てんかん発作を起こしているワンちゃんの姿を見るのはとてもつらいです。
ほとんどの場合、発作が始まってしまったら静かに見守ることしかできません。
また、てんかんのお薬を飲んでいてもあまり効果がなかったり、どんどん薬の量や種類が増えていくことも少なくないのです。
しかし、そのような犬のてんかん発作を抑えるのに、さつまいもやアイスクリームが有効な場合があります。
なぜこれらの食べ物はなぜ症状をやわらげてくれるのでしょうか?
他にもてんかんに効く食べ物はあるのでしょうか?
そこで今回は「犬のてんかんに良い食べ物と栄養」についてご紹介していきます。
☑少し長い文章ですので、すぐに見たい項目があれば下の目次からお選び頂けます
てんかんの治療は抗てんかん薬で発作をコントロールすることが基本となります。
まずは病院での治療を優先し、お薬で改善が見られない場合や、お薬と合わせた対策として、てんかんに良い食べ物を取り入れてください。
目次
犬のてんかんに良い栄養と食べ物
●糖分補給にはさつまいもやアイスクリーム
●脂質補給には新鮮な油
●マグネシウム補給にはお魚や海藻
糖質
◆ 脳のエネルギーは糖だけ
犬や人間の脳が働くためにはエネルギーとして糖が必要です。
エネルギー源にはたんぱく質と脂質もあります。
ですが、たんぱく質や脂質をエネルギーに変えようとすると、たくさんの老廃物が出てしまい、脳にとっては非常に有害です。
そのため脳のエネルギーとして使えるのは糖だけになります。
◆ てんかん発作では糖が足りなくなる
てんかん発作を起こすと、脳の活動量が一気に増え、エネルギーの糖が足りなくなります。
すると、足りないエネルギーを補給するためにたんぱく質や脂質を使います。
その結果脳の中には急激に老廃物が溜まっていきます。
重い発作が起きた場合には老廃物が脳から出ることが出来ないため、脳にダメージを与えたり、後遺症が出たり、最悪のケースでは命を落としてしまいます。
◆ 日頃から糖分を十分に与えておくことが大切
てんかん発作が起きた時にも、糖分のエネルギー供給を十分に続けることが出来れば、ダメージを最小限に食い止められます。
◆ さつまいもやアイスクリームなどを与える
糖分をとるには人間が食べている甘いものを食べさせます。
さつまいも(焼き芋)やアイスクリーム、お米、あんこ、カスタードなどを利用するといいです。
さつまいもには良質な食物繊維が多く含まれるので、腸の働きも良くなります。
しかし、チョコレートのような中毒のあるものや、ワンちゃんが食べたくないものはあげないようにしてください。
さつまいもやアイスクリームが好きな犬は多いので使いやすいと思います。
フードのトッピングとして、少量からはじめます。
バニラアイスクリームなら一食につきおおさじ1~1.5くらいです。
脂質
◆ 脳の働きにはコレステロールが必要
体の中で一番多くコレステロールを持っているのは脳です。
コレステロールは脳の基本構造を支えている栄養で、てんかんのような神経の病気がある犬にはとても重要です。
てんかんは脳の一部に機能的な障害があるので、その機能を回復させる為に脂肪を十分に与えることが必要なのです。
一般的にワンちゃんには余分な油分を与える事はいけないように言われます。
しかし、その事がかえって「てんかんの症状を改善するのを妨げている」可能性もあります。
◆ 新鮮な油が大事
サラダ油(リノール酸)、オリーブ油(オレイン酸)、魚の脂(DHA、EPA)をそれぞれ一滴ずつフードにかけて与えます。
一度にたくさんあげるとワンちゃんのお腹がゆるくなることが多いので注意します。
急にたくさんあげるのではなく、毎日新鮮な油を少しずつ与えるのが大切です。
魚の脂は新鮮なお魚を食事としてあげても良いです。
マグネシウム
◆ マグネシウム不足で牛や羊に発生する「グラステタニー」
グラステタニーとは痙攣(けいれん)や興奮などの神経症状が現れる病気です。
マグネシウム不足の牛や羊に起こります。
今のところマグネシウム不足で犬が発作を起こす事は証明されていませんが、マグネシウム剤だけの投与で、発作がなくなったケースは数多くあります。
◆ マグネシウムを摂っても尿路結石の心配はない
昔はフードに入っているマグネシウムの量が多すぎることが原因で結石ができると言われてきました。
しかし、現在ではワンちゃんの尿路結石症の殆どは、尿路感染症によって起こると考えられています。
一方、最近では「人間の成人病がマグネシウムの摂取不足からきているのではないか?」という研究がされるほど体にとって非常に重要なミネラルと考えられています。
尿路結石の心配はありませんので、てんかんのあるワンちゃんには十分なマグネシウムの補給が必要です。
◆ お魚や海藻を与える
マグネシウムの摂取には、お魚や海藻類、にがりなどが有効です。
ただしにがりを与える場合、体重に対しての量を計算しなければなりません。
たくさん与えると下痢になります。
また、お魚をあげる時には骨を取り除きます。
骨に含まれるカルシウムがマグネシウムの吸収を邪魔しますし、喉や気管に刺さってしまうことがあります。
体重増加が気になる場合はフードの量を調節する
ここに挙げた食べ物を与えてもワンちゃんの体に悪影響を及ぼすことはありません。
しかし慣れないものを一度にたくさんあげすぎるとお腹がゆるくなったり下痢・嘔吐の原因になるので注意が必要です。
また、今までのフードにトッピングするわけですので摂取カロリーが増加します。
体重が気になるワンちゃんはフードの量を減らして調節しましょう。
犬のてんかんにヨーグルトは効く?
ネットには犬のてんかんにヨーグルトが効果的という情報が出ています。
愛犬のダックスフントの発作が数か月に一度だったのが、どんどん間隔が短くなり、1ヶ月に1回起きるようになりました。
薬の種類も増えていき、それでも改善しないので病院を変えました。
新しい病院で先生に「薬を減らして、スプーン一杯のヨーグルトを朝晩にあげるようにしましょう」と言われたんです。
しばらくヨーグルトを続けているとそれから発作が出なくなり、もう2年くらい発作がありません。
というように、ヨーグルトでワンちゃんのてんかんが良くなったという体験談もいくつかあります。
本当にヨーグルトはてんかんに効くのでしょうか?
ヨーグルトはビタミンB6が増えるからてんかんに良い?
ネットのあるサイトには、
「ヨーグルトの乳酸菌によって腸内環境を整えてあげると、ビタミンB6がたくさん合成されて、てんかんの改善が期待できるのです。」
と書かれていました。
例えば、West症候群(ウエスト症候群)という小児のてんかんでは、薬以外の治療法としてビタミンB6(大量)療法がおこなわれ、点頭てんかん発作に対して抑制効果があります。
点頭てんかん発作とは、突然頭を前に倒してうなずくような仕草をしたり、体を折り曲げるようにお辞儀をしたり、両上肢を振り上げたりする発作です。
ヨーグルトを少し食べた程度でビタミンB6が大量に増えるのかはわかりませんし、ビタミンB6が犬のてんかんに有効かも不明です。
しかし、ヨーグルト自体はワンちゃんの体に特に害はありません。
発酵により乳糖の一部が分解され、また乳酸菌には乳糖の分解を助ける機能もあるので、牛乳と比べるとお腹を壊す確率は低いです。
ヨーグルトには腸内環境を整える効果も期待できるので、たくさんあげすぎないように注意すれば、試してみる価値はあると思います。
ただし、たくさんあげれば必ず良くなるというものではありません。
あくまでも補助的な方法と考えてください。
てんかんの発作は脳にダメージを与える
てんかん発作を起こしているワンちゃんの姿を見るのはとてもつらいです。
ほとんどの場合、発作が始まってしまったら静かに見守ることしかできません。
でもかわいそうなのは発作の様子だけではなくて、発作が脳にダメージを与えることです。
飼い主さんはどうにかして発作を抑えることができないかと、一生懸命考えていると思います。
お薬が効いていて、発作が収まっているのならいいのですが、もしも改善が見られないなら別の方法も合わせて考えるのがいいのではないでしょうか。
食べ物のトッピングは与え過ぎに注意すればワンちゃんの体に負担もかけず、栄養を補ってくれるのでプラスになることはあってもマイナス面はありません。
みなさんの愛犬の症状が少しでも良くなることを願っています。
~犬のてんかん発作が起きた時の注意点~
・あわてて抱き上げたり、起こしたりしない
・声をかけず、音が出るものは切って静かな環境にする
・部屋を暗く、涼しくする
・いつもより長く続いたり、1日に何回も起こすなら病院に連絡する
・可能なら発作の様子を動画で撮影しておく