で手術をするほうがリスクが高い場合もあります。
その時は水晶体の栄養となるサプリメントを飲ませながら、白内障進行防止の眼薬を使います。
●サプリメント ⇒ 抗酸化作用のあるアスタキサンチン等を主成分とするもの
●点眼薬 ⇒ Nアセテルカルノシン目薬(クララスティル)という点眼液を用います
今までの目薬治療は、ピノレキシン製剤(カタリン・カリーユニ目薬等)とグルタチオン製剤(タチオン・ノイチオン目薬等)がありました。
これらは水晶体のにごり(白濁)の予防と進行を遅れさせることを目的としたものですが、はっきりとした効果が認められているわけではありません。
しかしNアセテルカルノシン目薬『クララスティル』は、2010年9月に米国で特許承認され、その作用力が認められています。
ただし、『クララスティル』は非常に高価で飼い主さんの負担が大きいのがデメリットです。
そこで『クララスティル』に非常に近い成分(まったく同じではない)で、価格が1/4以下のシーナック(C-NAC)を使う方が増えています。
→シーナック(C-NAC)
シーナック(C-NAC)には『クララスティル』と同様にN-アセチルカルノシンが配合されています。
N-アセチルカルノシンは強力な抗酸化剤かつ抗糖化剤で、白内障の治療と予防の両方に使用できます。
外科的治療(手術)
現在、水晶体の濁りを取り除く為の根本的な治療は、外科手術だけです。
手術は一般の開業医ではできませんので、専門医を紹介してもらうことになります。
専門医にとって白内障の手術は比較的簡単で、成功例が非常に高く短時間で終わります。
入院も1~2日程度(ケースによっては1週間かかることも)で済みます。
ただし、どんな手術でも『全身麻酔のリスク』『合併症のリスク』があります。
特にワンちゃんの目は非常にデリケートで、手術が成功しても合併症を起こしてしまうことが少なくありません。
せっかっく手術で視力を取り戻したのに、合併症を起こしてお世話が大変になってしまったケースもあります。
手術によるベネフィット(良いこと)とリスク(危険性)について、主治医からしっかり説明を受けるようにしましょう。
十分に理解して、納得してから治療法を決めてください。
手術を選択した場合、まずは手術が可能かどうかを判断するために、眼底カメラで網膜や視神経に異常がないかを調べます。(ほかにも眼圧検査、血液検査、エコー検査など)
また、
- 重度の眼科疾患を併発している
- 全身麻酔に耐えられる体力がない
- 健康状態が悪い
- エリザベスカラーを装着できない
- 目薬の点眼ができない
という場合も手術ができません。
~白内障の手術手順~
・角膜を切開し、水晶体の嚢の一部を切り取る
::::⇓
・濁った水晶体を超音波で細かく砕きながら、吸引して取り除く
::::⇓
・人工レンズを挿入する
::::⇓
・切開した角膜を縫合して終了
⇑一般的に使われる人口レンズ(水晶体の大きさによって違うタイプを使うこともあります)
手術の費用
病院によって違いますし、ワンちゃんの状態によっても検査項目や手術難易度などが変わるので一概には言えません。
目安として、だいたい1眼あたり20~25万円前後、両目でなら40万円~50万円が相場とされています。
白内障の手術後管理
通常白内障の手術では1~2日入院します。
手術後は1週間通院が必要になるので、4~5日入院したままというケースもあります。
その後の1カ月間は週に1度のペースで通院して処置、観察をします。
~家での過ごし方~
白内障の術後は約30日間エリザベスカラーを24時間装着する必要があります。
また、感染症・合併症を起こさないように抗生物質の内服、点眼をします。
術後2週間くらいはお散歩は出来ません。
その後、お散歩は可能ですが、術後1か月は激しい運動を避ける必要があります。
犬の白内障は予防できる?
白内障に予防薬はありません。
ですので、できるだけ白内障を起こす原因を取り除くことが大切です。
具体的には、
- 長時間紫外線を浴びさせない
- 障害物のあるところで興奮させたり、ほかのワンちゃんとケンカさせない
- 酸化ストレスに対して、抗酸化作用のある食品やサプリを与える
- 早期発見
- 日頃の目のケア
などです。
白内障を予防するための食品・サプリ「抗酸化作用」
白内障の原因のひとつとされているのが酸化ストレスです。
抗酸化作用のある食材を積極的に与えて、酸化ストレスから愛犬を守ってあげましょう。
一番おすすめの食材は、鮭とサーモンです。
鮭やサーモンに含まれる赤い色素の『アスタキサンチン』は最も強力な抗酸化作用を持っています。
その強さはおよそ、β-カロテンの5倍、 CoQ10の800倍、ビタミンEの1000倍、 ビタミンCの6000倍と言われています。
出来れば新鮮な鮭・サーモンの切り身を食べさせてあげるのが良いですが、難しい場合はサプリメントを有効的に使います。
抗酸化作用のある栄養は他にもビタミンC(じゃがいも・さつまいも、かんきつ類)、ビタミンE(かぼちゃ、枝豆など)、カロテン(ニンジン、ほうれん草、かぼちゃなど)があります。
しかし穀物をワンちゃんに与える場合には、
・しっかり火を通す
・できるだけ小さく細かく刻む
ということを守って、消火不良を起こさないようにしてあげましょう。
白内障の早期発見「飼い主でもチェックできる?」
飼い主さんが早期の白内障を発見するのは非常に難しい、というか殆ど無理だと思います。
なぜなら、いくらチェックしても肉眼では白内障の兆候が見えないからです。
そして、「なんとなく眼が白っぽい」「歩くと障害物にぶつかる」「あまり動きたがらない」などの異変に気付いた時には既に成熟期くらいまで進行しています。
白内障を発症しやすい、トイプードル、柴犬、雑種、チワワ、アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア、マルチーズ、シーズーといった犬種を飼っている場合は専門の病院で定期的に検査を行うのがベストです。
白内障を予防するためのお手入れ(目薬)
白内障には外傷性のものがあります。
犬自身が目をこすって眼球を傷つけてしまうこともあるので、日頃のアイケア(目の周りのお手入れ)は大切です。
~犬のアイケア~
・目の周りの毛が入らないようにカットする
・目ヤニを拭いてあげる
・目ヤニの原因になる食事、花粉、ダニなどのアレルゲンを減らす
・白内障予防薬の点眼
内科的治療の項目でも書きましたが、白内障予防の目薬にはクララスティルが使われます。
クララスティルに含まれるN-アセテルカルノシンは強力な抗酸化剤かつ抗糖化剤で、目の水溶性部分と脂溶性部分の両方に浸透し細胞の損傷を修復、予防します。
クララスティル2010年9月には米国で特許承認され、その作用力が認められています。
ですがクララスティルは非常に高価な点がネックです。
そのため同様の成分で価格が1/4以下のシーナック(C-NAC)を使う方が増えています。
→シーナック(C-NAC)
目薬は「沢山させば効果が上がる」わけではありません。
使い方を間違えれば逆に副作用がでる危険もあります。
必ず用法・用量を守ってください。
アレルギーについてはこちらの記事をご覧ください⇓
→愛犬の低アレルギードライフードを選ぶポイントと原材料別一覧
→犬がしきりに耳をかくのはアレルギーかも?アレルギーの原因・症状・対策まとめ
犬の白内障を放置するとどうなる?
白内障を放置してはいけません。
ワンちゃんが失明するだけでなく、眼球を取り出さなければなくなります。
水晶体が溶け出したりして感染症などの様々な合併症を引き起こし、最終的には眼がつぶれてしまいます。
白内障は放っておいたら良くなることは絶対ないです。
必ず病院に連れて行ってください。
犬の白内障まとめ
では今回の内容をおさらいします。
- 白内障は水晶体が白く濁って視力が悪くなる病気
- 白内障になりやすい犬種はトイプードル、柴犬、雑種、チワワ、アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア、マルチーズ、シーズーなど
- 若年性の白内障の割合が多く6歳未満で発症する。その場合進行がとても速い
- 白内障の治療には内科治療(点眼、サプリ)と外科治療(手術)がある
- 内科的治療は進行を遅らせることができるが、根本的な治療はできない
- 手術は成功率が高いが、合併症のリスクもある
- 白内障の予防には「紫外線を避ける」「抗酸化物質を含む食品を与える」「目のケアをする」「早期発見」が大切
- 飼い主さんが白内障を早期に発見するのは無理なので、好発犬種を飼っている方は病院で定期的にチェックするのが良い
白内障の原因はまだよくわかっていないことがあるので、完全に防ぐのは無理です。
しかし、早期発見で病気の進行を遅らせたり、手術で治療することが可能です。
治療を進める時は、愛犬の体力や年齢を考慮して、ワンちゃんにとって最善の方法を選んでくださいね。