犬の甲状腺機能低下症とは?気づくサインと治療の流れ、家での過ごし方
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体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 犬の甲状腺機能低下症とは、のどにある甲状腺から出るホルモンが足りなくなり、体の働きが全体にゆっくりになる病気のことです。中高齢の犬に多いとされています。
- 元気がない・疲れやすい、食べる量は変わらないのに太る、寒がる、体の左右対称に毛が薄くなる、皮膚が乾く・黒ずむなどが、気づきやすいサインとして挙げられています。
- 病院では血液検査で甲状腺ホルモンなどを調べ、足りないホルモンを飲み薬で補う治療が一般的です。多くの場合、薬は長く続けます。
- 家では、元気・体重・毛と皮膚の様子を記録し、薬を決められたとおりに飲ませることが、治療の調整に役立ちます。
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺から出るホルモンが足りなくなり、体の働きが全体にゆっくりになる病気で、中高齢の犬に多いとされています。元気がない・疲れやすい、食べる量は変わらないのに太る、寒がる、体の左右対称に毛が薄くなるといった変化で気づくことが多い病気です。どれも「年のせいかな」と思いやすい変化なので、いくつか重なっていたら、体重や毛の様子をメモして、かかりつけの動物病院に相談しましょう。治療は、足りないホルモンを飲み薬で補うのが一般的です。
このページでは、どんな病気か、症状(気づくサイン)、すぐ電話したほうがいい様子、病院で行われること、シニア犬で気をつけたいこと、寿命について、家での過ごし方、費用の例を順に紹介します。診断はしません。気になる変化があれば、かかりつけの動物病院に相談してください。
犬の甲状腺機能低下症とは?どんな病気?
犬の甲状腺機能低下症とは、のどの左右にある甲状腺という小さな臓器から出る「甲状腺ホルモン」が足りなくなる病気のことです。甲状腺ホルモンは、体の代謝(エネルギーを使う働き)を保つ役目をしているため、足りなくなると、元気、体重、皮膚や毛、体温など、体のあちこちに変化が出ます。
MSD獣医マニュアルでは、犬の甲状腺機能低下症の95%以上は、甲状腺そのものが壊れていくことで起こるとされています。国内の獣医師が監修した解説も合わせると、原因は次のように分けられます。
| 原因 | どんなものか |
|---|---|
| リンパ球性甲状腺炎 | 免疫のしくみが自分の甲状腺を攻撃して壊していく。もっとも多いとされる |
| 特発性甲状腺萎縮 | はっきりした原因がわからないまま、甲状腺が小さくなっていく |
| 甲状腺の腫瘍 | 腫瘍によって甲状腺の働きが落ちる |
| 脳の下垂体などの異常 | 甲状腺に指令を出すホルモンが足りなくなる。まれ |
出典:MSD Veterinary Manual「Hypothyroidism in Animals」、オリコン ペット保険「犬の甲状腺機能低下症」(獣医師 安田賢 監修)をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
また、ほかの重い病気があるときや、ステロイドなど一部の薬を飲んでいるときは、甲状腺そのものは悪くなくても、検査で甲状腺ホルモンの値が低く出ることがあるとされています。そのため、本当の甲状腺機能低下症かどうかの見極めが大切だと説明されています。
かかりやすい年齢・犬種
MSD獣医マニュアルでは4〜10歳に多く、性別による差はないとされています。国内の獣医師が監修した解説では、5歳以上、とくに7歳以降に多いとされています。中型〜大型の犬に多いとされ、ゴールデン・レトリーバー、コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザー、ダックスフンドなどが挙げられていますが、どの犬種でも起こりうる病気です。
犬の甲状腺機能低下症の症状は?気づくサイン
国内の獣医師が監修した解説と、MSD獣医マニュアルでは、次のような変化が挙げられています。ひとつずつは目立たず、ゆっくり進むことが多いため、気づいたときには前からあった、ということもよくあります。
| 気づくサイン | どんな様子か |
|---|---|
| 元気がない・疲れやすい | 寝ている時間が増える、散歩ですぐ疲れる、反応がにぶい |
| 太りやすい | 食べる量は増えていないのに体重が増える |
| 寒がる | 暖かい場所から動かない、体が冷たい感じがする |
| 毛が薄くなる | 胴体の左右対称や、しっぽの毛が薄くなる。かゆみは少ないことが多い |
| 皮膚の変化 | 乾燥、フケ、黒ずみ、皮膚の感染をくり返す |
| 顔つきの変化 | 顔の皮膚が厚くなり、悲しそうな表情に見えることがある |
| 心臓・神経の変化 | 脈がゆっくりになる、ふらつき、首をかしげる、顔の片側が動きにくい など |
出典:価格.com保険「犬の甲状腺機能低下症」(獣医師 三宅亜希 監修)、オリコン ペット保険「犬の甲状腺機能低下症」(獣医師 安田賢 監修)、MSD Veterinary Manual をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
MSD獣医マニュアルでは、左右対称でかゆみの少ない脱毛は、この病気の犬のおよそ3分の2に見られるとされています。神経の症状は多くはないものの、治療をしても残ることがあるとも説明されています。
「年のせい」と思っていた変化を見直してみる
寝てばかりいる、散歩に行きたがらない、太ってきた。シニア犬ではよくあることなので、病気のサインだとは気づきにくいものです。獣医師が監修した解説でも、症状がはっきりしないことが多いとされています。前と比べて変わったことを書き出し、写真や動画を残しておくと、病院で伝えやすくなります。
すぐ病院に電話したほうがいいサインは?
甲状腺機能低下症は、ふつうはゆっくり進む病気です。ただ、次のような様子があるときは、様子を見ずにすぐ動物病院に電話してください。夜間や休日なら、夜間救急の動物病院に電話して、向かったほうがいいか聞きます。
こんなときは、すぐ動物病院に電話してください
- ぐったりして呼びかけへの反応がにぶい、うとうとして起きない
- 体がとても冷たい、震えが止まらない
- 呼吸が浅い・苦しそう、歯ぐきや舌の色が悪い
- けいれんした、立てない、急にふらついて歩けない
- 顔がゆがむ、首が急に傾いたなど、急に様子が変わった
- 薬を始めてから、落ち着きがない、息が荒い、水を飲む量や食欲が急に増えた
MSD獣医マニュアルでは、まれに「粘液水腫性昏睡」という重い状態になり、ぼんやりして意識がうすれ、体温が大きく下がることがあると説明されています。また、獣医師が監修した解説では、薬の量が多すぎると脈が速くなる、興奮するといった様子が出ることがあるとされています。
病院ではどんな検査・治療をする?
検査の流れ
病院では、問診と体の診察のあと、次のような検査を組み合わせて調べるのが一般的です。
- 一般の血液検査:コレステロールが高い、軽い貧血があるなど、手がかりになる変化を見る
- 甲状腺ホルモンの検査:T4(サイロキシン)、遊離T4、甲状腺に指令を出すホルモン(TSH)などを測る
- 超音波(エコー)検査:必要に応じて、甲状腺の大きさや形を見る
MSD獣医マニュアルでは、甲状腺機能低下症は「診断されすぎやすい病気のひとつ」とされ、T4がひとつ低いだけでは決められないと説明されています。ほかの病気や飲んでいる薬で値が下がることがあるため、症状と検査結果を合わせて判断します。飲んでいる薬やサプリは、すべて伝えましょう。
治療の流れ
| 時期 | 行われることの例 |
|---|---|
| 治療を始める | 甲状腺ホルモンの飲み薬を毎日飲む |
| 始めて4〜8週ごろ | 血液検査で薬の量が合っているか確かめ、量を調整する |
| 落ち着いてから | 年に1〜2回ほど血液検査で確認する |
出典:MSD Veterinary Manual「Hypothyroidism in Animals」、オリコン ペット保険「犬の甲状腺機能低下症」(獣医師監修)をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
MSD獣医マニュアルでは、元気のなさは2週間ほどで変わってくることが多く、皮膚や体重の変化は3か月ほどかかることがあるとされています。腫瘍が原因の場合は、手術や放射線治療などを検討することもあります。検査の時期や採血のタイミング(薬を飲んでから何時間後か)は病院ごとに指示があるので、最初に確認しておきましょう。
シニア犬の甲状腺機能低下症で気をつけたいこと
ほかの病気と一緒に考える
年をとった犬は、ほかの持病を持っていることも多いものです。ほかの病気があると、甲状腺ホルモンの検査の値が下がることがあるとされ、見極めには時間がかかることもあります。また、クッシング症候群でも毛が薄くなる、太って見えるといった似た変化があります。気になる変化はまとめて相談しましょう。クッシング症候群については犬のクッシング症候群にまとめています。
健康診断を活用する
獣医師が監修した解説では、予防法は知られておらず、定期的な健康診断で早く見つけることが勧められています。シニア期の健康診断で、甲状腺の検査も必要か相談してみてください。健康診断の受け方はシニア犬の健康診断にまとめています。
人の薬と量が大きく違う
MSD獣医マニュアルでは、犬に使う甲状腺ホルモンの薬の量は、人よりずっと多いと説明されています。家族に同じ病気の人がいても、人の薬を犬に飲ませたり、犬の薬の量を人の感覚で判断したりしないでください。
甲状腺機能低下症と言われたら、寿命はどのくらい?
「甲状腺機能低下症 寿命」で調べる方も多いと思います。獣医師が監修した解説では、完治は難しいものの、薬とケアを続ければ、健康な犬と変わらない生活を送れることが多いとされています。
ただし、年齢、ほかの病気、原因(腫瘍かどうか)、治療への反応などで、一頭一頭違います。このページでは、寿命の数字はお伝えしていません。不安なときは、かかりつけの獣医師に次のことを聞いてみてください。
- 今の状態と、治療で目指すこと
- 薬の量が合ってきたら、どんな変化が期待できるか
- 家で気をつけてほしいサイン
犬の年齢の目安は犬の平均寿命にもまとめています。
甲状腺機能低下症の犬との家での過ごし方
家でできること
- 薬は毎日決められた時間に。食事との間隔の指示があれば守る
- 飲ませ忘れたときの対応を、最初に病院で聞いておく
- 自己判断で薬の量を変えたり、やめたりしない
- 体重を週1回量り、元気・食欲・散歩の様子をメモする
- 毛や皮膚の様子を月1回ほど同じ場所で写真に残す
- 寒がるときは、毛布やベッドで暖かい寝床をつくる(暖房器具の当てすぎに注意)
- 散歩は疲れすぎない距離から。様子を見ながら少しずつ
- 食事やおやつの量は、病院と相談した量を守る
- 皮膚が乾燥しやすいときは、シャンプーの回数や方法を病院に相談する
薬の量が合ってくると、元気が戻ってきたと感じる飼い主もいます。変化を記録しておくと、次の検査のときに獣医師が量を調整する手がかりになります。
毎日の薬と通院は、長く続くと負担に感じることもあります。家族で薬の担当を決める、カレンダーやアプリで飲ませた記録をつけるなど、続けやすい方法を探してみてください。
甲状腺機能低下症の治療にかかる費用は?
費用は、検査の内容、体の大きさ(薬の量)、病院によって大きく変わります。全国でそろった公的な統計は見つかっていません。参考として、保険会社が公表している請求の例を紹介します。
| 項目 | 金額の例 |
|---|---|
| 診察 | 500円 |
| 血液検査(一般) | 5,000円 |
| 血中ホルモン検査 | 5,000円 |
| 合計 | 10,500円 |
出典:価格.com保険「犬の甲状腺機能低下症」(アニコム損害保険への請求の一例。柴犬・7歳・通院1日。平均や水準を示すものではありません)(2026年10月23日に確認)
国内の獣医師が監修した別の解説では、血液検査が15,000〜20,000円程度、毎月の薬代が5,000〜15,000円程度(犬の大きさや薬の量で変わる)という目安が紹介されています。治療は長く続くことが多いので、「1か月あたり」「1年あたり」の見込みを病院で聞いておくと、家計の計画が立てやすくなります。
ペット保険に入っている場合は、補償の対象になるかを保険会社に確かめましょう。保険の選び方はシニア犬のペット保険にまとめています。
病院で聞くこと
診断を受けたときや治療を始めるときは、次のことを聞いておくと、家での過ごし方が考えやすくなります。この記事の最後に、印刷できるメモも用意しています。
- どの検査で、どのように判断したか
- 薬の飲ませ方(時間、食事との間隔、飲ませ忘れたとき)
- 次の血液検査はいつか。採血は薬を飲んでから何時間後がいいか
- どんな変化があったら、すぐ電話してほしいか
- ほかに気をつけたい病気があるか
- 費用の見込み(検査、1か月あたりの薬代)
ひとりで聞くのが不安なときは、メモを持っていく、家族と一緒に行く、説明をメモしてよいか聞く、といった方法もあります。
よくある質問
犬の甲状腺機能低下症は治りますか?
獣医師が監修した解説やMSD獣医マニュアルでは、一度働きが落ちた甲状腺がもとに戻ることは難しく、多くの場合、ホルモンを補う薬を生涯続けると説明されています。一方で、薬の量が合えば症状は落ち着いていくとされています。愛犬の場合は、かかりつけの獣医師に聞いてください。
甲状腺機能低下症と言われました。寿命は短くなりますか?
獣医師が監修した解説では、薬とケアを続ければ、健康な犬と変わらない生活を送れることが多いとされています。ただ、年齢やほかの病気、治療への反応で一頭一頭違うため、このページでは寿命の数字はお伝えしていません。今の状態とこれからのことを、かかりつけの獣医師に聞いてみてください。
薬はいつまで飲ませればいいですか?
多くの場合は生涯続けるとされています。自己判断で量を変えたり、やめたりせず、定期的な血液検査で量を調整してもらいましょう。飲ませ忘れたときの対応も、最初に病院で聞いておくと安心です。
太ってきたのは、甲状腺機能低下症のせいですか?
体重が増える理由は、食事や運動量の変化、年齢による代謝の変化など、ほかにもいろいろあります。体重だけで病気は決められません。元気のなさ、寒がり、毛や皮膚の変化が重なっていないかも見て、気になるときは健康診断のついでに相談してみてください。
治療費はどのくらいかかりますか?
保険会社が公表している請求の一例では、診察・一般の血液検査・ホルモン検査で合計10,500円という例があります。獣医師が監修した解説では、毎月の薬代が5,000〜15,000円程度という目安も紹介されています。体の大きさや病院で変わるので、始める前に病院で聞いておきましょう。
甲状腺機能低下症:病院に持っていくメモ
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- 元気・散歩の様子の変化(いつごろから、どんなふうに)
- 体重(週1回)と、食べている量
- 寒がるようになったか(日なたや暖房の前から動かない など)
- 毛が薄くなった場所(写真)、皮膚の乾燥・黒ずみ・フケ
- 皮膚や耳のトラブルをくり返していないか
- ふらつき、顔の左右差など、気になる様子(動画)
- 飲んでいる薬とサプリ(とくにステロイドやてんかんの薬)
- 病院で聞きたいこと(検査の結果・薬の量・次の検査・費用)
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-koujousen/
参考にした情報
- 価格.com保険「犬の甲状腺機能低下症」(獣医師 三宅亜希 監修)
- オリコン ペット保険「犬の甲状腺機能低下症」(まさの森・動物病院 院長 安田賢 監修)
- MSD Veterinary Manual(Professional Version)「Hypothyroidism in Animals」
- MSD Veterinary Manual(Pet Owner Version)「Disorders of the Thyroid Gland in Dogs」
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
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この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。