犬の膵炎とは?症状・祈りのポーズと治療の流れ、家での過ごし方
この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 犬の膵炎とは、食べ物の消化を助ける膵臓に炎症が起こる病気のことです。急に起こる急性膵炎と、少しずつ進む慢性膵炎があります。
- 急に吐く、食欲がない、下痢、震える、お腹を痛がる(前足を伸ばしてお尻を上げる「祈りのポーズ」)などが、気づくサインとして挙げられています。
- 何度も吐く、ぐったりしている、水も飲めない、お腹を痛がるときは、様子を見ずにすぐ動物病院に電話してください。
- 脂肪の多い食べ物や肥満がリスクとされています。退院後のご飯は、自己判断せずかかりつけの獣医師と決めてください。
犬の膵炎は、食べ物の消化を助ける膵臓に炎症が起こる病気です。急に吐く、食欲がない、下痢、震える、お腹を痛がるといった様子が見られ、お腹が痛いときには前足を伸ばしてお尻だけを上げる**「祈りのポーズ」**をとることがあります。何度も吐く、ぐったりしている、水も飲めないときは、様子を見ずにすぐ動物病院に電話してください。早めに治療を始めることが大切だとされています。
このページでは、どんな病気か、気づくサイン、すぐ電話したほうがいい様子、病院で行われること、シニア犬で気をつけたいこと、家での過ごし方、費用の例を順に紹介します。診断はしません。迷ったら、かかりつけの動物病院に電話してください。
犬の膵炎とは?どんな病気?
犬の膵炎とは、胃の近くにある膵臓に炎症が起こる病気のことです。膵臓は、食べ物を消化する酵素と、血糖を調節するホルモン(インスリンなど)をつくっています。
獣医師が監修した解説では、膵炎は大きく2つに分けられています。
| 種類 | どんなものか |
|---|---|
| 急性膵炎 | 膵臓の中で消化酵素が急に働き出し、膵臓そのものを傷つける。突然の強い症状が出ることがある |
| 慢性膵炎 | 炎症が長く続き、膵臓が少しずつ硬くなって働きが落ちていく。症状はゆるやかで、ほかのお腹の不調と見分けにくい |
出典:価格.com保険「犬の膵炎」(獣医師 三宅亜希 監修)、オリコン ペット保険「犬の膵炎」(獣医師 安田賢 監修)をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
軽い急性膵炎は命に関わらないこともある一方、重くなると、ほかの臓器にも影響が出て命に関わることがあるとされています。
原因とかかりやすい犬
原因ははっきりしないことが多いとされます。獣医師が監修した解説やPDSAでは、次のようなことがリスクとして挙げられています。
- 脂肪の多い食べ物(脂身の多い肉、チーズ、バターなど)を食べた
- 太っている
- クッシング症候群などのホルモンの病気
- 最近の手術や、ほかの病気で体調をくずしている
ミニチュア・シュナウザーで多いとされ、ヨークシャー・テリアなどでも起こりやすいといわれています。国内の獣医師が監修した解説では、中年期から高齢期の犬に多いとされています。
犬の膵炎の症状は?祈りのポーズとは
獣医師が監修した解説とPDSAでは、次のような様子が挙げられています。すべてが出るとは限りません。
| 気づくサイン | どんな様子か |
|---|---|
| 吐く | 急に何度も吐く |
| 食欲がない | 急にご飯を食べなくなる |
| 下痢 | やわらかい便、水のような便 |
| 震える | 寒くないのに体が震える |
| お腹を痛がる | お腹をさわると嫌がる、背中を丸める、お腹が張る |
| 祈りのポーズ | 前足を伸ばして胸を床につけ、お尻だけを上げる |
| 動きたがらない | 散歩を嫌がる、すぐ座りこむ、元気がない |
出典:価格.com保険「犬の膵炎」(獣医師監修)、オリコン ペット保険「犬の膵炎」(獣医師監修)、PDSA「Pancreatitis in dogs」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
祈りのポーズとのびの違い
「祈りのポーズ」は、お腹の痛みをやわらげようとする姿勢と説明されています。ただ、犬は寝起きにのびをするときにも似た姿勢をとります。気になるときは、その姿勢をくり返すか、長く続けるか、吐く・食べない・震えるなどの様子が一緒にあるかを見てください。動画を撮っておくと、病院で伝えやすくなります。
慢性膵炎では、食欲のむら、ときどき吐く、下痢など、はっきりしない症状が続くこともあるとされています。吐いたものの色や回数の見方は犬が吐くとき、便の見方は犬が下痢をしたときにまとめています。
すぐ病院に電話したほうがいいサインは?
急性膵炎は、早く治療を始めることが大切だとされています。PDSAも、症状がある・膵炎が疑われるときは、できるだけ早く獣医師に連絡するように、とくに以前膵炎になったことがある犬は、としています。
こんなときは、すぐ動物病院に電話してください
- 何度も吐く、吐こうとしても出ない
- ぐったりしている、立てない、呼んでも反応がにぶい
- 水も飲めない、飲んでもすぐ吐く
- お腹を痛がる、祈りのポーズをくり返す、震えが止まらない
- 吐く・下痢に加えて、急にご飯を食べなくなった
- 脂っこい食べ物や人の食べ物をたくさん食べたあとに、吐き始めた
- 以前に膵炎と言われたことがあり、同じような様子がある
- 歯ぐきの色が白っぽい、呼吸が速い
夜間や休日なら、夜間救急の動物病院に電話して、向かったほうがいいか聞いてください。探し方は夜間・休日に動物病院を探すには、症状ごとの目安はすぐ病院か確かめるにまとめています。
病院ではどんな検査・治療をする?
検査
獣医師が監修した解説では、次のような検査を組み合わせて調べるとされています。
- 問診:いつから吐いているか、何を食べたか、ほかの症状
- 血液検査:炎症の数値や、膵臓に特有の酵素(膵特異的リパーゼ)を調べる
- 超音波(エコー)検査:膵臓の腫れや、お腹の中の様子を見る
- レントゲン検査:ほかの病気(誤飲など)がないかを見る
画像の検査だけでは膵炎とわかりにくいことも多く、いくつかの結果を合わせて判断するとされています。
治療の流れ
| 治療 | どんなものか |
|---|---|
| 点滴 | 脱水や体のバランスを整える。入院して行うことが多い |
| 痛み止め | お腹の痛みをやわらげる |
| 吐き気止め | 吐き気をおさえる |
| 食事 | 状態を見ながら、少しずつ再開する |
| 重いときの治療 | 合併症があるときは、より集中的な治療を検討する |
出典:価格.com保険「犬の膵炎」(獣医師監修)、オリコン ペット保険「犬の膵炎」(獣医師監修)、PDSA「Pancreatitis in dogs」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
PDSAは、軽い場合は吐き気止め・痛み止め・安静で、重い場合は数日間の入院と点滴などで治療するとしています。国内の獣医師が監修した解説の中には、1週間以上の入院が必要とするものもあります。どのくらいの期間になるかは、膵炎の重さによって違います。食事をいつ・どう再開するかの考え方は解説によって違いがあり、愛犬の状態に合わせて獣医師が判断します。
慢性膵炎では、痛みがあればその治療をし、消化酵素が足りなくなっている場合は薬で補うことがあるとされています。
シニア犬の膵炎で気をつけたいこと
体力の余裕が少ない
年をとった犬は、吐いたり食べなかったりすると、若いころより体力を落としやすいことがあります。「前も1回吐いただけで治ったから」と思わず、吐く・食べない状態が続くときは、早めに電話で相談してください。
ほかの病気と一緒に考える
国内の獣医師が監修した解説では、クッシング症候群などのホルモンの病気が膵炎と関係するとされています。MSD獣医マニュアルでは、重い膵炎やくり返す膵炎で膵臓が傷つき、糖尿病につながることがあると説明されています。膵炎のあとに水をよく飲む、おしっこが増えるといった変化があれば、伝えてください。関連する病気は犬の糖尿病、犬のクッシング症候群にまとめています。
再発に気をつける
一度膵炎になると、くり返しやすいとされています。どんな様子が見えたら連絡すればいいか、退院のときに聞いておきましょう。
老犬が膵炎になったら、余命はどのくらい?
「老犬 膵炎 余命」で調べている方は、とても不安な気持ちだと思います。けれど、膵炎の重さ、ほかの病気、年齢、治療への反応などで、一頭一頭大きく違います。PDSAは多くの犬が治療で回復するとしていますが、重い場合は命に関わることもあります。このページでは、余命の数字はお伝えしていません。
不安なときは、かかりつけの獣医師に次のことを聞いてみてください。
- 今どのくらいの重さか
- これから考えられる変化と、そのときの選択肢
- 家に帰ってから気をつけるサイン
膵炎のあと、家での過ごし方
家でできること
- ご飯の種類・量・回数は、病院で決めたとおりにする(自己判断で変えない)
- 人の食べ物、脂身の多い肉、チーズなど脂肪の多いおやつは与えない
- 家族や来客にも「人の食べ物はあげない」ことを伝えておく
- ごみ箱にはふたをし、食卓やキッチンの食べ物を出しっぱなしにしない
- 薬は決められたとおりに飲ませる
- 吐いた回数、食べた量、便の様子、元気を毎日メモする
- 体重を週1回量る(太りすぎも、やせすぎも相談を)
- 寝床をあたたかく静かにして、ゆっくり休ませる
膵炎のあとのご飯について、PDSAは低脂肪の食事(できれば獣医師が処方する療法食)をすすめています。ただ、どんなご飯が合うかは、愛犬の体の状態やほかの持病によって違います。手作りやおやつを含めて、何をどのくらいあげてよいかは、かかりつけの獣医師と決めてください。
犬に与えてはいけない食べ物は犬が食べてはいけないものにまとめています。
膵炎の治療にかかる費用は?
費用は、膵炎の重さ、入院の日数、検査の内容、病院によって大きく変わります。全国でそろった公的な統計は見つかっていません。参考として、保険会社が公表している請求の一例を紹介します。
| 項目 | 金額の例 |
|---|---|
| 診察料 | 1,000円 |
| 血液検査 | 6,000円 |
| 超音波検査 | 3,000円 |
| 内服薬 | 2,000円 |
| 合計 | 12,000円 |
出典:価格.com保険「犬の膵炎」(アニコム損害保険への請求の一例。ミニチュア・シュナウザー。平均や水準を示すものではありません)(2026年10月23日に確認)
国内の獣医師が監修した別の解説では、軽度で1万〜3万円程度、中等度で5万〜10万円程度、重度では10万円以上になることもある、という目安が紹介されています。入院が長くなると費用は大きくなります。
入院のときは「1日あたりいくらか」「何日くらいの見込みか」を病院で聞いておくと、家計の計画が立てやすくなります。ペット保険に入っている場合は、補償の対象になるかを保険会社に確かめましょう。保険の選び方はシニア犬のペット保険にまとめています。
病院で聞くこと
膵炎と言われたとき、退院のときに次のことを聞いておくと安心です。
- 急性か、慢性か。どのくらいの重さか
- 入院の見込みの日数と、費用の見込み
- 家に帰ってからのご飯の種類・量・回数、おやつはどうするか
- 薬の飲ませ方と期間
- すぐ電話してほしい様子(再発のサイン)
- 次の通院・検査はいつか
愛犬が苦しそうにしている姿を見るのは、飼い主にとってもつらいものです。早めに病院に電話したことは、愛犬のためにできたことのひとつです。自分を責めずに、少しずつ回復を見守ってくださいね。
よくある質問
犬の膵炎は治りますか?
英国の動物病院チャリティ(PDSA)は、多くの犬は治療で回復するとしています。一方で、重い場合は命に関わることがあり、くり返す犬もいるとされています。愛犬の場合は、かかりつけの獣医師に聞いてください。
老犬が膵炎になりました。余命はどのくらいですか?
膵炎の重さ、ほかの病気、年齢、治療への反応などで一頭一頭大きく違うため、このページでは数字をお伝えしていません。「今どのくらいの重さで、これからどんな変化が考えられるか」を、かかりつけの獣医師に聞いてみてください。
祈りのポーズをしています。すぐ病院に行ったほうがいいですか?
前足を伸ばして胸を床につけ、お尻だけを上げる姿勢は、お腹の痛みがあるときに見られることがあるとされています。吐く、食べない、震える、ぐったりしているなどの様子が一緒にあれば、すぐ動物病院に電話してください。のびをしているだけのこともあるので、動画を撮っておくと伝えやすくなります。
膵炎のあと、どんなご飯をあげればいいですか?
退院後や回復後のご飯の種類・量・回数は、愛犬の状態によって違います。自己判断で変えず、かかりつけの獣医師と決めてください。人の食べ物や脂肪の多いおやつは与えないようにしましょう。
治療費はどのくらいかかりますか?
保険会社が公表している請求の一例では、診察・血液検査・超音波検査・内服薬で合計12,000円という例があります。入院や点滴が必要になると、費用は大きく変わります。治療前に見込みを病院で聞いておくと安心です。
膵炎かも?病院に電話する前のメモ
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- いつから吐いているか、何回吐いたか
- 吐いたものの色・中身(写真)
- 下痢をしているか、便の色
- 最後に食べたもの・飲んだ水(量と時刻)
- 脂っこいもの・人の食べ物・ごみを食べた心当たり
- お腹を痛がる様子(祈りのポーズ、さわると嫌がる、震える)の動画
- 元気・ぐったりしているか、立てるか
- 以前に膵炎と言われたことがあるか
- 持病と飲んでいる薬
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-suien/
参考にした情報
- 価格.com保険「犬の膵炎」(獣医師 三宅亜希 監修)
- オリコン ペット保険「犬の膵炎」(まさの森・動物病院 院長 安田賢 監修)
- PDSA「Pancreatitis in dogs」
- MSD Veterinary Manual(Professional Version)「Diabetes Mellitus in Dogs and Cats」
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
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この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。