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05 お別れ

犬の安楽死:判断の材料と、家族で話しておくこと

この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。

この記事のポイント

  • 日本獣医師会の「小動物医療の指針」は、治る見込みがなく苦痛を伴う場合などに安楽死を認め、獣医師と飼い主が十分に話し合ったうえで、飼い主の意思で決めるとしています。
  • 安楽死を選ぶことも、選ばずに最期まで見守ることも、どちらも愛犬を思っての選択です。正解は家族ごとに違います。
  • 判断の材料は、獣医師から聞く病気の見通しと、痛み・食事・排せつ・動けるかといった毎日の様子です。医学的な判断は、かかりつけの獣医師に相談してください。
  • 元気なうちに、家族で「何を大切にしたいか」「立ち会うか」「亡くなったあとどうするか」を話しておくと、いざというときの迷いが少し軽くなります。

犬の安楽死は、治る見込みがなく苦しみが続くときなどに、獣医師と飼い主が十分に話し合ったうえで、飼い主が決めるものです。日本獣医師会の「小動物医療の指針」も、そのように定めています。安楽死を選ぶことも、選ばずに最期まで見守ることも、どちらも愛犬を思っての選択で、まちがいはありません。この記事では、判断の材料、家族で話しておくこと、当日の流れと費用の例をまとめます。

犬の安楽死とは?

犬の安楽死とは、病気やけがで苦しみが続き、回復が見込めない犬に、獣医師が薬を使って、痛みのない形で命を終えてもらうことです。

日本獣医師会の「小動物医療の指針」では、安楽死について次のように定めています。

  • 治る見込みがなく苦痛を伴う場合や、重い運動障害・機能障害がある場合など、動物福祉の観点から適当と考えられるときは、安楽死が認められる
  • 獣医師は、飼い主と十分に話し合い、飼い主自身の意思と決定のもとで行う
  • どんな場合も、安楽死は最終的な選択肢であり、飼い主と獣医師が十分に話し合って決めるべき重要な問題である

出典:公益社団法人 日本獣医師会「小動物医療の指針」11(3)(2026年10月23日に確認)

つまり、獣医師が一方的に決めるものでも、飼い主がひとりで抱えるものでもありません。迷っていることも含めて、かかりつけの獣医師に話してかまいません。

安楽死を考えるのは、どんなとき?

安楽死を考えるきっかけは、家族によってさまざまです。たとえば、次のようなときに考えはじめる人がいます。

  • 治療を続けても、回復が見込めないと獣医師から説明を受けた
  • 痛みや呼吸の苦しさを、薬で十分に和らげられなくなってきた
  • 食べる・水を飲む・排せつする・寝返りをうつことが、自分ではほとんどできなくなった

どんな状態なら安楽死を考えるかという医学的な判断は、犬の病気や状態によって大きく違います。この記事では基準を決めることはしません。かかりつけの獣医師に「先生なら、どんな様子を目安にしますか」と聞いてみてください。

判断の材料になるのは?

獣医師から聞いておきたいこと

コーネル大学の猫の健康センターは、安楽死を考える前に、獣医師に次のようなことを聞くよう勧めています。犬でも同じように役立つ問いです。

  • いま、この子は苦しんでいるか
  • どんな治療があり、費用はどのくらいか
  • 治療で何ができるか(治る、痛みが和らぐ、時間が延びる)
  • 家でどんな世話が必要になるか

そのうえで、「この子は毎日を心地よく過ごせているか」「治療でそれは良くなるか、つらくなるか」を、家族で考えてみることが勧められています。

出典:Cornell Feline Health Center「Euthanasia: What to Expect and What Questions to Ask First」(2026年10月23日に確認)

毎日の様子を記録する

米国の獣医師ビジャロボス氏が考えた生活の質の目安(HHHHHMMスケール)では、次の7つの面から犬の様子を見ます。

見ること内容の例
痛み(Hurt)痛がる様子、呼吸の苦しさ
食欲(Hunger)自分で食べられるか
水分(Hydration)水を飲めているか
清潔(Hygiene)排せつ物で体が汚れていないか、床ずれ
楽しさ(Happiness)家族に反応するか、好きなことに興味を示すか
動けるか(Mobility)立つ、歩く、寝返りができるか
よい日が多いか(More good days than bad)よい日とつらい日、どちらが多いか

出典:MSD Veterinary Manual「The HHHHHMM Scale」(Villalobos AE, Veterinary Practice News, 2004 をもとにしたもの)(2026年10月23日に確認)

この表は、安楽死を決めるための点数表ではありません。カレンダーに「よい日」「つらい日」と印をつけていくだけでも、家族で話すときや、獣医師に相談するときの手がかりになります。

家族で話しておくことは?

安楽死を考える時期は、気持ちが大きくゆれます。できれば、まだ落ち着いているうちに、家族で次のことを話しておくと、いざというときの迷いが少し軽くなります。

  1. 何を大切にしたいか:少しでも長く一緒にいたいか、苦しむ時間をできるだけ短くしたいか。どちらも自然な気持ちです。
  2. だれが決めるか:家族の意見が分かれたとき、最後にだれが決めるか。決めた人を、ほかの家族が責めないことも約束しておきます。
  3. 立ち会うか:最期をそばで見届けたいか、お別れだけして待っていたいか。人それぞれでかまいません。
  4. どこで見送りたいか:病院か、往診に来てもらって自宅か。
  5. 亡くなったあとどうするか:火葬の方法、遺骨をどうするか。
家族で話しておく5つのこと(何を大切にしたいか、だれが決めるか、立ち会うか、どこで見送りたいか、亡くなったあとどうするか)を書いたメモの絵
落ち着いているうちに、5つのことを家族で一度ことばにしておくと、迷いが少し軽くなります。イラスト:いぬのながいき手帖

家族のあいだで意見が違うのは、めずらしいことではありません。全員が同じ気持ちになるまで待つ必要はありませんが、それぞれの思いを一度ことばにしておくと、あとで「話を聞いてもらえなかった」という気持ちが残りにくくなります。

国内の研究では、治療について家族と前もって話し合っていた人は、ペットを亡くしたあとの心の不調が少ない傾向だったと報告されています。くわしくはペットロスとの向き合い方を読んでみてください。

子どもがいる家庭では、子どもにどう伝えるかも話しておきましょう。コーネル大学の資料は、「眠らせる」といったぼかした言い方は、子どもを混乱させることがあると注意しています。

当日はどんな流れ?

当日の流れは、動物病院によって違います。米国の大学の動物病院が公表している説明では、おおむね次のような流れです。

  1. お別れの時間:処置の前に、家族でゆっくりお別れをする時間をとってもらえることが多いです。
  2. 鎮静:まず、気持ちを落ち着かせて眠らせる薬を使います。
  3. 処置:次に、心臓を止める薬を使います。獣医師が聴診器で心臓が止まったことを確かめて、家族に伝えます。
  4. そのあと:亡くなったあとも、しばらく一緒に過ごせることがあります。

出典:University of Illinois College of Veterinary Medicine「Frequently Asked Questions」、Cornell Feline Health Center(2026年10月23日に確認)

同じ資料には、亡くなったあとに目が開いたままになる、筋肉がぴくっと動く、深い息のような動きが何回か見られる、おしっこやうんちが出ることがあると書かれています。前もって知っておくと、驚かずにすむかもしれません。

立ち会いについても、最初から最後までそばにいる、鎮静のときまでそばにいる、お別れだけして待合室で待つなど、選べる病院があります。どれを選んでも、愛犬はひとりではありません。

前もって病院に聞いておくこと

  • 予約はとれるか(混みあわない時間や、個室を用意してもらえるか)
  • 立ち会える人数
  • 費用と、支払いを当日でなく後日にできるか
  • 亡くなったあと、体を連れて帰れるか。火葬の業者を紹介してもらえるか

この記事の最後に、聞いておきたいことのリストを用意しています。

安楽死の費用はどのくらい?

安楽死の費用は、動物病院ごとに決められています。全国の動物病院を対象にした、日本獣医師会の調査の数字があります。

項目調査の結果
安楽死処置の料金(中央値)11,183円
安楽死処置を行っている病院の割合93.3%
行っていない病院の割合5.5%

出典:佐伯潤「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査結果の概要」日本獣医師会雑誌 68巻(2015年)。調査は2014年12月〜2015年2月(2026年10月23日に確認)

この調査は10年以上前のもので、犬と猫を分けていません。体重による違いもわかりません。日本獣医師会は令和3年度にも診療料金の調査を行っていますが、公表資料から安楽死処置の新しい数字は確かめられませんでした。実際の料金は、かかりつけの病院に聞いてください。

実際の費用は、犬の大きさ、往診かどうか、火葬の手配を頼むかなどで変わります。かかりつけの病院に、前もって聞いておくと安心です。火葬の費用はペット火葬の種類と費用にまとめています。

よくある迷いと、考え方のヒント

安楽死を考えている家族から、よく聞かれる迷いがあります。答えは一つではありませんが、考えるときのヒントをまとめました。

「自分が楽になりたいから、選ぼうとしているのでは」 介護が長くなると、家族の体も気持ちも限界に近づきます。疲れているから考えはじめた、ということがあっても、それだけで自分を責める必要はありません。愛犬の様子と、家族の暮らしの両方を、獣医師に正直に話してみてください。

「まだ早いのでは」「もう遅いのでは」 ちょうどよい時期がはっきりわかることは、ほとんどありません。毎日の「よい日」「つらい日」の記録を見ながら、獣医師と何度か話し合う家族も多いです。一度で決めなくてかまいません。

「家族の意見がまとまらない」 意見が分かれるのは、それぞれが愛犬を大切に思っているからです。獣医師に家族そろって説明を聞く機会をつくると、同じ情報をもとに話し合えます。

「ほかの人にどう思われるか」 安楽死を選んだことを、周りに言えずにつらくなる人もいます。だれかに話すかどうかは、自分で決めてかまいません。わかってくれる人にだけ話す、という形でも十分です。

安楽死を選ばない、という選択

安楽死を選ばず、家で最期まで見守る家族もたくさんいます。それも、愛犬を思っての大切な選択です。

最期まで見守るときは、痛みや苦しさを和らげる方法を、獣医師と相談しながら進めることができます。介護が長くなって、家族が疲れきってしまうこともあります。そんなときは、老犬の介護に疲れたときも読んでみてください。

見送ったあとに

安楽死を選んだ人も、選ばなかった人も、見送ったあとに「あれでよかったのか」と考えることがあります。それは、愛犬を大切に思っていたからこそ生まれる気持ちです。

亡くなったあとの手続きは犬が亡くなったあとの手続きに、葬儀の流れはペット葬儀の流れにまとめています。悲しみがつらいときは、ペットロスとの向き合い方で、話せる場所を紹介しています。ひとりで抱え込まないでください。

よくある質問

安楽死を選んだら、後悔しますか?

後悔する人も、しない人もいます。安楽死を選ばなかった人が「もっと早く楽にしてあげれば」と感じることもあります。どちらを選んでも、迷ったこと自体が愛犬を大切に思っていた証です。気持ちがつらいときは、ペットロスの記事にまとめた相談先も頼ってください。

安楽死の費用はいくらですか?

動物病院によって違います。日本獣医師会が2014〜2015年に行った調査では、安楽死処置の料金の中央値は11,183円でした。犬の体重や、往診か、火葬の手配を頼むかでも変わるので、かかりつけの病院に聞いてください。

安楽死に立ち会わないのは、ひどいことですか?

ひどいことではありません。最期まで抱いていたい人も、つらくて見られない人もいます。処置の前にお別れをして、処置のあいだは待合室で待つこともできる病院があります。自分たちに合った形を、病院に相談してください。

家で安楽死をしてもらうことはできますか?

往診で対応している動物病院もあります。対応しているかどうか、費用はどのくらいかは、病院ごとに違うので、かかりつけの病院に聞いてみてください。

子どもには、どう伝えればいいですか?

子どもの年齢によりますが、「眠らせる」などのぼかした言い方は、かえって混乱させることがあると、米国の大学の資料は注意しています。わかる言葉で、もう戻ってこないことを伝え、お別れの時間を一緒に過ごすかどうかを相談するとよいでしょう。

安楽死について、獣医師に聞いておきたいことリスト

印刷して、終わったものに印をつけて使えます。

  • いまの病気・状態の見通し(治療でどのくらい変わるか)
  • 痛みや苦しさを和らげる方法は、ほかにあるか
  • 安楽死を考えるとき、先生はどんな様子を目安にしているか
  • 当日の流れ(鎮静の有無、どのくらい時間がかかるか)
  • 家族は立ち会えるか。何人まで、どこで(診察室・個室・自宅)
  • 費用(処置料、往診料、火葬の手配を頼む場合の料金)
  • 亡くなったあと、体を連れて帰れるか。火葬の手配をお願いできるか

いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-anrakushi/

参考にした情報

制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。

この記事の更新履歴

  •  獣医師の監修を経て公開しました。
  •  出典と数字を確認し、確認できなかった点の書き方を直しました。

内容の誤りや古い情報にお気づきの方は、お問い合わせからお知らせください。

この記事を書いた人

いぬのながいき手帖 編集部

老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。

この記事の監修者

氏名非公開(獣医師)

体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。

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