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01 症状と受診

犬の慢性腎臓病とは?気づくサインと治療の流れ、家での過ごし方

この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。

この記事のポイント

  • 犬の慢性腎臓病とは、腎臓の働きが数か月〜年の単位でゆっくり落ちていく病気のことです。はじめは目立つ症状がないことが多いとされています。
  • 国際的な腎臓病の研究グループ(IRIS)は、早いうちに気づくサインとして、水を飲む量とおしっこの量が増えることを挙げています。
  • 病院では血液検査・尿検査・血圧などで調べ、IRISのステージ分類(1〜4)で進み具合を整理します。治療や食事はステージや体の状態で変わるため、かかりつけの獣医師と相談して決めます。
  • 家では、水を飲む量・おしっこ・食欲・体重を記録しておくと、受診のときに役立ちます。

犬の慢性腎臓病は、腎臓の働きがゆっくり落ちていく病気で、はじめは目立つ症状がないことが多いとされています。早いうちのサインとして挙げられているのは、水を飲む量が増える、おしっこの量が増えるという変化です。こうした変化に気づいたら、いつから・どのくらいかをメモして、かかりつけの動物病院に相談しましょう。病院では血液検査や尿検査で腎臓の働きを調べ、進み具合に合わせて治療や暮らし方を一緒に考えていきます。

犬の慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の働きが数か月〜年の単位で少しずつ落ちていく病気のことです。腎臓は、血液をろ過して体の中の水分や成分のバランスを保つ臓器です。国際的な腎臓病の研究グループであるIRIS(International Renal Interest Society)は、慢性腎臓病は犬と猫でもっとも多い腎臓の病気で、ゆっくり進むため、気づいたときには腎臓がかなり傷んでいることがあると説明しています。

なお、「腎不全」は、腎臓の働きが大きく落ちた状態を指す言葉として使われます。

犬の腎臓病は、どんな症状で気づく?

IRISと、獣医師向け・飼い主向けの医学書であるMSD獣医マニュアル(飼い主版)は、次のような変化を挙げています。

時期挙げられている変化
早いうち目立つ症状がないことが多い。気づけるサインとして、水を飲む量が増える・おしっこの量が増える(水の器が早く空になる、家の中でおもらしをする など)
進んでくると元気がない、食欲が落ちる、体重が減る、毛づやが悪くなる、吐く
さらに進むと吐く、元気がない、食べない、体重が減る、脱水、口の中のただれ、下痢 など

出典:IRIS「What pet owners should know」、MSD Veterinary Manual(Pet Owner Version)「Noninfectious Diseases of the Urinary System in Dogs」(2026年10月23日に確認)

日本獣医生命科学大学の獣医師が監修する富士フイルムの解説でも、おしっこの量の変化(増える・減る)、おしっこの色が薄い、水をよく飲む、食欲が落ちる、よく吐く、元気がない、体重が減る、といった変化が一つでもあれば、検査を受けるよう案内しています。

ただし、水をたくさん飲む・おしっこが増えるという変化は、腎臓病のほかにも、糖尿病や副腎の病気、子宮の病気、薬の影響など、いろいろな理由で起こります(岐阜大学の獣医内科学の教材でも、多くの原因が挙げられています)。変化に気づいたら、病名を当てはめずに病院で調べてもらうことが大切です。

こんなときは、すぐ動物病院に電話してください

  • 何度も吐く、水も飲めない
  • ぐったりして、呼んでも反応がにぶい
  • おしっこがほとんど出ない、急に出なくなった
  • まったく食べない状態が続いている(何日と決めず、迷ったら電話を)

急ぎではないけれど、早めに相談したい変化

  • 水を飲む量やおしっこの量が、以前より増えた
  • おしっこの色が薄くなった、おもらしが増えた
  • 少しずつ食べる量や体重が減ってきた

水を飲む量が増えたかどうかは、感覚だけではわかりにくいものです。朝に決まった量の水を入れ、翌朝に残った量を測ると、1日に飲んだ量の目安がわかります。数日分を記録して、病院に持っていきましょう。

腎臓病はどうやって調べる?IRISのステージ分類

病院では、次のような検査を組み合わせて、腎臓の働きや体の状態を調べます。どの検査をするかは、獣医師が愛犬の状態を見て決めます。

  • 血液検査:クレアチニン、SDMA、尿素窒素など、腎臓の働きの目安になる数値を調べる
  • 尿検査:尿の濃さ(比重)や、尿にたんぱくが出ていないか(尿たんぱく/クレアチニン比:UPC)を調べる
  • 血圧の測定
  • 超音波(エコー)やレントゲン:腎臓の形や大きさを見る

慢性腎臓病と診断されたあとは、IRISが公表しているステージ分類で、進み具合を4つの段階に分けて整理するのが一般的です。IRISは、体の状態が安定し、脱水のない状態で、空腹時の血液のクレアチニンやSDMAを2回以上測って判断するとしています。犬の基準は次のとおりです。

ステージ血液のクレアチニン(mg/dL)SDMA(μg/dL)IRISの説明(要約)
11.4未満18未満クレアチニンは正常。尿たんぱくや画像検査の異常など、ほかの腎臓の異常がある
21.4〜2.818〜35軽い高窒素血症。症状は軽いか、ないことが多い
32.9〜5.036〜54中くらいの高窒素血症。腎臓以外の症状が出ることがある
45.0超54超全身の症状や、尿毒症の危険が高まる

出典:International Renal Interest Society「IRIS Staging of CKD(modified 2026)」(2026年10月23日に確認)。猫は基準が異なります。

ステージを決めたあと、IRISはさらに尿たんぱくと血圧で「サブステージ」に分けます。

項目区分
尿たんぱく(UPC)0.2未満:たんぱく尿なし/0.2〜0.5:境界/0.5超:たんぱく尿あり
血圧(収縮期、mmHg)140未満:正常/140〜159:高血圧の前段階/160〜179:高血圧/180以上:重い高血圧

出典:International Renal Interest Society「IRIS Staging of CKD(modified 2026)」(2026年10月23日に確認)。サイトハウンドなど血圧が高めの犬種は、犬種ごとの基準を使うとされています。

IRISは2026年にこの分類を見直し、犬ではステージ2の範囲を広げ、ステージ3の範囲を狭めました。以前の資料と数字が違うことがあるのはそのためです。数字の読み方は検査機関や機械によっても異なるため、愛犬の結果は、かかりつけの獣医師に説明してもらいましょう。

MSD獣医マニュアルは、長く腎臓病のある犬のおよそ20%で血圧が高くなると紹介しています。血圧を測ることがあるのは、このためです。

犬の腎臓病の治療は、どんな流れで進む?

治療の内容は、ステージ、尿たんぱくや血圧、ほかの病気、食欲などで一頭一頭違います。ここでは、一般的な流れだけを紹介します。

  1. 検査で今の状態を知る:血液・尿・血圧などを調べ、ステージとサブステージを整理する
  2. 治療の方針を相談する:IRISが公表している犬の治療の推奨では、ステージやサブステージに応じて、腎臓病用の食事(療法食)、脱水を防ぐための水分の補給(皮下や静脈からの点滴など)、血圧が高いときや尿たんぱくが多いときの薬、吐き気や吐くことへの薬などが挙げられています。どれが必要か、愛犬にどのくらい合うかは一頭一頭違うため、治療の目的や続け方を、かかりつけの獣医師と相談しながら決めていきます。
  3. 定期的に検査を受ける:数値の変化を追い、治療や暮らし方を見直す

MSD獣医マニュアルは、腎臓病の犬の再診の目安を、3〜6か月ごと、進んだ段階では1〜2か月ごととしています。実際の間隔は、かかりつけの獣医師と決めてください。

IRISは、クレアチニンの値を何か月も追っていくことで、病気の進み方や治療の様子がわかると説明しています。毎回の検査結果は、もらった紙を1冊のファイルにまとめておくと、変化が見えやすくなります。

腎臓病の治療にかかる費用は?

費用は、検査の内容、通院の回数、治療の内容、病院によって大きく変わります。全国でそろった公的な統計は見つかっていません。通院のたびの費用と、1か月あたりの見込みを病院で聞いておくと、続けやすくなります。

費用の見込みは、治療を始める前に「検査1回あたり」「1か月あたり」の目安を病院で聞いておくと、家計の計画が立てやすくなります。ペット保険に入っている場合は、補償の対象になるかを保険会社に確かめましょう。保険の選び方はシニア犬のペット保険にまとめています。

腎臓病の犬との家での過ごし方

家でできること

  • いつでも新鮮な水を飲めるようにしておく。器を家の中の何か所かに置く
  • 水を飲む量、おしっこの回数や色、食べた量、体重をメモする
  • おもらしが増えたら、トイレの場所を増やしたり、ペットシーツを広めに敷いたりする
  • フードやおやつを変えるときは、先にかかりつけの獣医師に相談する
  • 人の食べものや、塩分の多いものをあげない
  • 処方された薬や食事は、自己判断でやめたり変えたりせず、気になることは病院に相談する
水を飲む量、おしっこの回数と色、食べた量、体重を毎日メモし、数日分を病院へ持っていくことを示した図
水・おしっこ・食事・体重を毎日メモしておくと、受診のときに変化を伝えやすくなります。イラスト:いぬのながいき手帖

水を多く飲むようになった犬に、水を減らすのはやめましょう。

腎臓病の犬の食事は?

「老犬 腎臓病 食事」「手作り」などで調べる方が多いように、食事は気になるところです。腎臓病の犬の食事は、ステージやほかの病気、食欲によって考え方が変わるため、このページでは特定の食事や食材の効果はお伝えしていません。

食事を変えたいとき、手作りを考えているときは、かかりつけの獣医師に相談してから進めましょう。療法食については、犬の療法食で、これから詳しく紹介する予定です。

ご飯を食べないときは

腎臓病の犬が食べなくなったときは、体調の変化のサインのこともあります。食べない日が続くときの確かめ方は、老犬がご飯を食べないときも参考にしてください。

腎臓病と言われたら、余命はどのくらい?

「余命」や「寿命」と調べて、不安になっている方も多いと思います。腎臓病と診断されてからの時間は、ステージ、尿たんぱくや血圧、ほかの病気、年齢、食欲などによって一頭一頭大きく違います。このページでは、愛犬に当てはまらない数字で不安にさせないよう、期間の数字は載せていません。

これからのことが気になるときは、次のようなことを、かかりつけの獣医師に聞いてみてください。

  • 今はどのステージで、前回の検査と比べてどう変わったか
  • これから、どんな変化が起こることが考えられるか
  • そのとき、どんな選択肢があるか
  • 家族として、今できることは何か

聞きにくいと感じるかもしれませんが、獣医師は飼い主の気持ちも含めて相談にのってくれます。メモを持っていくと、落ち着いて話しやすくなります。介護が長くなってきたら、老犬の介護に疲れたときも読んでみてください。

病院で聞くこと

診察の時間は限られているので、聞きたいことは事前に書き出しておくのがおすすめです。記事の最後に、印刷して使える「病院で聞くことリスト」を用意しています。

特に、次の3つは最初に確かめておくと安心です。

  1. 今の状態:ステージ、尿たんぱく、血圧
  2. 家でしてほしいこと:食事、水、薬、記録してほしいこと
  3. すぐ電話してほしい様子:どんな変化があったら、次の予約を待たずに連絡すればいいか

年をとった犬は、腎臓の数値が基準値を超える前から少しずつ変化していることがあります。IRISは、年をとった犬や猫に年1回の健康診断をすすめています。今の愛犬の状態を整理するために、介護ステージチェックも使ってみてください。

よくある質問

犬の腎臓病は治りますか?

くわしくは、愛犬の検査結果をもとに、かかりつけの獣医師に聞いてください。

腎臓病と言われました。余命はどのくらいですか?

腎臓病と言われてからの時間は、ステージ、ほかの病気、年齢、食欲などで一頭一頭大きく違うため、このページでは数字をお伝えしていません。気になるときは、愛犬の検査結果をもとに、かかりつけの獣医師に「今どの段階で、これからどんな変化が考えられるか」を聞いてみてください。

腎臓病の犬のご飯は、手作りしてもいいですか?

持病のある犬の食事は、自己判断で変えずに、かかりつけの獣医師に相談してからにしましょう。

腎臓病の犬がご飯を食べません。どうすればいいですか?

食べない状態が続く、吐く、ぐったりしているときは、早めにかかりつけの動物病院に電話してください。

腎臓病は健康診断で見つかりますか?

IRISは、年をとった犬や猫には年1回の健康診断をすすめていて、定期的な血液検査で、腎臓の数値が基準値を超える前から悪くなっていく流れに気づけることがあると説明しています。検査の頻度は、かかりつけの獣医師と相談してください。

腎臓病について、病院で聞くことリスト

印刷して、終わったものに印をつけて使えます。

  • 今のステージ(IRISのステージ1〜4)と、たんぱく尿・血圧の状態
  • 治療の目的と、これから家でしてほしいこと
  • 食事を変える必要があるか。変えるならどのように切り替えるか
  • 水の飲ませ方で気をつけること
  • 次の検査はいつか。何を調べるか
  • すぐ電話してほしい様子(吐く・食べない・ぐったり など)
  • 治療にかかる費用の見込み(検査・薬・通院の回数)
  • これから考えられる変化と、そのときの選択肢

いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-jinzobyo/

参考にした情報

制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。

この記事の更新履歴

  •  獣医師の監修を経て公開しました。
  •  出典と数字を確認し、確認できなかった点の書き方を直しました。

内容の誤りや古い情報にお気づきの方は、お問い合わせからお知らせください。

この記事を書いた人

いぬのながいき手帖 編集部

老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。

この記事の監修者

氏名非公開(獣医師)

体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。

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