犬の床ずれ:できやすい場所と、寝たきりの犬の寝かせ方・寝床
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この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 犬の床ずれとは、同じ姿勢で寝続けることで、骨の出っぱったところの皮膚に体重がかかり続け、血の流れが悪くなって皮膚が傷むことです。
- 腰・肩・ひじ・かかと・頬などの毛をかき分けて、赤み・毛が抜けている・湿っているところがないか、毎日見ることが予防の第一歩です。
- 体の向きを変える、寝床を厚く・乾いた・清潔な状態に保つ、おしっこやうんちで皮膚がぬれたままにしない、が予防の基本です。間隔はかかりつけの獣医師と決めましょう。
- 皮膚がやぶれている、じゅくじゅくしている、においがする、赤みが数日たっても引かないときは、動物病院に相談してください。
犬の床ずれは、同じ姿勢で寝続けることで、骨の出っぱったところの皮膚に体重がかかり続け、皮膚が傷んでしまうものです。予防の基本は、毎日皮膚を見ること、体の向きを変えること、寝床を厚く・乾いた・清潔な状態に保つことの3つ。一度できると治りにくいとされるので、寝ている時間が長くなってきたら、早めに始めるのがおすすめです。
皮膚がやぶれている、じゅくじゅくしている、においがする、赤みが何日も引かないときは、かかりつけの動物病院に相談してください。この記事では、床ずれのできやすい場所と見つけ方、体の向きの変え方と寝たきりの犬の楽な姿勢、寝床の選び方、病院に相談するサインを順に紹介します。いまの介護の段階は介護ステージチェックでも確かめられます。
犬の床ずれとは?どうしてできる?
犬の床ずれ(褥瘡:じょくそう)とは、寝ている時間が長くなり、骨の出っぱったところの皮膚が、骨と床の間で長い時間おされ続けることで血の流れが悪くなり、皮膚やその下が傷んでしまうことです。
海外の獣医学の教科書(Swaim ほか「Decubitus Ulcers in Animals」)では、床ずれができやすくなる理由として、次のようなことが挙げられています。
- 圧迫:同じところに長い時間、体重がかかる
- こすれ:寝返りや移動で皮膚がこすれる、引っぱられる
- 湿り:おしっこやうんちで皮膚がぬれたままになる
- クッションの少なさ:やせて、骨の上の肉や脂肪が少ない
- 体の弱り:栄養が足りない、体力が落ちている、皮膚がうすい
日本の記事でも、20kgを超える大型犬が寝たきりになると床ずれができやすいとされています。小型犬でも、やせて骨が出っぱってきた犬や、自分で寝返りができない犬は注意が必要です。
「寝たきり」になる前から気をつけたい
床ずれは、完全に寝たきりになってからだけでなく、一日の多くを寝て過ごすようになったころからできることがあります。立ち上がりに手助けが必要になってきたら、寝床と皮膚のチェックを習慣にしておくと安心です。
犬の床ずれができやすい場所は?
犬は横向きで寝ることが多いため、床ずれは体の横側の、骨が出っぱったところにできやすいとされています。
| 場所 | 体のどのあたりか | どんなときにできやすいか |
|---|---|---|
| 腰 | 太ももの付け根の外側の、骨が出っぱったところ | 横向きで寝ることが多い犬(とくに大型犬) |
| 腰骨・お尻 | 腰の上の骨、お尻の骨 | 横向き、またはお座りの姿勢が多い犬 |
| 肩 | 肩の骨の出っぱり | 横向きで寝ることが多い犬 |
| ひじ | 前足のひじの外側・後ろ側 | 横向き・伏せのどちらでも。大型犬に多い |
| ひざ・かかと | 後ろ足のひざの外側、かかと(足首の後ろ) | 横向きで寝ることが多い犬 |
| 足の指 | 足の外側の指の横 | 横向きで寝ることが多い犬 |
| 頬・あご | 顔の横、あごの下 | 横向きで顔を床につけて寝る犬 |
| 胸 | 胸の骨 | 伏せの姿勢が多い犬 |
出典:Swaim SF ほか「Decubitus Ulcers in Animals」、家電Watch「高齢犬の床ずれ・タコ対策に」(2015年)をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
床ずれのはじまりに気づくには
床ずれのはじまりは、毛にかくれて見落としやすいとされます。上の場所を、毛をかき分けて皮膚が見えるようにして確かめてください。
- 皮膚が赤くなっている(指で軽くおしても赤みが消えない)
- そこだけ毛が抜けやすい、毛がうすくなっている
- 皮膚が湿っている、べたべたしている
- さわると嫌がる、なめたりかんだりしている
体の向きを変えるときや、おむつを替えるときに一緒に見る、と決めておくと続けやすくなります。気になるところは、スマートフォンで写真を撮っておくと、変化がわかり、病院でも説明しやすくなります。
床ずれかも?動物病院に相談したほうがいいサインは?
床ずれは、一度できると治りにくいとされます。皮膚の表面は小さく見えても、中で広がっていることもあります。次のようなときは、様子を見ずに動物病院に相談してください。
こんなときは、動物病院に相談してください
- 皮膚がやぶれている、傷になっている、穴があいている
- じゅくじゅくしている、うみのようなものが出ている
- いやなにおいがする
- 赤み・黒ずみが、体の向きを変えても数日たっても引かない
- さわると強く痛がる、なめ続ける
- 床ずれのまわりが熱をもって腫れている
- 元気や食欲がない、熱っぽい
通院がむずかしい大型犬や、寝たきりで移動の負担が大きい犬は、往診をしている動物病院に相談する方法もあります。動物病院の往診にまとめています。
病院に伝えること
- いつごろ気づいたか、大きさは変わってきたか(写真があれば見せる)
- 一日のうち、どのくらい寝ているか。自分で寝返りできるか
- いつもどの向きで寝ているか
- 体の向きを変えている間隔
- 寝床の種類(マット、クッション、タオル など)
- おむつを使っているか、おしっこ・うんちで汚れることが多いか
- 食欲、体重の変化
人の薬や消毒薬を、自己判断でぬらないでください。犬に合わないものや、傷の治りをさまたげるものもあります。手当てのしかたは、病院で教えてもらいましょう。
寝たきりの犬の体位変換は、何時間おき?やり方は?
体位変換とは、寝ている犬の体の向きを、家族が変えてあげることです。同じところに体重がかかり続けないようにするために行います。
体の向きを変える間隔
海外の獣医学の教科書(Swaim ほか)では、体の向きを変える間隔は「理想は2時間ごと」としつつ、1〜5時間と幅のある間隔が紹介されています。動物病院向けの解説記事でも、2〜4時間ごとに向きを変えることが挙げられています。
ただ、どのくらいの間隔がよいかは、犬の体格、やせ具合、寝床、皮膚の状態によって違います。また、家で介護する家族が、夜中も含めて2時間ごとに起き続けるのはとても大変です。かかりつけの獣医師に、わが家の犬に合う間隔と、夜の過ごし方を相談してください。寝床を見直すことで、間隔を少し空けられる場合もあります。
| 出典 | 紹介されている間隔 |
|---|---|
| Swaim ほか「Decubitus Ulcers in Animals」 | 理想は2時間ごと(1〜5時間の幅で紹介) |
| Veterinary Practice News(動物病院向けの解説) | 2〜4時間ごと |
出典:Swaim SF ほか「Decubitus Ulcers in Animals」、Veterinary Practice News「10 Tips to Manage Recumbent Veterinary Patients」(2015年)をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)。いずれも動物病院向けの情報で、家庭での間隔は獣医師に相談してください。
体の向きの変え方
体の向きを変えるときは、犬の体を引きずらないことが大切です。皮膚がこすれると、床ずれの原因になります。次のやり方は一般的な例です。
- 声をかける:いきなり動かすと驚くので、名前を呼んで、体にふれてから始めます。
- 足をそろえる:前足どうし、後ろ足どうしを軽くそろえます。
- 背中側から支える:犬の背中側に立ち、胸と腰の下に手を入れて、体を持ち上げるようにして、ゆっくり反対向きにします。大型犬は、2人で胸側と腰側を分担すると安全です。
- 返す向き:横向きから反対の横向きにするとき、背中側を通すか、お腹側(伏せの姿勢)を通すかは、犬の体格や体の状態によって違います。かかりつけの獣医師に、わが家の犬に合う返し方を見せてもらうと安心です。
- 姿勢を整える:下になった前足を少し前に出し、体の下のしわを伸ばします。
- 皮膚を見る:それまで下になっていた側の皮膚に赤みがないか見ます。
- 時刻をメモする:いつ、どちら向きにしたかを書いておくと、家族で交代しやすくなります。
介護用ハーネスやタオルを体の下に通しておくと、持ち上げやすくなることがあります。飼い主の腰を守るためにも、ひざを曲げて、体に近いところで支えましょう。
老犬が寝たきりのとき、楽な姿勢は?寝かせ方の工夫
寝たきりの犬の寝かせ方には、大きく分けて「横向き」と「伏せ(おなかを下にした姿勢)」があります。海外の獣医学の教科書では、左向き → 伏せ → 右向き のように、順番に変えていくことがすすめられています。
| 姿勢 | 体重がかかりやすいところ | 支え方の工夫の例 |
|---|---|---|
| 横向き | 腰・肩・ひじ・かかと・頬 | 足と足の間、頭の下にうすいクッションをはさむ |
| 伏せ | ひじ・胸 | 体の両わきをクッションで支える。U字型のクッションを使う |
出典:Swaim SF ほか「Decubitus Ulcers in Animals」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
伏せの姿勢は、息がしやすく、まわりを見やすいので、起きている時間に取り入れる家庭もあります。ただ、自分で姿勢を保てない犬は、横に倒れてしまうことがあるので、クッションで両わきを支えます。
どの姿勢が楽かは、犬によって違います。体の向きを変えたあと、落ち着いて眠れているか、息が苦しそうでないか、何度も体勢を変えようともがいていないかを見てください。もがく・鳴くことが続くときは、痛みや不快さがあるのかもしれません。病院に相談しましょう。夜に鳴くことが多いときは老犬の夜泣きも参考にしてください。
床ずれを防ぐ寝床の選び方
寝床は、床ずれ予防のいちばんの土台です。動物病院向けの解説では、寝床は「厚く、乾いていて、清潔」に保つこと、体重のある犬ほど厚いものを使うことがすすめられています。海外の獣医学の教科書では、凹凸のあるウレタン(いわゆる卵のパックのような形)、羊の毛皮、フリースなどが例に挙げられています。
| 選ぶときの目安 | 見るところ |
|---|---|
| 厚み・体圧の分散 | 犬が寝たときに、腰や肩が床に当たる(底づきする)感じがないか。体重がかかる点が分散されるか |
| 沈みすぎない | やわらかすぎると、寝返りや立ち上がりがしにくくなる |
| 洗える・替えがきく | カバーが外して洗えるか。替えを用意できるか |
| 防水 | おしっこが中までしみこみにくいか。防水シーツを重ねられるか |
| 通気性 | 蒸れにくいか。夏は熱がこもらないか |
| 大きさ | 体の向きを変えても、はみ出さない広さがあるか |
出典:Veterinary Practice News「10 Tips to Manage Recumbent Veterinary Patients」、Swaim SF ほか「Decubitus Ulcers in Animals」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
人の介護用の「体圧分散マット」や、犬用の床ずれ予防マットなど、いろいろな商品があります。値段や素材はさまざまなので、愛犬の体重と、家で洗えるかどうかを基準に選ぶと失敗が少なくなります。マットを替えただけで床ずれが防げるわけではないので、体の向きを変えること、皮膚を見ることと組み合わせてください。ほかの介護用品は老犬の介護用品にまとめています。
クッション・ひじあて・服を使うとき
- クッション:足の間や頭の下、伏せのときの両わきに使います。体の下に硬いものが当たらないようにします。
- ひじあて・サポーター:ひじなどこすれやすいところを守る犬用の商品もあります。きつすぎると血の流れをさまたげるので、サイズを合わせ、外して皮膚を見る時間を作ります。
- 服:皮膚のこすれを減らすために着せる家庭もあります。ぬれたままにならないよう、汚れたらすぐ替えます。
床ずれができかけているところにクッションやサポーターを当てるときは、かえって圧迫しないか、使う前に獣医師に相談してください。
おしっこ・うんちと皮膚のケア
おしっこやうんちで皮膚がぬれたままになると、皮膚がふやけて傷みやすくなり、床ずれができやすくなります。
家でできる床ずれ予防
- 毎日、腰・肩・ひじ・かかと・頬の皮膚を、毛をかき分けて見る
- 体の向きを変えた時刻と向きをメモし、家族で共有する
- 寝床は厚く、乾いた、清潔な状態に。汚れたらすぐ替える
- おしっこ・うんちで汚れたら、ぬるま湯でやさしく洗うかふき取り、よく乾かす
- おむつはこまめに替え、肌の赤みを見る
- 体を引きずらず、持ち上げて向きを変える
- 食事と水がとれているか気にかける。食欲が落ちたら病院に相談する
- 人の薬・消毒薬を自己判断で使わない
動物病院向けの解説では、汚れた皮膚は、ドライシャンプーより、低刺激の石けんと水でよく洗い、しっかり乾かすほうがよいとされています。おむつやマナーベルトの選び方は犬のマナーベルトにまとめています。
食事と床ずれ
やせて骨の上の肉が少なくなると、床ずれができやすくなります。海外の獣医学の教科書でも、栄養が足りないことが床ずれの原因のひとつに挙げられています。食べる量が減ってきたら、食べやすくする工夫を、かかりつけの獣医師と相談しましょう。
寝たきりの介護を、ひとりで抱えこまないために
体の向きを変える、皮膚を見る、寝床を替える。床ずれ予防は毎日のことで、とくに夜中の体位変換は、介護する人の睡眠をけずります。
- 夜の当番を家族で分ける。曜日ごとに担当を決める
- メモ(時刻と向き)を冷蔵庫などに貼って、誰でも続きができるようにする
- 寝床を見直して、獣医師と相談しながら夜の間隔を考える
- 日中だけ預けられる場所や、老犬ホームの短期預かりを調べておく
介護に疲れたときのことは老犬の介護に疲れたときに、預け先は老犬ホームを探すにまとめています。
完璧に2時間ごとに向きを変えられなくても、毎日皮膚を見て、気になるところに早く気づけていれば、それは大きな助けになっています。できることを、できる範囲で続けてくださいね。
よくある質問
寝たきりの犬の体の向きは、何時間おきに変えればいいですか?
海外の獣医学の教科書では、理想は2時間ごととしつつ、1〜5時間と幅のある間隔が紹介されています。犬の体格、寝床、皮膚の状態によって合う間隔は違うので、かかりつけの獣医師と相談して決めてください。夜は家族で分担するなど、続けられる方法を一緒に考えてもらいましょう。
老犬が寝たきりのとき、楽な姿勢はありますか?
海外の獣医学の教科書では、左向き・伏せ(おなかを下にした姿勢)・右向きを順番に変えることがすすめられています。伏せの姿勢は、クッションなどで体を支えると保ちやすくなります。どの姿勢が楽そうかは犬によって違うので、表情や呼吸を見ながら、獣医師にも相談してください。
床ずれができてしまったら、家で治せますか?
床ずれは、一度できると治りにくいとされます。皮膚が赤いだけに見えても、中で傷んでいることがあります。人の薬や消毒薬を自己判断で使わず、動物病院で手当てのしかたを教えてもらってください。
床ずれ予防のマットは必要ですか?
寝ている時間が長くなってきたら、体が沈みすぎず、体重を分散できる厚みのある寝床を検討しましょう。マットだけで床ずれが防げるわけではないので、体の向きを変えることや、皮膚を清潔に保つことと組み合わせることが大切です。
床ずれ予防:毎日の見回りリスト
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- 腰(太ももの付け根の外側)の赤み・毛の抜け
- 肩・ひじの赤み・毛の抜け
- かかと・足首の外側の赤み
- 頬・あごの下の赤み
- 胸(伏せで寝る犬)の赤み
- おしっこ・うんちで皮膚がぬれていないか
- 寝床が湿っていないか、汚れていないか
- 体の向きを変えた時刻(記録)
- 傷・じゅくじゅく・においがあれば写真を撮って病院へ
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/roken-tokozure/
参考にした情報
- Swaim SF, Hanson RR, Coates JR「Decubitus Ulcers in Animals」(オーバーン大学獣医学部 掲載)
- Veterinary Practice News「10 Tips to Manage Recumbent Veterinary Patients」(Phil Zeltzman DVM, Kelly Serfas CVT, 2015年)
- 家電Watch「高齢犬の床ずれ・タコ対策に」(2015年7月9日)
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
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この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。