犬のアジソン病とは?気づくサインと治療の流れ、家での過ごし方
この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)とは、副腎から出るホルモン(コルチゾールやアルドステロン)が足りなくなる病気のことです。クッシング症候群とは反対に、ホルモンが「足りない」状態です。
- 元気がない、食欲が落ちる、吐く、下痢をする、やせるといった変化が、よくなったり悪くなったりをくり返し、ストレスで悪化しやすいとされています。
- 急にぐったりする・倒れる・ひどく吐くといった状態(アジソンクリーゼ)は命に関わる緊急事態とされ、すぐ動物病院に電話します。
- 診断がつけば、足りないホルモンを薬で補う治療を続けることで、多くの犬がふだんどおりの生活に戻れるとされています。
犬のアジソン病は、副腎から出るホルモンが足りなくなる病気です。元気がない、食欲が落ちる、吐く、下痢をするといった変化が、よくなったり悪くなったりをくり返すのが特徴とされ、ほかの病気と見分けにくいことから「偽装の名人」とも呼ばれます。急にぐったりする、倒れる、何度も吐くときは命に関わることがあるため、様子を見ずにすぐ動物病院に電話してください。診断がつけば、足りないホルモンを薬で補う治療を続けることで、多くの犬がふだんの生活に戻れるとされています。
このページでは、どんな病気か、クッシング症候群との違い、症状(気づくサイン)、すぐ電話したほうがいいサイン、病院で行われること、シニア犬で気をつけたいこと、寿命について、家での過ごし方、費用を順に紹介します。診断はしません。気になる変化があれば、かかりつけの動物病院に相談してください。
犬のアジソン病とは?どんな病気?
犬のアジソン病とは、腎臓の近くにある副腎から出るホルモンが足りなくなり、体のバランスが保てなくなる病気のことです。正式には「副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)」といいます。
副腎からは、主に次の2種類のホルモンが出ています。
| ホルモン | 主な役目 | 足りなくなると |
|---|---|---|
| コルチゾール(糖質コルチコイド) | ストレスに対応する、血糖を保つ など | 元気・食欲がない、吐く、下痢をする など |
| アルドステロン(鉱質コルチコイド) | 体の塩分(ナトリウム)とカリウムのバランスを保つ | 体の水分が減る、カリウムが増えて心臓のリズムが乱れる など |
出典:MSD Veterinary Manual「Addison Disease (Hypoadrenocorticism) in Animals」、富士フイルム VETコラム「犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
MSD獣医マニュアルでは、犬のアジソン病の多くは副腎そのものが壊れていくことで起こり、免疫のしくみが関わっていると考えられています。そのほか、副腎への腫瘍の転移や出血、クッシング症候群の治療の薬によって起こることもあるとされています。コルチゾールだけが足りない「非定型アジソン病」というタイプもあり、のちにアルドステロンも足りなくなることがあると説明されています。
かかりやすい年齢・犬種
MSD獣医マニュアルでは、若い成犬〜中年の犬に多く、メスにやや多いとされています。富士フイルムの獣医師向けコラムでは、好発年齢は4〜6歳とされる一方、非定型アジソン病29頭の年齢の中央値は7歳だったという報告も紹介されています。スタンダード・プードル、グレート・デーン、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ビアデッド・コリーなどが挙げられていますが、雑種を含め、どの犬でも起こりうるとされています。
アジソン病とクッシング症候群の違いは?
「アジソン病」と「クッシング症候群」は、どちらも副腎のホルモンの病気なので、名前を聞いて混乱する方も多いと思います。大きな違いは、ホルモンが「足りない」か「多すぎる」かです。
| アジソン病 | クッシング症候群 | |
|---|---|---|
| 正式な名前 | 副腎皮質機能低下症 | 副腎皮質機能亢進症 |
| ホルモンの状態 | 足りない | 多すぎる(コルチゾール) |
| 多いとされる年齢 | 若い成犬〜中年 | 中高齢 |
| 気づきやすいサイン | 元気・食欲がない、吐く、下痢、やせる。よくなったり悪くなったり | 水をよく飲む、よく食べる、お腹が膨れる、毛が薄くなる |
| 急に悪くなることは | アジソンクリーゼ(ショック状態)がある | ふつうはゆっくり進む |
| 治療の考え方 | 足りないホルモンを補う | 多すぎるホルモンを抑える |
出典:MSD Veterinary Manual「Addison Disease (Hypoadrenocorticism) in Animals」「Cushing Syndrome (Hyperadrenocorticism) in Animals」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
MSD獣医マニュアルでは、クッシング症候群の治療に使う薬(トリロスタンなど)によってアジソン病が起こることがあるとされています。クッシング症候群の治療中に、元気がない、食べない、吐く、下痢をするといった様子が出たときは、すぐかかりつけの病院に連絡してください。また、アジソン病の治療でホルモンの薬が多すぎると、水をよく飲む、息が荒いなど、クッシング症候群に似た様子が出ることがあると説明されています。クッシング症候群については犬のクッシング症候群にまとめています。
犬のアジソン病の症状は?気づくサイン
MSD獣医マニュアルや米国の動物病院グループ(VCA)の解説では、次のような変化が挙げられています。どれも、ほかの病気でも見られるはっきりしない変化です。
| 気づくサイン | どんな様子か |
|---|---|
| 元気がない | 寝てばかりいる、動きたがらない、弱々しい |
| 食欲が落ちる | ごはんを残す、食べない日がある |
| おなかの症状 | 吐く、下痢をする |
| やせる | 体重が少しずつ減る |
| 水をよく飲む | 水を飲む量・おしっこが増えることがある |
| 体が震える | ときどき震えることがある |
| よくなったり悪くなったり | 点滴や薬で一時的によくなるが、また戻る |
出典:MSD Veterinary Manual「Addison Disease (Hypoadrenocorticism) in Animals」、VCA Animal Hospitals「Addison's Disease in Dogs」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
MSD獣医マニュアルでは、症状はストレスがきっかけで出たり悪くなったりしやすいとされています。富士フイルムの獣医師向けコラムで紹介された報告では、非定型アジソン病29頭のうち24頭に、下痢・食欲の低下・嘔吐・体重減少といったおなかの症状があったとされています。
「くり返す胃腸の不調」をメモしておく
ペットホテルから帰ったあと、来客や引っ越しのあとなどに、元気がない・吐く・下痢といった不調が出て、しばらくすると戻る。こうしたことをくり返しているときは、日付と、その前にあった出来事をメモしておくと、病院で伝えやすくなります。下痢のときの見方は犬の下痢にまとめています。
すぐ病院に電話したほうがいいサインは?(アジソンクリーゼ)
アジソン病では、ホルモンが急に大きく足りなくなり、ショック状態になることがあります。これを「アジソンクリーゼ(副腎クリーゼ)」といい、VCAの解説では、すぐ入院して治療が必要な緊急事態とされています。次のような様子があるときは、様子を見ずにすぐ動物病院に電話してください。夜間や休日なら、夜間救急の動物病院に電話して向かいます。
こんなときは、すぐ動物病院に電話してください
- 急にぐったりして立てない、倒れた
- 何度も吐く、ひどい下痢をする(血が混じる)
- 水も飲めない、食べない
- 歯ぐきの色が白っぽい、体が冷たい
- 呼びかけへの反応がにぶい、震えが止まらない
- アジソン病やクッシング症候群の治療中に、元気・食欲が急に落ちた、吐く・下痢をする
MSD獣医マニュアルでは、アジソンクリーゼでは体の水分が減って血圧が下がる、カリウムが増えて心臓の脈がゆっくり・不規則になる、血糖が下がるといった変化が起こるとされています。富士フイルムの獣医師向けコラムで紹介された報告では、アジソン病と診断された84頭のうち28頭(33%)がクリーゼと判断されたとされています。家で様子を見ていてよい状態ではないので、迷ったら電話してください。
病院ではどんな検査・治療をする?
検査の流れ
病院では、問診と体の診察のあと、次のような検査を組み合わせて調べるのが一般的です。
- 血液検査:ナトリウムとカリウムのバランス、腎臓の数値、血糖などを見る
- コルチゾールの検査:まずコルチゾールの値を測り、必要に応じて「ACTH刺激試験」(薬を注射して前後のコルチゾールの変化を見る検査)で確かめる
- そのほか:心電図、レントゲン、超音波検査などで、ほかの病気がないかを見る
MSD獣医マニュアルやVCAの解説では、ACTH刺激試験がもっとも確かな検査とされています。ステロイドの薬を飲んでいると結果の判断が難しくなることがあるため、飲んでいる薬は必ず伝えましょう。
治療の流れ
| 時期 | 行われることの例 |
|---|---|
| アジソンクリーゼのとき | 入院して点滴で水分と塩分を補い、血液の状態を見ながらホルモンの薬などで治療する |
| 落ち着いてから | 足りないホルモンを補う薬を続ける。注射(3〜4週ごと)と飲み薬の組み合わせ、または飲み薬など |
| 続けている間 | 定期的に血液検査をして、薬の量を調整する |
出典:MSD Veterinary Manual「Addison Disease (Hypoadrenocorticism) in Animals」、VCA Animal Hospitals「Addison's Disease in Dogs」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
MSD獣医マニュアルでは、治療は多くの場合生涯続き、体調をくずしたときやストレスがかかるときは、飲み薬(ステロイド)の量を増やすことがあるとされています。VCAの解説では、注射は練習すれば家で行えることがあるとされていますが、日本で家での注射ができるかどうか、どの薬を使うかは病院によって違います。
シニア犬のアジソン病で気をつけたいこと
年をとってからも起こりうる
アジソン病は若い成犬〜中年に多いとされますが、年齢の幅は広く、シニア犬でも起こりうる病気です。また、非定型のタイプは、典型的なタイプより年齢が高い傾向があるという報告もあります。「年だから胃腸が弱くなった」と思っていた不調が、くり返していないか見直してみてください。
クッシング症候群の治療中は、とくに注意
年をとった犬はクッシング症候群の治療を受けていることもあります。上で紹介したように、治療の薬によってホルモンが足りなくなることがあるとされています。治療中に元気・食欲が落ちたら、次の受診日を待たずに病院に連絡しましょう。
腎臓の病気と間違えやすいことがある
MSD獣医マニュアルでは、アジソンクリーゼのときは腎臓の数値が上がり、腎臓の病気に似て見えることがあるとされています。シニア犬は腎臓の病気も多いので、診断に時間がかかることもあります。腎臓の病気については犬の腎臓病にまとめています。
アジソン病と言われたら、寿命はどのくらい?
「アジソン病 寿命」で調べる方も多いと思います。MSD獣医マニュアルでは、適切な治療と定期的な検査を続ければ、長い目で見た見通しはよいとされています。VCAの解説でも、診断がつき、合った薬で落ち着けば、多くの犬で見通しはよく、アジソンクリーゼを経験したあとでもふだんの生活に戻れる犬が多いとされています。
ただし、年齢、ほかの病気、診断までの経過などで一頭一頭違います。このページでは、寿命の数字はお伝えしていません。不安なときは、かかりつけの獣医師に次のことを聞いてみてください。
- 今の状態と、治療で目指すこと
- 体調をくずしたとき、ストレスがかかるときの対応
- 家で気をつけてほしいサイン
アジソン病の犬との家での過ごし方
家でできること
- 薬は決められた量と時間を守る。注射の予定日はカレンダーに書いておく
- 自己判断で薬をやめたり、減らしたりしない
- 体調をくずしたとき・ストレスがかかるときに薬をどうするか、あらかじめ病院に聞いておく
- 元気・食欲・便の様子・体重を記録する
- 来客、引っ越し、旅行、預けるなど、いつもと違う予定は前もって病院に相談する
- ペットホテルやペットシッターには、病気、薬、かかりつけ病院の連絡先を伝える
- 水はいつでも飲めるようにしておく
- 夜間救急の動物病院の電話番号を、すぐわかる場所に控えておく
VCAの解説では、治療が落ち着けば、食事や運動はふだんどおりでよいことが多いとされています。どこまでふだんどおりでよいかは、愛犬の状態に合わせて獣医師に聞いてください。
急に悪くなるかもしれない、という心配を抱えて暮らすのは、飼い主にとっても負担です。「こうなったら電話する」「夜はここに電話する」を家族で共有しておくだけでも、気持ちが少し楽になります。夜間の病院の探し方は夜間の動物病院にまとめています。
アジソン病の治療にかかる費用は?
アジソン病について、保険会社などが公表している請求の例は、確認できた範囲では見つかりませんでした。全国でそろった公的な統計も見つかっていません。治療を始めるときに、1か月あたりの薬代と検査代の見込みを病院で聞いておきましょう。
一般に、次のような費用がかかります。
| 時期 | かかる費用の例 |
|---|---|
| 診断のとき | 診察、血液検査、ホルモンの検査(ACTH刺激試験)、画像検査 |
| アジソンクリーゼのとき | 入院、点滴、検査をくり返す費用 |
| 続けている間 | 薬代(注射・飲み薬)、定期的な血液検査 |
薬の量は体の大きさで変わるため、大きな犬ほど薬代がかかりやすくなります。治療を始める前に「1か月あたりいくらか」「緊急時にはどのくらいかかるか」を病院で聞いておくと、家計の計画が立てやすくなります。ペット保険に入っている場合は、補償の対象になるかを保険会社に確かめましょう。保険の選び方はシニア犬のペット保険にまとめています。
病院で聞くこと
診断を受けたときや治療を始めるときは、次のことを聞いておくと、家での過ごし方が考えやすくなります。この記事の最後に、印刷できるメモも用意しています。
- どの検査で、どのように判断したか(典型的なタイプか、非定型か)
- 薬の種類、飲ませ方・注射の間隔、忘れたときの対応
- 体調をくずしたとき、ストレスがかかるときの薬の対応
- すぐ電話してほしい様子と、夜間の連絡先
- 次の血液検査はいつか
- 費用の見込み(1か月あたり、緊急時)
ひとりで聞くのが不安なときは、メモを持っていく、家族と一緒に行く、説明をメモしてよいか聞く、といった方法もあります。
よくある質問
アジソン病とクッシング症候群は何が違いますか?
どちらも副腎のホルモンの病気ですが、クッシング症候群はコルチゾールが多すぎる病気、アジソン病は足りない病気で、反対の状態です。クッシング症候群の治療の薬が効きすぎて、アジソン病と同じような状態になることもあるとされています。くわしくは本文の比較表をご覧ください。
アジソン病と言われました。寿命はどのくらいですか?
米国の獣医師向け資料や動物病院の解説では、適切な治療と定期的な検査を続ければ、長い目で見た見通しはよいとされています。ただ、年齢やほかの病気、診断までの経過で一頭一頭違うため、このページでは寿命の数字はお伝えしていません。今の状態とこれからのことを、かかりつけの獣医師に聞いてみてください。
治療はずっと続きますか?
多くの場合、足りないホルモンを補う治療は生涯続けるとされています。飲み薬を毎日飲む方法や、3〜4週ごとの注射と飲み薬を組み合わせる方法などがあり、愛犬に合った方法を獣医師が選びます。自己判断で薬をやめたり減らしたりしないでください。
旅行やペットホテルに預けるときに気をつけることは?
アジソン病の犬は、ストレスがかかると症状が出やすいとされ、体調をくずしたときなどは薬を増やすことがあると説明されています。預ける・旅行するなど、いつもと違う予定があるときは、事前に薬の量や対応をかかりつけの獣医師に相談し、預け先にも病気と連絡先を伝えておきましょう。
治療費はどのくらいかかりますか?
保険会社などが公表しているアジソン病の請求例は、確認できた範囲では見つかりませんでした。診断のときは血液検査やホルモンの検査、緊急時は入院の費用、そのあとは薬代と定期的な血液検査の費用がかかります。体の大きさや治療方法で大きく変わるため、1か月あたりの見込みを病院で聞いておきましょう。
アジソン病:病院に持っていくメモ
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- 元気・食欲が落ちた日と、もとに戻った日(くり返しているか)
- 吐いた・下痢をした日と回数、便の色(血が混じっていないか)
- 体重(週1回)
- 水を飲む量、おしっこの回数の変化
- 体が震えた・ふらついたときの様子(動画)
- 症状が出る前にあった出来事(来客、引っ越し、預けた、通院 など)
- 飲んでいる薬(とくにクッシング症候群の薬、ステロイドの薬)
- 病院で聞きたいこと(薬の量・体調をくずしたときの対応・次の検査・費用)
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-addison/
参考にした情報
- MSD Veterinary Manual(Professional Version)「Addison Disease (Hypoadrenocorticism) in Animals」
- VCA Animal Hospitals「Addison's Disease in Dogs」
- 富士フイルム VETコラム「犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)」
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
- 出典と数字を確認し、確認できなかった点の書き方を直しました。
内容の誤りや古い情報にお気づきの方は、お問い合わせからお知らせください。
この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。