皮膚が赤い、顔を引っ掻く、毛がパサパサ、薄毛…
愛犬の皮膚や被毛のトラブルで悩んでいる飼い主さんは多いです。
犬の被毛は皮膚の健康状態に左右されるので、被毛を改善するには皮膚を健康にする必要があります。
そして皮膚を健康を維持したり改善するには、
・身体の害になる物質をとらない
・十分な栄養
・腸の健康
・免疫力UP
・ストレスをためない
・日頃のお手入れ
などが重要です。
生まれつきのアレルギー体質でも、生活環境の改善やストレス発散、食事の見直しでお薬を使わなくていい状態まで改善するワンちゃんはたくさんいます。
このページでは、「犬の皮膚・被毛トラブルの原因」と対処法で特に重要な「食事対策」を紹介します。
なお犬のアレルギーについてはこちらの記事を参考にしてください。
→犬のアレルギーの原因・症状、対策について(編集中)
☑すぐに見たい項目があれば下の目次よりお選び頂けます
目次
犬の皮膚・被毛トラブルの原因
ワンちゃんの皮膚や被毛トラブルの主な原因は以下のようなものです。
・必要な栄養素が不足している
・ お手入れ不足
・ アレルギー(ハウスダスト、食物、ノミ・ダニなど)
・ 皮膚病
・ 腎臓、肝臓機能が低下している
・ 腸内環境のバランスが悪い
・ 生まれつきの体質(アトピー)
愛犬の皮膚や毛並みが気になったら、まずは病院で診察してもらい原因を確かめましょう。
ただし、重度の場合はお薬による治療も必要になってきますが、皮膚や被毛のトラブル改善はご自宅でのケアが中心になります。
皮膚・被毛トラブルを改善するポイント
① 食事(ドッグフード)の見直し
皮膚や被毛の健康に必要な栄養をしっかりと食べさせてあげましょう。
添加物が入っていたり、小麦、じゃがいも、トウモロコシがたくさん入っているものは悪影響になる可能性が高くなります。
栄養成分やドッグフードについては後ほど詳しく説明します。
② 腸内環境の改善、免疫力を高める
腸内環境のバランスが崩れると皮膚や被毛にトラブルが出てくることが多いです。
腸の働きが落ちるとせっかくの栄養も身体に吸収してくれません。
それから、腸は異物や病原菌が取り込まれるのを防御する働き、体の免疫機能に重要な役割をしています。
免疫力の低下でアレルギーや皮膚・被毛トラブルが引き起こされやすくなると言われています。
免疫力のアップには腸内環境を整える食べ物・栄養を適量食べたり、ストレスをためず、発散することが重要です。
腸内環境を改善する食べ物は、さつまいもやりんごなどの食物繊維や乳酸菌、オリゴ糖などです。
ただし、たくさん食べれば良くなるわけではありません。
少しずつトッピングしたり、これらの食材が使われているフードを適量与えることから始めます。
③ ストレスをためない、発散する
先ほどお話しましたが、腸の健康と免疫機能にはストレスがとても関係しています。
人間や犬にとって腸は第2の脳と言われており、ストレスがかかると腸の働きが悪くなります。腸の機能が落ちると腸内環境が悪化し、皮膚の健康に悪影響になります。
また、ストレスがかかり過ぎるとストレスホルモンが過剰に分泌され、免疫力の低下を引き起こします。
「毎日お散歩してるからストレスは大丈夫」と思っている方は多いかもしれませんが、散歩は人間のペースになりやすく、周りの刺激も強いため案外ストレスの発散になっていない場合があります。
時間がある時には自然が多く安全な広場に連れて行き、思い切り自由に遊ばせてあげましょう。
犬のストレスには気付きにくい意外な原因もあります。
<犬のストレスになる意外な原因>
・飼い主さんが留守にしている日中、家の外がうるさい(車通りが激しい、工事の音など)
・撫でられて嬉しそうにしているように見えて、実は我慢している
・飼い主さんの落ち込んだ表情、喧嘩 …など
④ 犬の生活環境を清潔にする
チリやホコリ、ハウスダスト、ノミ・ダニなどはアレルギーの原因になったり皮膚病にかかる原因になります。
みなさんは犬の生活する部屋やケージの中をキレイに掃除していらっしゃると思いますが、部屋の空気を頻繁に入れ替えることも大切です。
外の花粉やチリなどを気にする方が多いですが、室外飼いより室内飼いのアレルギーが多いという話もあり、ハウスダストの影響が大きいと考えられます。
また、空気清浄機もかなり効果的です。
例えば高齢で皮膚が弱くなったワンちゃんに、空気清浄機を使ったところ、かなり症状が改善されたというケースは珍しくありません。
正直言ってどのメーカーの空気清浄機が良いのかはわかりませんが、最近の機種にはペット臭対策の機能が付いたタイプもあります。
⑤ ブラッシング、シャンプー
ブラッシングをして死毛(弱って抜けた毛、抜けそうな毛)を取り除くと皮膚への風通しが良くなります。
マッサージ効果もあるので皮膚の血流が良くなったり、ホコリやノミ・ダニを取り払うこともできます。
お散歩から帰ってきた時にはブラッシングをして草むらでついたノミ・ダニ、花粉を取り払ってあげましょう。
シャンプーを定期的にすることが大切ですが、洗いすぎは逆に皮膚炎の原因になります。
また、使用するシャンプーですが、犬の皮膚に常在しているマラセチアという真菌を駆除する皮膚疾患治療用のマセラブシャンプーというものがあります。
→マラセブシャンプー(Malaseb Medicated Shampoo)
抵抗力が落ちているワンちゃんは、マラセチア真菌が異常繁殖し、強い痒みや皮膚の赤化、皮膚の黒ずみなどの症状が出てきます。
マセラブシャンプーの有効成分「ミコナゾール硝酸塩」と「クロルヘキシジングルコン酸塩」でマラセチア真菌を駆除できます。
対処法はどれか一つをやればいいものではありません。
焦らずに小さな積み重ねをコツコツしていきましょう。
皮膚・被毛に良い栄養とは?
① たんぱく質
たんぱく質は人間や犬の筋肉、骨、内臓、血管、皮膚・被毛など、体を作るもとになる重要な栄養です。
犬の場合は食事で摂ったたんぱく質の約30%が皮膚・被毛の健康にために使われると言われていますので、かなり影響が大きいです。
栄養の基準であるアミノ酸スコア的にパーフェクトに近いのがお肉やお魚、つまり動物性たんぱく質です。
しかしお肉もお魚もダメな場合は植物性たんぱく質のフードもありますので安心してください。
② ビタミンA、B群
◆ ビタミンA
不足すると細胞が乾燥し、皮膚や被毛の潤いがなくなります。
レバーや内臓などに多く含まれますが、犬の場合ニンジン、カボチャに多いβカロチンを体の中でビタミンAに転換することができます。
◆ビタミンB群
皮膚の水分を保ったり、皮膚の細胞の再生を促したり、炎症を抑えてくれたりします。
お肉やレバーなどに多く含まれますが、ビール酵母にもたくさん入っています。
ビール酵母にはビタミンB群の他に、体内では作れない必須アミノ酸、たんぱく質、ミネラル、食物繊維も豊富で、胃腸の働きを助けてくれる効果もあります。
③ オメガ3脂肪酸(DHA、EPA、αリノレン酸)
オメガ3脂肪酸は体内で作ることができない必須脂肪酸です。
必須脂肪酸が不足すると皮膚・被毛が乾燥して、かさつき、かゆみ、被毛がパサパサになるなどの症状が出ます。
オメガ3脂肪酸は炎症を抑える作用もあり、皮膚炎や関節炎などの治療に利用されます。
またDHA、EPA、αリノレン酸は血管に張り付いたコレステロールを取り除き、血管を柔らかくしたり血液の流れをスムーズにしてくれる作用があり、動脈硬化の予防もあります。
さらにアルツハイマー病、認知症の予防にも効果が期待されている栄養成分です。
サーモン、青魚、亜麻仁、えごま油、海藻などに多く含まれます。
出来ることなら新鮮な鮭、サーモン、アジ、イワシなどを与えるのが一番ですが、、、
毎日忙しいのに、魚を調理して与えるのはかなり負担です。
そんな時はサプリメントを効果的に使いましょう。
グリズリーのサーモンオイルオメガ3は、アラスカの高品質なサーモン由来でワンちゃんの身体に優しいオイルです。
④ 亜鉛
亜鉛は皮膚を構成しているコラーゲンとケラチンの合成に必要なもので、皮膚・粘膜の健康維持に欠かせません。
亜鉛が不足すると細胞の活性化が下がるので、被毛の発育が悪くなったり、脱毛の原因になります。
また免疫細胞の活性化にも関係しているので、不足すると免疫力の低下を引き起こします。
通常はドッグフードに入ってる量で十分ですが、原材料に穀物が多すぎると体に吸収されにくくなり不足する場合があります。
栄養を効率良く吸収するために
皮膚・被毛の健康を維持するためには栄養を効率よく吸収する必要があります。
犬はお肉・お魚といった動物性たんぱく質の消化吸収は大変得意ですが、小麦・とうもろこしなどの穀物、食物繊維の消化が苦手です。
特に原材料が穀物中心になっているドッグフードは胃腸に負担をかけてしまいます。
消化器官に負担がかかれば、せっかくの栄養を吸収する力も落ちますし、腸内環境も悪化して皮膚・被毛に悪影響です。
腸内環境を整えるには?
腸の悪玉菌、善玉菌のバランスが崩れ、腸内環境が悪化すると消化能力も落ちますし、免疫力も低下して皮膚や被毛にトラブルが出てしまいます。
消化吸収が良く胃腸に負担のかからない動物性たんぱく質を中心に、適度な食物繊維を摂ることで腸内環境を整えます。
さつまいもやリンゴ、トマト、バナナなどのワンちゃんの体に優しい食物繊維は、排便を促したり、腸の善玉菌のエサとなるので腸内環境の改善に役立ちます。
また、乳酸菌、ビフィズス菌(プロバイオティクス)、オリゴ糖(プレバイオティクス)、ビール酵母なども腸内環境を整える働きがあります。
プロバイオティクス | 腸内環境に良い影響をあたえる生きた微生物、またはそれを含む食品 |
プレバイオティクス | 善玉菌のエサになったり善玉菌を増やす食品 |
皮膚・被毛ケア用フードを選ぶポイント
ここまでの内容を踏まえると、皮膚・被毛トラブル用のドッグフードを選ぶポイントは次の8つになります。
① お肉・お魚が主原料のものを選ぶ
② 穀物の割合が少ないもの、穀物不使用のグレインフリーを選ぶ
③ 副産物や調味料、香料、保存料などの添加物が入っていないものを選ぶ
④ 原材料がシンプルなものを選ぶ
⑤ オメガ3脂肪酸がたっぷり入っているものを選ぶ
⑥ 犬に負担がかからない食物繊維が入っているものを選ぶ
⑦ さつまいも、テンサイ、リンゴなどの食物繊維、酵母、乳酸菌、オリゴ糖が入っているものを選ぶ
⑧ ビタミン・ミネラルのバランスが良いものを選ぶ
市販のドッグフードではビタミン・ミネラルは適量入っているので不足することはありません。
※ただし、何らかの原因で不足している場合は医師と相談してサプリメントを併用することもあります。
市販されている皮膚・被毛ケア用ドッグフード
先ほどのポイントを踏まえ、市販されている皮膚・被毛ケア用ドッグフードの中から3つご紹介します。
『必ずこれを使わなければいけない』というものではないので、ワンちゃんの体質や好みに合わせてベストマッチするものをお選びください。
1)ナチュラルハーベスト カロン
・原産国:アメリカ
・カロリー:354㎉/100g
・粗たんぱく質:27%
・脂質:14%
・オメガ6脂肪酸:2.7% オメガ3脂肪酸:1.2%
・対象年齢:オールステージ対応
【主な原材料】
玄米、ターキーミール(低灰分)、α化米、菜種油(ビタミンE、クエン酸で酸化対策済)、ホエイプロテイン、ビートファイバー、加水分解チキンエキス、鶏軟骨、亜麻仁 など |
ナチュラルハーベスト カロンは良質なタンパク質や必須脂肪酸等により、皮膚・被毛トラブルをサポートする玄米、ターキーミールがベースです。
2)FORZA10(フォルツァディエチ) デルモアクティブ 小粒
・原産国:イタリア
・カロリー:347㎉/100g
・粗たんぱく質:26%
・脂質:13%
・オメガ6脂肪酸:3.5% オメガ3脂肪酸:1.2%
・対象年齢:成犬、シニア犬
【主な原材料】
ポテト、魚粉(ニシン21%以上)、コーン油、魚油、ビートパルプ、ミネラル(Ca・P・Na・K・Mg・Zn・Fe・Se・I・Cl・S・Cu)、 BioMOS(マンナンオリゴ糖)、FOS(フラクトオリゴ糖) など |
デルモアクティブは、犬の食物による皮膚トラブルや 過敏症を軽減するためにイタリアで研究開発されました。
ヨーロッパ食餌療養法の認証を受けた「食物原材料過敏症の改善と皮膚病および激しい抜け毛の際のサポート用」のドッグフードです。
イタリアのドッグフードは珍しいですよね。
このドッグフードの特徴は2種類の粒が入っていることです。
丸い粒とハートの粒が入っているのわかりますか♡?
ハート粒には、ごぼう・アロエベラ・クロフサスグリ・ゼニアオイという4つの植物栄養素とオメガ3脂肪酸が配合されています。
いわゆる漢方的な考え方で体質を改善して症状を緩和していくドッグフードです。
※メーカーでは妊娠中・授乳中のワンちゃんにはお勧めしていません。
※8㎏入りは中粒になります。10〜12mm(厚さ 4〜5mm)
小粒 ⇒ 6〜7mm(厚さ 3〜4mm)
3)ナチュラルバランス ベジタリアンフォーミュラ
・原産国:アメリカ
・カロリー:331㎉/100g
・粗たんぱく質:18%
・脂質:8%
・対象年齢:オールステージ対応
【原材料】
玄米、オートミール、大麦、グリーンピース、ポテトプロテイン、キャノーラオイル、ポテト、トマト、自然野菜風味、レシチン、亜麻仁 など |
ベジタリアンフォーミュラは動物性たんぱく質を一切使用していないドッグフードです。
たんぱく源は良質なじゃがいもとオートミールです。
オートミールは燕麦(えんばく、オーツ麦のこと)というイネ科の穀物を脱穀したものです。
ミネラルやビタミンE、Bを豊富に含んでおり、良質な脂質やたんぱく質も摂取できます。
オーツ麦や大麦は基本的に小麦アレルギーには関係がないと言われています。
このフードに使われているキャノーラオイルや亜麻仁(あまに)には、良質なオメガ3脂肪酸が含まれています。
皮膚や被毛の対策は効果が出るまで時間がかかる
犬や猫の皮膚は約21日周期で新しいものに生まれ変わると言われています。
しかし皮膚の再生能力が低下していたり、免疫力が落ちている場合もっと時間がかかります。
ですので、新しいドッグフードにしたからといってもすぐに効果が出るわけではないんです。
食事だけでなく生活環境の見直しや日頃のケアをトータルで行い、長い目で見て体質改善していければいいのではないでしょうか。
ただし、新しいドッグフードやおやつで不調や異変が見られた場合は要注意です。
ドッグフードを変更すると一時的に調子が悪くなるワンちゃんはいますが、3日くらい経過しても不調があるのはおかしいです。
「変えたばかりで体が慣れていないのかな」と油断せず必ず病院・医師に相談しましょう。