飼い主なら誰でも、愛犬には長生きしてもらいたいと願います。
しかし人間同様に、犬も病気になってしまう生き物。
特に犬は比較的癌(ガン)にかかりやすい傾向があります。
そして人間同様に高齢犬ほどガンの発症率は高く、死亡原因となる病気の第1位です。
「もっと早く病気に気付いていたら…」
「もっと早く治療を始めていれば、あと数年は一緒に過ごせたのではないか…」
と後悔した経験がある飼い主さんも多いのです。
そこで今回は犬の死因になりやすい病気をまとめました。
病気になりやすい犬種や予防方法、早期発見のポイントを知ることでみなさんの愛犬が少しでも長生きできればと思っています。
目次
犬の死亡原因になる病気ワースト10
1位 癌(悪性腫瘍)…54%
2位 心臓病 …17%
3位 腎不全 …7%
4位 てんかん発作 5%
5位 肝臓疾患 5%
6位 胃拡張・胃捻転 4%
7位 糖尿病 3%
8位 アジソン病 2%
9位 クッシング病 2%
10位 突然死 1%
(出典:日本アニマル倶楽部「犬・猫 死亡原因病気TOP10」)
1位 癌(悪性腫瘍)54%
がんは細胞の遺伝子の突然変異や細胞の無秩序な異常増殖で起こります。
細胞のDNAが傷付けられると突然変異を起こし、その細胞が無秩序に増殖していくとガン発生の前段階になり、さらに突然変異を繰り返すごとに悪性化していくことでガンとなります。
犬がなりやすい癌 ワースト4
1.乳腺腫瘍
2.肥満細胞腫
3.リンパ腫
4.口腔内腫瘍
1.乳腺腫瘍
最も犬がかかりやすいのが乳腺腫瘍です。
6歳以上のメスに多く、人間の3倍の発症率で避妊手術していない犬は7倍発症しやすいと言われています。
乳腺部にしこりができるのが特徴です。
発生リスクの高い犬種は、コッカースパニエル、プードル、ボストン・テリア、フォクステリア、イングリッシュポインター、イングリッシュセッター、ジャーマン・シェパードなどが挙げられます。
最初の発情期までに避妊手術を行えば発生率を0.5%、1回の発情後に手術すれば8%までに下げることが可能とされています。
飼い主さんによって考え方があると思いますが、子供を残す必要がないのなら避妊手術をすることをおすすめします。
2.肥満細胞腫
肥満とついていますが、太っていることとは関係ありません。
肥満細胞は皮膚の血管周囲や筋肉、内臓など体の各所に存在している細胞で、さまざまな刺激によって炎症反応を引き起こします。
例えば花粉症も花粉に反応して肥満細胞からヒスタミンなどが放出されることで鼻炎や結膜炎がおきる病気です。
この肥満細胞が腫瘍化したものが肥満細胞腫で、皮膚にできることが多く、悪性の皮膚がんの中では最も多いものです。
イボのようなものだったり、脂肪の塊のようだったり、皮膚炎のように赤くなったりすることもありますので見た目からは判断ができません。
発生リスクの高い犬種は、ボクサー、ボストン・テリア、イングリッシュ・ブルドッグ、ブルテリア等が挙げられます。
発症平均年齢は約9歳です。
3.リンパ腫
リンパ腫とは白血球の一種であるリンパ球が腫瘍性に増殖する悪性腫瘍です。
発生リスクの高い犬種はボクサー(他の犬種より10倍の発症率)、 セント・バーナード、ブルドッグ、バセット・ハウンド、ゴールデン・レトリーバーなどが挙げられています。
一般的には中~高齢期(5~10歳齢)に発生します。
顎の下、脇、股下、首などにしこりを作ることもありますが、しこりを作らず進行することもあります。
4.口腔内腫瘍
犬の口腔内は悪性、良性問わず腫瘍が非常によく発生する部位です。
犬で最も発生しやすい口腔内悪性腫瘍は、多い順に悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌、そして線維肉腫です。
発生リスクの高い犬種はコッカースパニエル、ミニチュア・プードル、アナトリアン・シープドック、ゴードン・セッター、パグ、チャウチャウ、ゴールデン・レトリバーなどが挙げられます。
発生年齢は9〜12歳くらいです。
症状は、腫瘤の発見以外に、口臭、流涎、口からの出血(時に鼻出血)、食べ方の変化、嚥下困難、体重の減少などが一般的です。
5.その他の犬のガン
骨肉腫 … 大型犬の前足など、足の長い骨で発生しやすい骨のガン
肛門周囲腺腫 … 6~7歳以上の去勢していないオスに多く見られる腫瘍
精巣腫瘍 … オスの生殖器である精巣に発生する腫瘍
脂肪腫 … 皮下脂肪が異常に増殖してできる”良性腫瘍”です。良性腫瘍なので、手術で切除をすれば完治する事がほとんどです。
その他 … 胃ガン、大腸ガン、肝臓ガンなどあらゆる臓器で発生する可能性があります。
※犬種によって癌の発生率は大きく違います。
癌(ガン)になりやすい犬種
一般的には日本犬より洋犬のほうがガンになる確率が高いと言われていますがその要因は不明です。
ガンになりやすい犬種としてはゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、パグ、ダックスフンドが挙げられます。
ペット保険のアニコムが2009年に発表した犬種別発生率は以下の通りです。
※2013年の調査でもほとんど同じ結果です
1.ゴールデン・レトリーバー:9.6%
2.フレンチ・ブルドッグ:7.8%
3.ラブラドール・レトリーバー:7.5%
4.ミニチュア・シュナウザー:6.5%
5.シー・ズー:6.4%
6.パグ:6.3%
7.ウェルシュ・コーギー・ペンブローク:5.1%
8.トイ・プードル:4.6%
9.ミニチュア・ダックスフンド:4.1%
10.マルチーズ:3.9%
11.ヨークシャー・テリア:3.6%
12.キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル:3.3%
13.MIX(混血犬):3.2%
14.柴犬:2.1%
15.チワワ:2.0%
16.パピヨン:1.5%
17.ポメラニアン:1.3%
出典:ペット保険のアニコム(2009年)
※2013年の調査でもほとんど同じ結果でした
犬の癌で見られる症状は?
症状はガンの種類によって様々ではありますが、以下のような症状が見られたら一度病院で診察を受けましょう。
① 食欲がない
② 体重が減る
③ 無気力、元気がない(散歩を嫌がるなど)
④ 下痢・嘔吐
⑤ 咳が出る
⑥ 腫れ、しこりができた
⑦ 貧血(歩くときフラフラする)
⑧ 微熱が続いている
犬の癌の原因は?
ガンの原因についてはいまだにわからないことが多いですが、以下のものが可能性として考えられています。
・老化
・ストレス
・遺伝
・化学物質
・受動喫煙
・紫外線 … コリー、シェットランドシープドッグなどで紫外線が扁平上皮ガンの原因になることが報告されています。
・磁場 … 磁場に晒されている時間が長ければ長いほど、また磁場が強ければ強いほど、犬のリンパ肉腫が発生しやすくなるとの結果が出ています。
老化や遺伝は仕方ありませんが、「ストレス」「受動喫煙」「化学物質」などは飼い主さんの意識で避けることも可能です。
大切な愛犬のために気を付けてあげましょう♪
犬の癌は予防できる?
人間のガンと同様に犬のガンを確実に予防する方法はありません。
しかし発症の確率を下げる努力は大切です。
ガンの予防は、細胞を傷つけないことと、免疫力をアップさせることが非常に重要です。
・適切な避妊手術、去勢手術
・肥満防止
・犬に適した栄養バランスの食事(ドッグフード)
・定期的な検診(早期発見)
・ストレスを与えない
・化学物質を出来るだけ避ける(添加物、除草剤、殺虫剤、受動喫煙、直射日光など)
免疫力をアップさせるには?
まずは免疫力を低下させないことが肝心です。
ストレスは免疫力を著しく低下させます。
気付かないうちに愛犬にストレスを与えていませんか?
【犬がストレスを感じること】
・お留守番の時間が長すぎる
・テレビの音や外の音がうるさい
・しつけが厳しすぎる
・家族の喧嘩が多い、仲が悪い
・構いすぎる、ベタベタしすぎる
・過度な運動
・家族の死
・新しい家族が増える(結婚、出産、新しい犬など)
平日は仕事が忙しく、なかなか時間がとれないと思います。
休日にはたくさん遊んでストレスを発散させてあげましょう♪
逆に可愛いあまり、構いすぎている場合は、犬が独りでのんびりできる時間も大切です。
【適度な運動が免疫力をアップ】
全身の血流を良くすると免疫機能が良く働くようになります。
無理な運動は返って自律神経を乱して免疫力を低下させるので、愛犬に合った運動量にしましょう。
【食べ物でも免疫力が上がる】
何よりも重要なのが、栄養バランスの良い食事です。
特にワンちゃんは肉や魚といった動物性たんぱく質と野菜のバランスが大事です。
理想は(お肉・お魚:野菜、果物)=6:4と言われています。
また、以下の食材や成分は免疫力を高める効果があります。
・きのこに含まれるβグルカン
※βグルカンはハナビラダケやアガリクスなどに多く含まれていますが、椎茸や舞茸など身近なキノコにも含まれます。
・ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリーに含まれるアントシアニン
・ニンジンに含まれるβカロチン
・ターメリック(ウコン)
・魚に含まれるEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸
【免疫力は腸内環境にも左右される】
腸には、食べ物だけでなく、それと一緒に病原菌やウイルスなどが常に入り込んでくる危険性のあります。
そこで腸には、病原菌やウイルスなどの外敵を撃退してくれる頼もしい免疫細胞が大集結しています。
からだ全体の60%~70%もの免疫力が腸に集中していると言われています。
ですから腸内環境を良好に保つことができれば、免疫力を高めることにつながるわけです。
腸内環境を整え免疫力をアップするには、善玉菌や善玉菌のエサとなる発酵食品と食物繊維をバランス良く摂取することが大切です。
ビフィズス菌、乳酸菌、オリゴ糖、ヨーグルト、納豆、きのこ、海藻などが腸内環境を整えてくれます。
直接与えるのが難しい場合はそれらが含まれたドッグフードやサプリを併用してみましょう。(※ただしお薬とは違うので必ず効果がある訳ではないです)
また、免疫力アップに関してはストレスが大きく関係しています。
あまり予防に神経質になるとかえってストレスを溜める結果になるので、無理なく続けられることをしてあげればOKです♪
犬の癌を早期発見するために日常で観察するポイントは?
・食欲があるか?食べるスピードが遅くないか?
・散歩を嫌がったり、疲れやすくないか?
・咳をしたり、息切れをしていないか?
・皮膚がただれていたり、毛が抜けていたりしないか?
・下痢が続いたり便に血が混ざっていないか?
・おしっこの色がおかしかったり、血が混ざっていないか?
・足が痛そうだったり、ひきずって歩いていないか?
・身体にしこりがあったり、”できもの”や”イボ”ができていないか?
・口の中に腫れやできものがないか?よだれが多かったり口臭はないか?
次はワースト2位の心臓病の説明をします。
2位 心臓病 17%
犬の心臓病にはいろいろな病気がありますが、その多くで初期症状はあまりはっきりしたものがありません。
そのため、心臓病を早期に発見し、早期治療を始めることが重要です。
犬がなりやすい心臓病 ワースト4
1.僧帽弁閉鎖不全症
2.フィラリア症
3.拡張型心筋症
4.先天性心血管奇形
1.僧帽弁閉鎖不全症
犬の心臓病で一番多いのが、僧帽弁閉鎖不全症です。
小型犬に多く、マルチーズやヨークシャーテリア、トイプードルが好発犬種であるといわれています。
発症年齢は8歳くらいがですが、早い場合だと6歳ほどで発症することもあります。
僧帽弁閉鎖不全症は心臓の部屋をしきっている僧帽弁という薄い弁がきちんと閉鎖せず、血液の逆流が起こることにより症状が起きます。
心臓の役割が正常に果たせず、全身の血液が十分に行き届かなくなってしまいます。
2.フィラリア症
フィラリア症は、蚊を介して犬の心臓や肺動脈に寄生する寄生虫が起こす病気です。
放置すれば死に至ることもありますし、治療で寄生虫を取り除くことができても健康な体には戻れないおそろしい病気です。
→命を落とす危険も!フィラリアの予防対策「症状は?治る病気?」
3.拡張型心筋症
心臓を動かす筋肉の異常により心臓の収縮力が低下する病気です。
収縮力が低下すると全身へ送られる血液量が減少します。
また心臓内に血液が貯まることによって心臓が拡張し、心臓肥大が起こります。
拡張型心筋症になりやすい犬種は、アメリカンコッカー、ダルメシアン、ドーベルマン、ボクサー、スパニエルなどの大型犬で、メスよりオスに多いと言われています。
4.先天性心血管奇形
生まれたときすでに異常を持っている心臓のことです。
犬で最も多いのは「動脈管開存症」です。
子犬の頃は無症状のことが多く、ワクチン接種の診察で発見されることがあります。
犬の心臓病の症状は?
初期の段階でははっきりした症状が現れないことが多く、症状が出る頃には進行している場合も少なくありません。
以下のような症状が見られたら一刻も早く病院に行ってください。
・なんとなく元気がない
・ 散歩を嫌がる、疲れやすい
・ 咳をする(のどに詰まったような仕草)
・ 呼吸が荒い、苦しそう、舌の色が紫色になっている(チアノーゼ)
・ お腹が膨らんできた(腹水)
・ 突然ふらつく、倒れる(失神)
犬の心臓病は予防できる?
フィラリア症は予防薬(駆除薬)を適切に飲ませていれば予防できる病気です。
基本的に心臓病は初期症状があまりないので定期的な検診を受けることが大切です。
・フィラリア予防を確実に行う
・適切なドッグフードの量を守って肥満防止
・定期的に健康診断を受ける
次はワースト3位の腎不全について説明します。
3位 腎不全 7%
腎臓病は高齢の犬で多くみられ、進行すると死に至る病気です。
腎臓は年齢とともに徐々に機能が失われていくことが多いのですが、再生しないのが特徴です。
そのため一度失われた機能は回復することが難しいのです。
◆腎臓は老廃物を尿として体から出す
体内の老廃物や余分な水分を外へ出して血液をきれいにすることが腎臓の一番重要な働きです。
簡単に言えばフィルターでろ過するイメージです。
腎臓には他にも、
・体内の水分量やイオンバランスを調整する
・血圧を調節する
・血液をつくる
・活性型ビタミンDをつくってカルシウムの吸収を助ける
といった働きがあります。
腎臓の働きは?
腎不全には、中毒などにより急激に腎機能が低下してしまう「急性腎不全」と、時間の経過とともに徐々に腎臓病が進行していく「慢性腎不全」があります。
【急性腎不全の原因】
・血液量の減少
嘔吐・下痢などによる重度の脱水、心臓病、敗血症、大量出血など
・腎臓そのものへのダメージ
中毒などにより腎臓自体に急激なダメージがあった場合に起こります。
例えば人間用の薬や不凍液、レーズンなど、犬にとって毒性のある物質を食べてしまうと、その毒物が腎臓に大きなダメージを与えることがあります。
・尿路のトラブル
尿路結石や腫瘍などが原因で、尿の通り道(尿路)のどこかが詰まってしまい、尿を外に排泄できなくなると、腎臓が尿で満杯になりダメージを受けてしまいます。
ガレージや車庫で飼っている場合は危険なものが多いので注意しましょう。
【慢性腎不全の原因】
・老化による腎臓機能の低下
・腎臓病や他の疾患(ガン・糖尿病など)によるもの
・塩分の摂り過ぎ、人間の食事を与えている
犬が腎不全になるとどうなる?
腎不全が進行すると、尿として排出されるべき老廃物が体内に急激に蓄積され、「尿毒症」という状態に陥ることがあります。
悪化するとけいれんや昏睡を引き起こして死に至る場合もあります。
・食欲がなくなる
・元気がなくだるそうにしている
・被毛にツヤがなくなりパサパサする
・下痢、嘔吐
・アンモニアのような口臭がする
・口の中から血が出る
・体温が低い
・けいれん、昏睡がみられる
・色が薄い尿を頻繁にする
・お水を異常に飲む
・動きたがらない
・すぐに疲れる
・食欲がなくなる
・嘔吐する
・痩せてきた
上のような症状が見られたら一刻もはやく病院に行ってください。
犬の腎不全の予防法は?
塩分の与えすぎと犬の腎不全にはあまり関係がないことがわかっています。
とは言うものの脱水も腎不全の原因になりますので、必要以上の塩分を与えるのはよくありません。
人間用の濃い味付けの食べ物は控えて、新鮮な水をいつでも自由に飲むことができる環境を整えてあげるようにしましょう。
急性の腎不全は、すぐに治療をしなければ命を落とす可能性の高い病気です。
もしも腎不全と思われる症状が見られたら、すぐに病院に連れていきましょう。
また、慢性腎不全の場合、飼い主さんが気付くような症状がでた頃には、腎臓病は進行してしまっていることがほとんどです。
病気を早い段階で発見するためには、健康そうに見えている犬でも定期的な血液検査や尿検査を行うことがとても重要です。
まとめ:全ての病気に共通して言えるのは早期発見が大切ということ
いくら飼い主さんが気を付けていても、残念ながら病気になってしまうことがあるのも現実です。
でも早期発見をすれば病気の悪化を食い止めたり、進行を遅らせることができます。
日頃のお手入れやスキンシップの中で愛犬の様子に変わったことがないかを観察してあげましょう。
特に親犬が遺伝的な病気を持っていたり、ある程度の年齢になったワンちゃんは健康診断を受けさせてくださいね。
また、犬も人間と同じように病気に対抗する免疫力が備わっています。
犬が本来持っている免疫力を高めて自己治癒力を引き出してあげることも病気の予防に役立ちます。
栄養バランスの良い食事を与え、出来るだけストレスのない生活を送らせてあげたいものです。