犬が死ぬ前に見られる変化と、そばでできること
この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 犬が死ぬ前には、食べる・飲む量が減る、眠る時間が増える、立てなくなる、おもらしが増えるなどの変化が見られることがあります。
- こうした変化は、治療や手当てで楽にしてあげられる不調のサインのこともあります。最期が近いかどうかは、かかりつけの獣医師に相談してください。
- そばでできるのは、やわらかい寝床、水と体の清潔、静かで落ち着ける場所、声をかけてそっとふれること。無理に食べさせなくてかまいません。
- 呼吸が苦しそう、痛がる、けいれんが続くときは、すぐ病院に電話を。元気なうちに、夜間の連絡先や、どこで過ごしたいかを家族で話しておくと安心です。
犬が死ぬ前には、食べる・飲む量が減る、眠っている時間が長くなる、立てなくなる、おもらしが増える、呼吸の様子が変わる、といった変化が見られることがあります。ただ、こうした変化は、治療や手当てで楽にしてあげられる不調のサインのこともあります。「もう最期なのかな」と思ったら、まずはかかりつけの獣医師に相談してください。
この記事では、最期が近い時期に見られることがある変化、すぐ病院に電話したほうがいいとき、そばでできること、家族で決めておくことを紹介します。読むのがつらいところは、飛ばしてかまいません。いま愛犬のそばにいる方は、愛犬の様子を見ながら、必要なところだけ読んでください。
「犬が死ぬ前」とは?最期が近い時期のこと
この記事でいう「死ぬ前」とは、年齢や病気によって体の力が少しずつ弱まり、命の終わりが近づいている時期のことです。数か月かけてゆっくり変化していく犬もいれば、急に体調が変わる犬もいて、その長さや経過は一頭ごとに違います。
米国の獣医師による解説(PetMD)では、こうした変化は亡くなる数か月前から少しずつ始まることがある一方で、同じ変化が治療できる病気のサインのこともあるため、気になる変化があれば診察を受けるようにすすめています。
「最期が近いのか」「病気で具合が悪いのか」は、見た目だけでは、飼い主にも、ときには獣医師にもすぐには見分けられません。米国の在宅看取りの獣医師グループ(Lap of Love)も、本当に最期が近いのか、治療できる状態なのかを判断できるのは獣医師だけだ、としています。だからこそ、ひとりで判断せず、相談することが大切です。
犬が死ぬ前に見られることがある変化は?
米国の獣医師による解説や、動物ホスピスの獣医師グループの資料では、最期が近い時期に、次のような変化が見られることがあると紹介されています。すべての犬に起こるわけではなく、順番も犬によって違います。
| 変化 | 見られることがある様子 |
|---|---|
| 食べる・飲む | 食べる量や水を飲む量が少しずつ減る。好きだったものにも口をつけなくなる |
| 眠る・動く | 眠っている時間が長くなる。疲れやすい。立てない、歩けない |
| 体重 | やせてくる。背骨や腰の骨がさわってわかるようになる |
| 排せつ | おしっこやうんちをもらす。寝たまま出てしまう |
| 気持ち・様子 | ぼんやりする、落ち着かない、うろうろする、夜に鳴く。家族のそばにいたがる、または、ひとりになりたがる |
| 呼吸 | 休んでいても息が速い・浅い。呼吸のリズムが不規則になる |
| 体のようす | 足先や体がいつもより冷たい。歯ぐきの色が白っぽい・紫っぽい |
出典:PetMD「7 Signs a Dog Is Dying and What To Do」(獣医師執筆)、Lap of Love「Signs Your Dog or Cat Is Dying」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
こうした変化に気づくと、胸がしめつけられるような気持ちになると思います。けれど、変化に気づけているのは、それだけ愛犬をよく見ているということです。気づいたことは、日付と一緒にメモしておくと、獣医師に相談するときの手がかりになります。
最期の数時間〜数日に見られることがあること
Lap of Love の資料では、最期の時間が近づくと、呼吸が不規則になったり、浅くなったり、あえぐような呼吸になったりすること、体が冷たくなり、歯ぐきの色が白っぽくなることがあると説明されています。PetMD の解説でも、体温が下がる、手足の先が冷たくなる、のどの奥で音がするような呼吸になることがある、とされています。
こうした変化があるとき、愛犬が苦しいのかどうか、飼い主には判断がつかないことも多いと思います。迷ったら、遠慮せずにかかりつけの病院に電話して、いまの様子を伝えてください。
犬が死ぬ前かもと思ったら、病院に相談したほうがいいときは?
最期が近いかもしれないと感じたときも、病院に相談することには意味があります。苦しさや痛みをやわらげる手当て(緩和ケア)を受けられることがあり、家でのお世話のしかたも教えてもらえます。
こんなときは、すぐ動物病院に電話してください
- 息が苦しそう。口を開けて呼吸する、首をのばして息をする、休んでも呼吸が速い
- けいれんが5分以上続く、何度もくり返す
- 強く痛がる、鳴き続ける、さわると嫌がる
- 歯ぐきや舌の色が、白っぽい・紫っぽい
- 何度も吐く、血を吐く、血の混じったうんちが出る
- 水もまったく飲めない状態が続いている
- 急に様子が変わった(昨日まで歩けていたのに立てない など)
米国の獣医師グループの資料でも、呼吸が苦しそうなときは、すぐに獣医師の手当てを受けるように、とされています。夜間や休日なら、夜間救急の動物病院に電話してください。探し方は夜間・休日に動物病院を探すにはにまとめています。
病院に相談するときに伝えること・聞いておきたいこと
| 伝えること | 聞いておきたいこと |
|---|---|
| いつから、どんな変化があるか(メモ) | いまの体で、何が起きていると考えられますか |
| 食べる量・水を飲む量・おしっこの量 | 苦しさや痛みをやわらげる方法はありますか |
| 呼吸の速さ(寝ているときに数えた回数) | 家でできることと、やめたほうがいいことは |
| 飲んでいる薬と、飲めているか | 薬はこのまま続けたほうがいいですか |
| 家族がどうしたいと考えているか | 急に具合が悪くなったら、どこに連絡すればいいですか |
| 通院の負担(移動がつらいか) | 往診や、在宅での看取りの相談はできますか |
出典:AAHA「Top 12 Things You Should Know About AAHA's End-of-Life Care Guidelines」、PetMD「7 Signs a Dog Is Dying and What To Do」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
米国動物病院協会(AAHA)の看取りのガイドラインを紹介した飼い主向けの資料では、獣医師は病気の今後の見通しを説明し、飼い主が一歩ずつ考えられるよう手助けできること、看取りの時期のケア(ホスピスケア)は、痛みや不安をやわらげることと、介護する家族を支えることを目的にしていることが書かれています。通院がむずかしい場合は、動物病院の往診も相談先のひとつです。
老犬が痙攣するのは、死ぬ前のサイン?
「老犬 痙攣 死ぬ前」と調べてこのページにたどり着いた方は、きっと、愛犬の痙攣を見て、とても不安な気持ちでいらっしゃると思います。
痙攣が起きたからといって、それだけで最期が近いとはわかりません。痙攣の理由はさまざまで、治療で回数や長さをおさえられることもあります。一方で、重い病気を抱えている犬や、最期が近い時期の犬に痙攣が見られることもあります。
痙攣が5分以上続く、何度もくり返す、おさまっても意識が戻らないときは、すぐ動物病院に電話してください。発作中にやること・やらないことは、犬が痙攣したときにくわしくまとめています。
老犬の余命はどのくらい?「あとどれくらい」と思ったら
「老犬 寝たきり 余命」「老犬 ご飯食べない 余命」など、あとどれくらい一緒にいられるのかを知りたくて調べる方も多いと思います。
けれど、余命は、犬の年齢、病気、体の状態、受けている治療によって大きく違い、記事などで一律に言えるものではありません。寝たきりになってから長く穏やかに過ごす犬もいれば、急に体調が変わる犬もいます。
「あとどれくらい」と思ったときは、その気持ちをそのまま、かかりつけの獣医師に伝えてみてください。正確な日数はわからなくても、「これからどんなことが起こりうるか」「そのとき何ができるか」を一緒に考えてもらえます。犬の年齢の目安は犬の平均寿命に、食べなくなったときの工夫は老犬がご飯を食べないときにまとめています。
生活の質を、家族で見てみる
米国の獣医師が考えた「生活の質の目安(HHHHHMMスケール)」では、痛み、食欲、水分、清潔さ、幸せそうか、動けるか、よい日が悪い日より多いか、の7つを、それぞれ点数で見ていきます。点数で答えが決まるわけではありませんが、家族で「この子にとって、いまの毎日はどうだろう」と話すきっかけになります。獣医師と相談するときにも役立ちます。
そばでできることは?最期の時間の過ごし方
米国の獣医師による解説や、看取りのガイドラインの飼い主向け資料では、家でのちょっとした工夫が、最期の時間を過ごしやすくすると紹介されています。
そばでできること
- やわらかく、体が沈みすぎない寝床を、家族の気配が感じられる場所に置く
- 水と、食べられそうなものを、寝床のすぐ近くに置く
- 食べないときは、温めて香りを立てる、手から差し出すなど。無理に口に入れない
- 吸水シーツを敷き、汚れたらやさしくふいて、体を清潔に保つ
- ときどき体の向きを変え、皮膚が赤くなっていないか見る
- 部屋の温度を快適に保ち、寒そうならタオルをかける
- 大きな音や人の出入りを減らし、静かに過ごせるようにする
- 名前を呼ぶ、いつもの声で話しかける、そっとなでる
- お気に入りの毛布や、家族のにおいのついた服をそばに置く
- 処方されている薬は、飲ませ方に困ったら病院に相談する
寝たきりの時間が長くなったときの寝床と体の向きの変え方は、犬の床ずれにまとめています。
「何もしてあげられない」と感じたとき
最期の時期は、食べさせることも、歩かせることもできなくなって、「何もしてあげられない」と感じることがあるかもしれません。けれど、そばにいて声をかけ、そっとふれることは、それ自体が大切なお世話です。PetMD の解説でも、できるだけ一緒に過ごすこと、なじみのあるものをそばに置くことがすすめられています。
ずっとそばにいられなくても、自分を責めないでください。仕事や家のことで離れる時間があっても、それまで一緒に過ごしてきた時間は消えません。
家族で決めておくことは?
最期の時期は、急に決めなければならないことが出てくることがあります。元気なうちや、まだ落ち着いているうちに、家族で話しておくと、いざというときに迷いが少なくなります。
どこで、どう過ごしたいか
- 最期は家で過ごしたいか、病院で手当てを受けながら過ごしたいか
- どこまで検査や治療をするか(体への負担と、家族の考え)
- 苦しそうなときに、どうしたいか
AAHA の看取りのガイドラインを紹介した資料では、看取りの時期のケアを受けながら自然に最期を迎えることも、安楽死を選ぶことも、選択肢として説明されています。そのうえで、苦しさを放っておくことは避け、苦しさをやわらげる手立てを獣医師と一緒に考えることが大切だとされています。日本獣医師会の「小動物医療の指針」でも、安楽死は獣医師と飼い主が十分に話し合ったうえで、飼い主が決めるものとされています。どちらを選んでも、愛犬のことを考えて選んだ答えです。安楽死について考える材料は犬の安楽死にまとめています。
連絡先と、いざというときの段取り
- かかりつけの病院と、夜間・休日に連絡できる病院の電話番号
- 往診をしてくれる病院があるか
- 最期のときに、そばにいたい家族への連絡のしかた
- 仕事を休めるか、介護の当番をどう分けるか
亡くなったあとのこと
考えるのはつらいことですが、亡くなったあとの安置のしかたや、火葬・葬儀の希望を少しだけ話しておくと、そのときにあわてずにすみます。手続きの流れは犬が亡くなったら何をする?に、火葬の種類と費用はペット火葬にまとめています。
下の「家族で話しておくことリスト」は、家族に送って一緒に見ることもできます。
見送ったあとに
どんなに準備をしていても、お別れのあとは、さびしさや「もっと何かできたのでは」という気持ちがわいてくるものです。その気持ちは、愛犬を大切にしてきたからこそのものです。
つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えこまず、家族や友人、同じ経験をした人に話してみてください。話せる場所はペットロスとの向き合い方にまとめています。
いま、愛犬のそばにいる方へ。無理をしすぎず、ご自身も食事と睡眠をとってくださいね。あなたがそばにいることが、愛犬にとってのいちばんの安心です。
よくある質問
犬が死ぬ前には、どんなサインがありますか?
獣医師の解説では、食べる・飲む量が減る、眠る時間が増える、立てない・歩けなくなる、体重が減る、おしっこやうんちをもらす、呼吸の変化、ぼんやりする・落ち着かないなどが挙げられています。ただ、どれも病気やけがでも見られる変化で、これだけで最期が近いとはわかりません。気になる変化があれば、かかりつけの獣医師に相談してください。
老犬の余命は、どうすればわかりますか?
余命は、犬の年齢や病気、体の状態によって大きく違い、記事などで一律に言えるものではありません。かかりつけの獣医師に「これからどんなことが起こりうるか」「苦しくないようにできることは何か」を聞いてみてください。
老犬が痙攣するのは、死ぬ前だからですか?
痙攣が起きたからといって、それだけで最期が近いとはわかりません。痙攣の理由はさまざまで、治療で回数をおさえられることもあります。痙攣が5分以上続く、くり返すときは、すぐ動物病院に電話してください。
食べなくなったら、無理にでも食べさせたほうがいいですか?
無理に口に入れると、むせたり、犬がつらくなったりすることがあります。食べやすいものを少しずつ近くに置く、手から差し出すなどの工夫をしつつ、どこまで食べさせるかは、かかりつけの獣医師に相談してください。
最期は家で看取るのと、病院とどちらがいいですか?
どちらがよいという正解はありません。犬の体の状態、苦しさをやわらげる手当てができるか、家族がどうしたいかによって違います。元気なうちに、家族と獣医師で話しておくと、いざというときに迷いが少なくなります。
家族で話しておくことリスト
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- かかりつけ病院と、夜間・休日に連絡できる病院の電話番号
- 往診をしてくれる病院があるか
- 最期はどこで過ごしたいか(家/病院)
- どこまで検査・治療をするか(家族の考え)
- 苦しそうなときに、どうしたいか(獣医師に聞いておくこと)
- 安楽死について、家族がどう考えているか
- 最期のときに、そばにいたい人と連絡のしかた
- 亡くなったあとの安置のしかたと、火葬・葬儀の希望
- 介護の当番と、仕事を休めるか
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-shinumae/
参考にした情報
- AAHA(米国動物病院協会)「2016 AAHA/IAAHPC End-of-Life Care Guidelines」
- AAHA「Top 12 Things You Should Know About AAHA's End-of-Life Care Guidelines」(飼い主向け)
- PetMD「7 Signs a Dog Is Dying and What To Do」(Leslie Gillette DVM 著、Barri J. Morrison DVM 確認、2024年10月17日更新)
- Lap of Love(米国の動物ホスピス・在宅看取りの獣医師グループ)「Signs Your Dog or Cat Is Dying」
- MSD Veterinary Manual「The HHHHHMM Scale」(Villalobos AE, 2004 をもとにした生活の質の目安)
- 公益社団法人 日本獣医師会「小動物医療の指針」(平成14年制定、平成28年一部改正)
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
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この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。