老犬が吠えるようになったとき。理由の探し方と、近所への配慮
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体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 年をとった犬が吠えるようになる理由は、痛み、耳や目の衰え、認知機能の変化、トイレ・空腹・のどの渇き、不安など、一つではありません。
- 叱ると不安が強まり、かえって吠えることがあるとされています。まず、いつ・何に・どのくらい吠えるかを記録して、動物病院に相談します。
- 耳や目が衰えた犬は、急に触られると驚いて吠えることがあります。見える位置から近づく、床を軽く鳴らして知らせるなどの工夫が助けになります。
- 近所が気になるときは、窓を閉める、寝床を外壁から離すなどの工夫を。ひと言あいさつしておくと、気持ちが楽になることもあります。
年をとった犬が前より吠えるようになったら、叱る前に「なぜ吠えているのか」を探してみてください。痛み、耳や目の衰え、認知機能の変化、トイレや空腹、のどの渇き、不安など、理由は一つではありません。いつ・何に・どのくらい吠えるかを数日記録して、かかりつけの動物病院に相談します。叱ると不安が強まり、かえって吠えることがあるとされています。
夜中だけでなく、昼間や家族に向かって吠えるようになることもあります。この記事では、吠える理由の探し方、すぐ病院に電話したほうがいいサイン、耳や目が衰えた犬への接し方、近所への配慮を順に紹介します。夜の鳴き方を中心に知りたい方は、老犬の夜泣きもあわせて読んでください。
老犬が吠えるようになったのはなぜ?
年をとった犬が吠えるようになった、とは、若いころはあまり吠えなかった犬が吠えるようになったり、吠える回数や長さ、吠える場面が変わったりすることです。
米国の動物愛護団体ASPCAは、年をとった犬が鳴いたり吠えたりすることが増える理由として、耳が聞こえにくくなること、認知機能の変化、神経の病気や体の病気を挙げています。トイレに行きたいとき、おなかがすいたとき、痛いときにも吠えることがあり、怖さや不安から物音や来客に吠えることもあるとしています。英国のペット保険会社Petplanの行動の専門家による解説でも、関節などの痛み、不安、耳や目の衰え、認知機能の変化などが挙げられています。
| 考えられる理由 | よく見られる場面の例 |
|---|---|
| 体の痛み・不快 | 立ち上がるとき、触られたとき、同じ姿勢が続いたあと |
| トイレ・空腹・のどの渇き | 決まった時間、ご飯や水の前、トイレの前 |
| 耳が聞こえにくい | 急に人が現れたとき、触られたとき、呼んでも気づかない |
| 目が見えにくい | 暗くなってから、知らない場所、物にぶつかったあと |
| 認知機能の変化 | 何もない方向に吠える、家の中で迷う、昼夜が逆になる |
| 不安・さみしさ | ひとりで留守番のとき、家族が見えなくなったとき |
| 暑さ・寒さ | 季節の変わり目、冷暖房を切ったあと |
出典:ASPCA「Behavior Problems in Older Dogs」、Petplan「Why do older dogs bark more?」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
どれが理由かは、吠え方だけではわかりません。いくつかの理由が重なっていることもあります。ASPCAは、行動の変化はすべて動物病院に伝えるように、多くは対処できる体の状態のサインであることがあるから、としています。
すぐ病院に電話したほうがいいのは、どんなとき?
吠えるのは、体のつらさを伝えているサインのこともあります。次のようなときは、様子を見ずに動物病院に電話してください。
こんなときは、すぐ動物病院に電話してください
- キャンと高い声で鳴く、触ると痛がって吠える・かもうとする
- 急に吠え始め、立てない・歩き方がおかしいなど、ほかの様子もいつもと違う
- 吠えながら、何度も吐こうとする、おなかがふくれている
- 呼吸が荒い、苦しそう
- 頭をかたむけたまま、ぐるぐる回る、目が揺れている
- おしっこが出ない、何度もトイレに行くのに少ししか出ない
- 痙攣(けいれん)のあとから、落ち着かずに吠え続ける
急ぐサインがなくても、「最近、前より吠える」「吠えるようになった」と感じたら、次の受診のときに相談してください。Petplanの解説でも、前よりにぎやかになったと感じたら健康チェックを、夜に吠えるようになったら痛みがないか確かめてもらうように、とすすめています。痙攣が見られたときは犬が痙攣したときを読んでください。
老犬が夜中に吠えるときは?昼間に吠えるときは?
吠える時間帯によって、考えられることや工夫が少しちがいます。
夜中に吠えるとき
夜中に吠える・鳴くのは、トイレ、のどの渇き、暑さ寒さ、体の向きを変えたい、不安、昼夜のリズムの乱れなどが考えられます。ASPCAは、耳や目の衰えが眠りを乱すことがあり、夜に何をきっかけに起きているかを記録すると、パターンが見えてくることがある、としています。Petplanの解説では、夜に鳴くことが増えるのは認知機能の変化のサインのこともある、と書かれています。
夜の鳴き方への対処や、飼い主が眠れないときの工夫は、老犬の夜泣きにくわしくまとめています。認知機能の変化が気になる方は、犬の認知症や介護ステージチェックも参考にしてください。
昼間に吠えるとき
昼間に吠えるときは、来客や物音、外を通る人や犬、家族が見えなくなったとき、ご飯の前などが多いかもしれません。年をとって耳が聞こえにくくなると、近づいてくる足音に気づかず、急に人が現れたように感じて驚くこともあります。
- 何に向かって吠えているか(窓の外、玄関、家族、何もない方向)
- 家族がそばにいるときと、いないときでちがうか
- 吠えたあと、何をしたら落ち着いたか
を見てみると、理由を探す手がかりになります。
家族に向かって吠えるとき
家族の顔を見て吠える、要求するように吠えるときは、トイレや水、体の向きを変えてほしいなど、何かを伝えようとしていることがあります。寝たきりに近い犬では、同じ姿勢がつらくて吠えることもあります。吠えたときにまず「トイレ・水・ご飯・姿勢・暑さ寒さ」を順に確かめる習慣をつけると、理由が見えてくることがあります。
耳や目が衰えた犬が吠えるとき、どう接すればいい?
年をとると、耳や目の働きが少しずつ衰えることがあります。米国オハイオ州立大学獣医学部の解説では、耳が聞こえにくくなった犬は、急に人が現れたり触られたりすると驚きやすく、驚いたことで怖がってかむことがあるとしています。また、玄関で出迎えなくなるのは、帰ってきた音が聞こえないためで、問題行動と考えないように、とも書かれています。目が見えにくくなった犬は、記憶と慣れをたよりに家具や戸口、階段を通るので、家具の配置を変えると不安や混乱が強まることがある、としています。
耳や目が衰えた犬への接し方
- 近づくときは、犬から見える位置から。うしろから急に触らない
- 寝ているときは、床を軽くトントンと鳴らすなど、振動で知らせてから触る
- 耳が聞こえにくい犬には、「おいで」「おすわり」などを手の合図でも伝える
- 家具の配置はなるべく変えない。段差や家具の角にはクッションやガードを
- 夜は足元を照らす小さな明かりをつけておく
- 知らない人が来るときは、離れた静かな部屋で休ませる
- 寝起きは、落ち着くまで少し待ってから声をかける
ASPCAは、聞こえにくくなった犬には、ことばの合図を手の合図に切り替えるとよく、ドッグトレーナーに手伝ってもらう方法もある、としています。音に敏感になって吠える犬には、きっかけになる音から離す、小さく音楽を流して物音をまぎらわすといった工夫も紹介されています。
目やにが増えた、目が白く濁ってきたなど、目の様子が気になるときは、犬の目やにも読んでみてください。聞こえにくさ・見えにくさそのものについては、動物病院で相談しましょう。
老犬が吠えるのをやめさせるには?叱ってもいい?
「やめさせたい」と思うのは、飼い主として自然な気持ちです。ただ、年をとった犬の吠えは、何かを伝えようとしていたり、不安から来ていたりすることが多いものです。
ASPCAは、吠えたことを罰すると不安が強まり、かえって吠えることが増えるおそれがあるとしています。まず体の病気や認知機能の変化への対処を先にし、そのうえで、吠えを強めている飼い主の反応がないかを見直し、静かにしているときにほめる方法が効果的な犬もいる、としています。Petplanの解説でも、怒鳴ったり罰を与えたりせず、吠えたときに大きく反応しすぎないように、とすすめています。
家で試せること
- 吠えたら、まず「トイレ・水・ご飯・姿勢・暑さ寒さ」を確かめる
- 大声で叱らない。叩く・罰を与えることはしない
- 静かにしているときに、やさしく声をかけたり、なでたりする
- 昼間は、短い散歩や日光浴など、無理のない範囲で体と頭を使う時間を作る
- ご飯・散歩・寝る時間を、毎日なるべく同じにする
- 寝床は、家族の気配が感じられて、静かで薄暗い場所に
- 関節がつらそうなら、やわらかく体圧を分散する寝床に替える
- 家の工夫で落ち着かないときは、動物病院や行動の専門家に相談する
ASPCAは、不安から吠えている犬では、お薬が助けになる場合もあるとしています。お薬が合うかどうかは、体の状態を見て獣医師が判断するものです。自己判断で人の薬やサプリメントを与えず、動物病院で相談してください。
無駄吠え防止グッズは使っていい?
市販の無駄吠え防止の首輪などもありますが、年をとった犬の吠えには、痛みや不安など理由があることが多いので、まず理由を探すことを優先してください。道具を使うかどうかは、自己判断せずに動物病院や行動の専門家に相談を。電気ショックを与えるものはおすすめしません。
留守番中に吠えるとき
ひとりのときだけ吠える場合は、不安やさみしさが理由のこともあります。ペットカメラで留守中の様子を見ると、いつ・何に吠えているかがわかり、病院への相談にも役立ちます。選び方はペットカメラの選び方にまとめています。
近所に迷惑をかけないために、できることは?
吠える声が続くと、「近所に迷惑をかけていないか」と気がかりになりますよね。
環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」では、犬の飼い主は、頻繁な鳴き声などの騒音で、周りの人の日常生活に著しい支障を及ぼすことのないよう努めること、とされています。年をとった犬の吠えは、すぐにゼロにはできないこともあります。できる範囲で工夫を重ねていけば十分です。
| 工夫 | 例 |
|---|---|
| 音を外にもらしにくくする | 窓・カーテンを閉める、吠えやすい時間は換気を控えめに |
| 寝床の場所 | 外壁や隣の家に面した壁から離れた部屋に移す |
| 床・壁 | 厚手のマットやラグを敷く、家具を壁ぎわに置く |
| きっかけを減らす | 外が見える窓に目かくしをする、インターホンの音量を下げる |
| 時間帯 | 早朝・夜は、特に窓を閉めておく |
| 人とのつながり | 近所の人に、年をとった犬で対処中であることをひと言伝える |
出典:環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号)(2026年10月23日に確認)。工夫の例は編集部作成
ひと言あいさつしておくと、「事情がわかったから大丈夫」と言ってもらえることもあり、飼い主の気持ちが楽になることがあります。集合住宅の場合は、管理規約も確かめておきましょう。
どうしても続くときは、預け先も考えて
家での工夫を続けても吠えが落ち着かず、飼い主が眠れない、近所との関係がつらいというときは、ひとりで抱えないでください。家族で夜の当番を分ける、ペットシッターや老犬ホームに短期で預けるなど、休む方法もあります。老犬の介護に疲れたときや老犬ホームの費用と選び方も参考にしてください。
吠える声は、愛犬が何かを伝えようとしているサインでもあります。理由がひとつわかるだけで、ぐっと楽になることもあります。焦らず、少しずつ試してみてくださいね。
よくある質問
老犬が吠えるのをやめさせるには、どうすればいいですか?
まず、なぜ吠えているのかを探すことから始めます。痛みやトイレなど体の理由があれば、それに対処すると落ち着くことがあります。叱ったり罰を与えたりすると不安が強まることがあるので避け、静かにしているときにほめる方法が紹介されています。体の理由がないか、動物病院で相談してください。
夜中に吠えるのは認知症ですか?
夜中に吠える・鳴く様子は、認知機能の変化のサインのひとつとして挙げられていますが、痛み、トイレ、のどの渇き、暑さ寒さなどでも起こります。吠え方だけでは判断できないので、記録をつけて相談してください。夜の鳴き方については、夜泣きの記事にもくわしくまとめています。
耳が聞こえにくくなってから、よく吠えるようになりました。
聞こえにくくなると、急に人が現れたり触られたりしたときに驚きやすくなると、大学の解説で説明されています。また、自分の声の大きさがわかりにくくなることもあるといわれます。見える位置から近づく、手で合図をするといった工夫を試してみてください。聞こえにくさそのものについては、動物病院で相談しましょう。
無駄吠え防止の首輪を使ってもいいですか?
年をとった犬の吠えには、痛みや不安など理由があることが多いため、まず理由を探すことが先です。道具を使うかどうかは、自己判断せず、動物病院や行動の専門家に相談してください。電気ショックを与えるものはおすすめしません。
近所から苦情が来ないか心配です。
環境省の基準では、犬の飼い主は、頻繁な鳴き声などで近くの人の暮らしに著しい支障が出ないよう努めることとされています。窓やカーテンを閉める、寝床を外壁から離れた部屋に移すなどの工夫に加え、年をとった犬で対処中であることを、ひと言伝えておくのもひとつの方法です。
シニア犬が吠えるとき:記録のメモ
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- 吠えはじめた時期(いつごろから増えたか)
- 吠える時間帯(朝・昼・夕方・夜中)と、続いた長さ
- 何に吠えているか(物音、来客、家族、何もない方向、ひとりのとき)
- 吠える前にしていたこと(寝ていた、歩き回っていた、立ち上がろうとしていた)
- 何をしたら落ち着いたか(トイレ、水、ご飯、体の向きを変えた、そばに行った)
- 体に触ると嫌がる場所があるか
- 呼んでも気づかない、物にぶつかるなど、耳や目の様子
- 夜中に歩き回る、家の中で迷うなど、ほかの変化
- トイレ・食事・水を飲む量の変化
- 飲んでいる薬と、持病
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/roken-hoeru/
参考にした情報
- 環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号)
- ASPCA「Behavior Problems in Older Dogs」
- The Ohio State University College of Veterinary Medicine, Indoor Pet Initiative「Sensory Decline in Aging Dogs」
- Petplan(英国)「Why do older dogs bark more?」
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
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この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。