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01 症状と受診

犬の歯周病・歯石とは?症状と治療の流れ、麻酔をかけられないシニア犬のこと

この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。

この記事のポイント

  • 犬の歯周病とは、歯垢の中の細菌によって歯ぐきに炎症が起こり、進むと歯を支える骨まで壊れていく病気のことです。3歳以上の犬の約8割が歯周病になっていると考えられています。
  • 歯石は歯みがきでは取れません。農林水産省は、スケーラーを使う歯石除去は獣医師が行う診療行為だとしています。歯石が気になったら、動物病院に相談しましょう。
  • 歯周ポケットの中まできれいにする治療は、全身麻酔で行うのが基本とされています。米国の獣医歯科の専門団体などは、無麻酔の歯石取りをすすめていません。
  • 年をとって麻酔が心配なときは、麻酔前の検査で体の状態を調べたうえで、獣医師と一緒に選択肢を考えます。顔が腫れる、膿が出る、食べられないときは早めに受診を。

犬の歯周病は、歯垢の中の細菌によって歯ぐきに炎症が起こり、進むと歯を支える骨まで壊れていく病気です。3歳以上の犬の約8割が歯周病になっていると考えられています。歯にこびりついた歯石は、家の歯みがきでは取れません。口臭が強くなった、歯石が目立つ、歯ぐきが赤い・血が出るときは、動物病院で口の中を見てもらいましょう。治療は、歯ぐきの下までしっかりきれいにするために全身麻酔で行うのが基本です。費用は病院や処置の内容で大きく変わり、保険会社の公表例では、抜歯を含む処置で約10万円という例があります。

年をとった犬では、「麻酔が心配で治療できない」と悩む方も多いと思います。この記事では、歯周病のサイン、すぐ受診したほうがいいサイン、治療の流れ、無麻酔の歯石取りについての専門団体の見解、シニア犬で考えたいこと、家での口のケア、費用の例を紹介します。診断はしません。気になることは、かかりつけの動物病院に相談してください。

犬の歯周病とは?歯石との関係は?

犬の歯周病とは、歯垢(プラーク)にすむ細菌によって、歯ぐきや、歯を支える靭帯・骨に炎症が起こる病気のことです。国内の獣医師が監修した解説では、炎症が歯ぐきだけにとどまるものを「歯肉炎」、さらに進んだものを「歯周病」と説明しています。

歯石とは、歯垢がかたまって石のようになったもので、歯に黄色や茶色っぽくこびりつきます。犬の唾液は、人よりも歯石ができやすいとされています。歯石の表面はざらざらしていて、さらに歯垢がつきやすくなるため、歯石がつくと歯肉炎や歯周病のリスクが高まります。

言葉意味
歯垢(プラーク)歯の表面につく細菌のかたまり。やわらかく、歯みがきで落とせる
歯石歯垢がかたまったもの。歯みがきでは取れない
歯肉炎炎症が歯ぐきだけにとどまっている状態
歯周病炎症が歯を支える靭帯や骨まで広がった状態

出典:価格.com保険「犬の歯周病」「犬の歯石がたまっている」(獣医師 三宅亜希 監修)、農林水産省「小動物獣医療等に関するよくある質問」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)

アニコム損保の「家庭どうぶつ白書2025」でも、歯周病・歯肉炎は、5〜9歳の犬で保険金請求の多い病気の4位、10歳以上で5位に入っていて、年をとった犬で身近な病気だとわかります。

犬の歯周病の症状は?どんなサインで気づく?

進み具合挙げられているサイン
はじめのうち歯ぐきが少し赤い・腫れている、歯みがきで少し血が出る、口臭が気になる
進んでくると口臭が強い、歯石が目立つ、歯ぐきが下がる・腫れる・出血する、硬いものを食べにくそうにする、片側だけでかむ
さらに進むと歯がぐらつく・抜ける、くしゃみ・鼻水、目の下やほおが腫れる・皮膚に穴があいて膿が出る、あごの骨が折れる

出典:オリコン ペット保険「犬の歯周病」(獣医師 安田賢 監修)、価格.com保険「犬の歯周病」(獣医師 三宅亜希 監修)をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)

国内の獣医師が監修した解説では、奥歯の根元に膿がたまるとほおが腫れたり、目の下が腫れたりすることがあり、歯を支える骨が薄くなると、あごの骨が折れるおそれがあるとされています。特に小型犬は注意が必要とされています。また、細菌やその毒素が全身に広がり、腎臓・肝臓・心臓などに影響することもあると書かれています。

老犬の歯周病で、くしゃみや鼻水が出る?

上あごの歯の根元は、鼻のすぐ近くにあります。国内の獣医師が監修した解説では、歯周病が進んで膿が鼻のほうへ広がると、くしゃみや鼻水、慢性の鼻炎が起こることがあるとされています。片側の鼻からだけ鼻水が出る、膿のような鼻水や鼻血が続く、といったときは、口の中もあわせて見てもらいましょう。

老犬の歯石がひどいときは?

歯石がたくさんついていても、それだけで歯周病の進み具合はわかりません。見える歯石が少なくても、歯ぐきの下で歯周病が進んでいることもあります。歯石が気になったら、まず動物病院で口の中を見てもらいましょう。農林水産省も、犬の歯石が気になるときは獣医師に相談するように、としています。

すぐ病院に行ったほうがいいサインは?

こんなときは、早めに動物病院に相談してください

  • ほお・目の下・あごが急に腫れた、皮膚に穴があいて膿や血が出ている
  • 口から出血が続く、よだれに血が混じる
  • 口を痛がる、さわられるのを嫌がる、口を開けにくそうにする
  • 食べたそうにするのに食べられない、ご飯をこぼす、食べる量が急に減った
  • あごがずれている、口が閉じない(あごの骨折のおそれ)
  • 膿のような鼻水や鼻血が続く
  • 歯がぐらぐらしている、抜けた

顔の腫れや、食べられない状態が続くときは、様子を見ずに電話して相談しましょう。食べないときの見方は老犬がご飯を食べないときにまとめています。夜間・休日に急に腫れたときは、夜間・休日に動物病院を探すにはも読んでください。

病院ではどんな治療をする?全身麻酔が必要な理由

治療の一般的な流れ

国内の獣医師が監修した解説では、歯周病の治療は次のような流れで、全身麻酔をかけて行うとされています。

  1. 麻酔前の検査:血液検査やレントゲンなどで、麻酔をかけられる体の状態かを調べる
  2. 全身麻酔で処置:歯石と、歯周ポケットの中の歯垢を取り除く
  3. 必要に応じて抜歯:ぐらつきがひどい歯は抜き、抜いたあとの穴を縫う
  4. 仕上げ:歯の表面をみがいてなめらかにし、口の中を洗う
  5. 家でのケアにつなぐ:処置のあとは、歯みがきなどで歯垢がたまりにくい状態を保つ

歯のレントゲンを撮って、歯ぐきの下の歯根や骨の状態を調べる病院もあります。どこまで処置するかは、口の中の状態と体の状態によって違います。

なぜ全身麻酔で行うの?

AAHA(米国動物病院協会)の歯科ガイドラインは、歯石除去を含む歯科処置には、気管にチューブを入れた全身麻酔と、適切なモニター、体の状態を支える処置が必要としています。米国獣医歯科専門医協会(AVDC)は、麻酔の利点として、①犬が動かずに処置できること、②処置中の痛みをおさえられること、③処置で出る水や汚れが気管・肺に入るのを防げること、の3つを挙げています。

無麻酔の歯石取りはどう考えればいい?専門団体の見解

ペットサロンなどで「無麻酔の歯石取り」を見かけることがあります。国内外の専門団体・行政は、次のような見解を出しています。

団体見解の要点
農林水産省歯石は歯みがきでは取れない。スケーラーを使う歯石除去は、獣医師の判断と技術で行う診療行為。ブラシやガーゼでの歯みがきは、一般的には診療行為ではない
日本獣医師会(農林水産省の照会への回答)歯垢・歯石の除去は、出血や痛みを伴うなど動物に危害を及ぼすおそれがある場合は、診療行為にあたる
米国獣医歯科専門医協会(AVDC)麻酔をかけずに行う歯石除去は不適切。歯周病が進む歯ぐきの下は、起きている犬ではきれいにできない。見える部分の歯石を取っても健康への効果は小さく、「きれいになった」と誤解させる
米国動物病院協会(AAHA)いわゆる「無麻酔」の歯科処置は、麻酔下の処置より安全とも同等とも示されておらず、容認できない
世界小動物獣医師会(WSAVA)世界共通の歯科ガイドラインで、無麻酔の歯科処置は効果がなく、動物に不要なストレスと苦痛を与えるとしている

出典:農林水産省「小動物獣医療等に関するよくある質問」、日本獣医師会雑誌 第72巻5号、AVDC「Companion Animal Dental Scaling Without Anesthesia」、AAHA「2019 AAHA Dental Care Guidelines for Dogs and Cats」、WSAVA「The WSAVA Global Dental Committee」をもとに編集部が要約(2026年10月23日に確認)

国内の獣医師が監修した解説でも、無麻酔では表面だけがきれいに見えて、歯ぐきの奥で歯周病が進む「隠れ歯周病」のおそれがあること、犬のストレスや誤嚥、あごの骨折のおそれがあることが挙げられています。愛知県は、動物取扱業での歯石除去も、獣医療にあたる場合は獣医師法違反となるおそれがあると注意をよびかけています。

老犬で歯周病の治療ができないと言われたら?シニア犬で考えたいこと

「年齢的に麻酔はかけられない」「心臓病があって麻酔が心配」——シニア犬の飼い主から、よく聞かれる悩みです。

年齢だけで決めるわけではない

AAHAの歯科ガイドラインは、医学的に必要な処置を、年齢だけを理由に一律にあきらめるべきではないとしています。そのうえで、年をとった犬やほかの病気がある犬の麻酔には特別な注意が必要で、くわしい問診と麻酔前の検査を行い、異常があれば調べてから、必要なら処置を延期することもある、としています。

つまり、「何歳だからできない」ではなく、その犬の今の体の状態を調べて判断する、という考え方です。心臓病や腎臓病などの持病があるときは、その状態も含めて相談します。持病については犬の心臓病、犬の慢性腎臓病にまとめています。

相談するときに聞きたいこと

  • 麻酔前の検査で何がわかり、どんな結果なら麻酔をかけられるか
  • 麻酔をかける場合、時間を短くする工夫(処置をしぼる など)はできるか
  • 麻酔をかけない場合、どんな対応が考えられるか、どんなことに気をつければいいか
  • 麻酔をかけずに様子を見る場合、どんな変化があったら連絡すればいいか

麻酔をかけた処置が難しい場合などに、獣医師が薬を使って炎症や痛みをやわらげることがあります。ただし、薬だけで歯石や歯周ポケットの汚れが取れるわけではありません。薬の種類や効果については、このページではお伝えしていません。

どちらを選んでも、愛犬のことを考えた決断です。迷うときは、別の病院で意見を聞くこともできます。ひとりで抱えず、家族やかかりつけの獣医師と話しながら決めてくださいね。

犬の歯周病を防ぐために、家でできることは?

家でできること

  • できれば毎日、歯ブラシやガーゼで歯垢を落とす
  • 嫌がる子は、口のまわりをさわる→指で歯にふれる→ガーゼ→歯ブラシ、と段階をふんで慣らす
  • できたらほめる。嫌がったらすぐにやめて、前の段階に戻る
  • 歯ぐきから血が出る、痛がるときは、歯みがきを続ける前に動物病院で見てもらう
  • 健康診断のときに、口の中も見てもらう
  • 口臭・食べ方・よだれの変化をメモしておく
  • 歯石を家で無理に取ろうとしない
口のまわりをさわる、指で歯にふれる、ガーゼでみがく、歯ブラシでみがく、の順に慣らし、嫌がったらひとつ前に戻り、できたらほめる流れの図
歯みがきは段階をふんで慣らします。嫌がったらすぐやめて、前の段階に戻ってかまいません。イラスト:いぬのながいき手帖

国内の獣医師が監修した解説では、歯周病の予防には家での歯のケアがもっとも効果的とされ、慣らすときはご褒美を使い、嫌がったらすぐにやめて焦らず進めること、好みの味の歯みがきペーストを使うのもよいことが紹介されています。歯石は家庭では取り除けないので、動物病院で取ってもらうように、とされています。

シニア犬の歯みがきのコツは、老犬の歯磨きで、これから詳しく紹介する予定です。

犬の歯周病の治療にかかる費用は?

費用は、麻酔前の検査、処置の範囲、抜歯の本数、入院の有無、病院によって大きく変わります。保険会社の公表している例を紹介します。

項目金額
診察800円
半日入院1,500円
検査16,000円
全身麻酔15,000円
歯科処置35,000円
抜歯24,000円
点滴3,000円
お薬2,000円
合計97,300円

出典:価格.com保険「犬の歯周病」(獣医師 三宅亜希 監修)。ミニチュア・ダックスフンド(11歳)の例で、アイペット損害保険の保険金請求データにもとづく参考例。実際の支払い例や平均・水準を示すものではなく、金額は病院によって異なる(2026年10月23日に確認)

年齢年間診療費の平均値年間診療費の中央値
5〜9歳64,357円52,965円
10歳以上66,372円48,358円

出典:アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書2025」。歯周病・歯肉炎(乳歯遺残を含む)で保険金請求があった犬の、通院・入院・手術を含む年間診療費(2023年4月〜2024年3月開始の契約)(2026年10月23日に確認)

処置の前に見積もりを出してもらい、検査・麻酔・処置・抜歯のそれぞれがいくらかを確かめておくと安心です。ペット保険では、歯科の処置が補償の対象外になっていることもあるので、契約内容を保険会社に確かめましょう。選び方はシニア犬のペット保険にまとめています。

犬の歯周病は寿命に関係する?

歯周病が進むと、細菌やその毒素が全身に広がり、腎臓・肝臓・心臓などに影響することもあると、国内の獣医師が監修した解説では説明されています。また、口の痛みで食べられなくなると、体力が落ちることもあります。

ただ、歯周病だけで寿命が決まるわけではありません。口の痛みをやわらげ、食べやすくしてあげることは、年をとった犬の毎日を過ごしやすくすることにつながります。今の口の状態と、これからできることを、かかりつけの獣医師と話してみてください。記事の最後に、印刷して使える「病院で聞くことリスト」を用意しました。今の愛犬の暮らしを整理するために、介護ステージチェックも使ってみてください。

よくある質問

シニア犬でも、全身麻酔で歯周病の治療はできますか?

米国動物病院協会(AAHA)の歯科ガイドラインは、医学的に必要な処置を、年齢だけを理由に一律にあきらめるべきではないとしたうえで、年をとった犬やほかの病気がある犬の麻酔には特別な注意が必要としています。麻酔前の検査で体の状態を調べ、治療をするかどうか、どこまでするかをかかりつけの獣医師と相談してください。

無麻酔の歯石取りは、受けても大丈夫ですか?

米国獣医歯科専門医協会(AVDC)や世界小動物獣医師会(WSAVA)、AAHAは、麻酔をかけずに歯石を取ることをすすめていません。見える部分の歯石を取っても、歯周病が進む歯ぐきの下(歯周ポケット)はきれいにできないこと、動いたときにけがをするおそれがあることなどが理由です。国内でも、スケーラーを使う歯石除去は獣医師が行う診療行為とされています。迷ったときは、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

老犬の歯周病で、くしゃみや鼻水が出ることはありますか?

国内の獣医師が監修した解説では、歯周病が進んで膿が鼻のほうへ広がると、くしゃみや鼻水、慢性の鼻炎が起こることがあるとされています。片側だけの鼻水、鼻血、膿のような鼻水が続くときは、早めに動物病院に相談してください。

歯周病の犬に、薬だけで治療することはできますか?

麻酔をかけた処置が難しい場合などに、獣医師が薬を使うことがあります。ただし、薬だけで歯石や歯周ポケットの汚れが取れるわけではありません。薬を使うかどうか、どんな薬を使うかは獣医師が判断することなので、このページではお伝えしていません。

歯みがきを嫌がるシニア犬には、どうすればいいですか?

いきなり歯ブラシを使わず、口のまわりをさわる、指やガーゼで歯にふれる、と段階をふんで慣らし、できたらほめてあげます。嫌がったらすぐにやめ、前の段階に戻ってかまいません。歯ぐきから血が出る、痛がるときは、歯みがきを続ける前に動物病院で口の中を見てもらいましょう。

歯周病について、病院で聞くことリスト

印刷して、終わったものに印をつけて使えます。

  • 今の歯周病の進み具合と、治療が必要な歯の数
  • 麻酔前にどんな検査をするか。心臓・腎臓などで気をつけること
  • 麻酔をかけた処置でしてもらえること(歯石除去・歯周ポケットの清掃・抜歯・歯のレントゲン)
  • 麻酔をかけない場合の選択肢と、そのとき気をつけること
  • 処置の日の流れ(絶食・お迎えの時間・入院の有無)
  • 処置のあとのご飯と、家での口のケア
  • すぐ電話してほしい様子(顔の腫れ・出血・食べない など)
  • 費用の見積もり(検査・麻酔・処置・抜歯)

いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-shishubyo/

参考にした情報

制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。

この記事の更新履歴

  •  獣医師の監修を経て公開しました。
  •  出典と数字を確認し、確認できなかった点の書き方を直しました。

内容の誤りや古い情報にお気づきの方は、お問い合わせからお知らせください。

この記事を書いた人

いぬのながいき手帖 編集部

老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。

この記事の監修者

氏名非公開(獣医師)

体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。

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