犬の白内障とは?気づくサインと治療の流れ、家での過ごし方
この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 犬の白内障とは、目の中でレンズの役割をする水晶体が白くにごり、見えにくくなる病気のことです。一度にごった水晶体は、薬で元の透明に戻すことはできないとされています。
- 年をとると目が青白く見える「核硬化症」という変化もあり、見た目だけでは白内障と区別しにくいため、目の色の変化に気づいたら動物病院で診てもらいましょう。
- 目を痛がる、赤い、急に見えなくなった様子があるときは、様子を見ずにすぐ動物病院に電話してください。
- 見えにくくなっても、家具の配置を変えない、声をかけてからさわるなどの工夫で、愛犬は落ち着いて暮らしていけます。
犬の白内障は、目の中でレンズの役割をする水晶体が白くにごり、見えにくくなる病気です。目が白っぽく見える、物にぶつかる、段差や暗い場所をこわがるといった変化に気づいたら、早めにかかりつけの動物病院で診てもらいましょう。目を痛がる、赤い、急に見えなくなったときは、様子を見ずにすぐ電話してください。治療は、進み具合に応じて目薬での経過観察や手術が検討され、手術は病院により数十万円かかることがあります。
見えにくくなっても、犬はにおいや音を手がかりに暮らしていけます。この記事では、気づくサイン、病院で行われること、費用の例、シニア犬との家での過ごし方を順に紹介します。診断はしません。気になることは、かかりつけの獣医師に相談してください。
犬の白内障とは?どんな病気?
犬の白内障とは、目の中にある水晶体(カメラのレンズのような部分)がにごり、光が目の奥に届きにくくなって見えにくくなる病気のことです。獣医師が監修した解説では、一度にごった水晶体は元に戻らず、進むと失明することもあるが、必ずそうなるわけではない、とされています。
獣医師向けの資料(MSD獣医マニュアル)では、白内障は起こる年齢によって、生まれつきのもの、若いうちに起こるもの、年をとってから起こるものに分けられ、犬では遺伝によるものが多いと説明されています。ほかに、糖尿病、目の炎症、けがなどがきっかけになることもあるとされています。
| 主なきっかけ | 解説で紹介されていること |
|---|---|
| 年齢 | 加齢による白内障は、6歳ごろ以降に起こることが多い |
| 遺伝 | 犬では遺伝によるものが多く、若いうちに起こり進みが早いこともある |
| 糖尿病 | 血糖が高い状態が続くと、短い期間で白内障が進むことがある |
| 目の病気・けが | 目の炎症、水晶体の位置のずれ、外傷など |
出典:MSD Veterinary Manual「Diseases of the Lens in Animals」、オリコン ペット保険「犬の白内障」(獣医師監修)をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
「核硬化症」との違いは?
年をとった犬の目が青白く、うっすらにごって見えることがあります。これは「核硬化症」と呼ばれる加齢による変化のことがあります。MSD獣医マニュアルでは、核硬化症は年をとった動物で水晶体の中心部の密度が高まる、ふつうの変化として説明されていて、白内障とは区別されています。
ただ、どちらも「目が白っぽい」と見えるため、飼い主が見た目だけで区別するのはむずかしいものです。両方が一緒に起こっていることもあります。「年のせいかな」と決めつけず、一度動物病院で目を診てもらいましょう。
犬の白内障の症状は?気づくサイン
白内障は少しずつ進むことが多く、はじめは気づきにくいものです。次のような変化がないか、ふだんの様子を見てみてください。
- 黒目の奥が白っぽい、青白い、にごって見える
- 物や家具にぶつかる、つまずく
- 段差や階段をこわがる、上り下りをためらう
- 暗い場所や夜に動きたがらない(はじめは夜だけ見えにくいことがある)
- 投げたおもちゃを目で追わなくなった
- 急にさわられると驚く、こわがる、怒りっぽくなった
- 散歩で歩くのがゆっくりになった、においをかぐ時間が増えた
獣医師が監修した解説では、白内障はにごりの程度で4段階に分けられ、初期は見え方への影響が小さく、進むと見えにくさがはっきりしてくる、とされています。見えにくさからくる不安で、攻撃的になる犬もいると紹介されています。
「ぶつかる」「夜に動かない」は、犬の認知症のサインと似て見えることもあります。どちらか迷うときも、気づいた様子をメモして病院に伝えてください。
すぐ病院に電話したほうがいいサインは?
白内障が進むと、目の中で炎症が起きたり、目の圧が上がったりすることがあるとされています。次のようなときは、様子を見ずにすぐ動物病院に電話してください。夜間や休日なら、夜間救急の動物病院に相談します。
こんなときは、すぐ動物病院に電話してください
- 目をしょぼしょぼさせる、目を開けにくそう、前足で目をこする
- 白目が赤い、目のまわりが腫れている
- 目の表面が急に白く・青くにごった
- 片目だけ大きく見える、飛び出して見える
- 急に見えなくなったような様子(壁にぶつかる、動かなくなる)
- 涙や目やにが急に増えた
- 頭をさわられるのをいやがる、元気や食欲がない
- 水をたくさん飲む・おしっこが増えたうえで、目が白くなってきた
MSD獣医マニュアルでは、白内障の合併症として、水晶体からもれ出たものによる目の中の炎症(ぶどう膜炎)、緑内障、水晶体の位置のずれ(脱臼)などが挙げられています。獣医師が監修した解説でも、進んだ段階では緑内障、ぶどう膜炎、網膜剥離などの合併症のおそれがあるとされています。目の痛みや赤みは、早めに相談することが大切です。
病院ではどんなことをする?検査と治療の流れ
目の検査や治療の内容は、犬の状態や病院によって違います。ここでは一般的な流れだけを紹介します。
- 問診:いつから・どんな様子か、片目か両目か、ほかに気になる変化(水を飲む量など)を聞かれる
- 目の検査:目薬で瞳孔を広げて水晶体のにごりを見る検査や、細隙灯(スリットランプ)という器具で目の中を観察する検査などが行われる。目の中の炎症などの合併症を確かめるために、眼圧を測ることもある
- 全身の検査:糖尿病など、白内障の背景になる病気がないか、血液検査などで調べることがある
- 方針の相談:進み具合、合併症の有無、全身の状態をふまえて、経過観察・目薬・手術などを相談する
目薬での治療と、手術
獣医師が監修した解説では、目薬や飲み薬は進み具合をゆるやかにしたり症状をやわらげたりする目的で、主に初期に使われ、にごりを元に戻す方法はないとされています。にごった水晶体を取り除く手術は、主に進んだ段階で検討され、犬用の人工レンズを入れる方法があると紹介されています。
日本獣医師会の会報では、犬用の眼内レンズが使えるようになってから、白内障の手術は見え方を取り戻すための手術へと変わってきたこと、手術がうまくいっても目の中の炎症は起こるため、術後の薬による治療がとても大切であることが紹介されています。
手術には全身麻酔が必要で、特別な設備が必要なため、対応できる病院は限られるとされています。術後は毎日の点眼や通院が続くので、家族が点眼を続けられるか、愛犬が点眼に協力できるかも、相談のときに話し合っておきましょう。
老犬の白内障。シニア犬で気をつけたいこと
「年だから」で終わらせない
年をとった犬の目が白くなると、「年だから仕方ない」と思いがちです。けれど、核硬化症なのか白内障なのか、合併症が起きていないか、背景にほかの病気がないかは、診てもらわないとわかりません。定期的な健康診断のときに、目も一緒に診てもらうと安心です。
手術を考えるときは、全身の状態も一緒に
シニア犬では、心臓や腎臓など全身の状態によって、麻酔や手術の負担が変わります。獣医師が監修した解説でも、全身麻酔が必要なため子犬や高齢の犬はリスクが高いとされています。手術をするかどうかは、目の状態だけでなく、全身の状態、術後のケアを続けられるか、愛犬の性格などをふまえて、かかりつけの獣医師と一緒に考えましょう。手術をしない選択をしても、家での工夫で落ち着いて暮らしている犬はたくさんいます。
白内障は寿命に関係する?
「犬 白内障 寿命」と調べる方もいます。白内障は目の病気で、それだけで寿命が決まるわけではありません。ただ、糖尿病などほかの病気がきっかけになっていることもあるため、全身の様子も含めて相談することが大切です。愛犬の年齢の目安は犬の平均寿命にまとめています。
目が見えにくい犬との暮らしの工夫
見えにくくなった犬は、においや音、足の裏の感触、家族の声を手がかりに暮らしていきます。家の中を「いつも同じ」に保つことが、いちばんの安心につながります。
家でできること
- 家具や水・ご飯の器、寝床、トイレの位置を変えない
- さわる前に名前を呼び、声をかけてからそっとふれる
- 階段や段差、玄関にはゲートをつけ、落ちないようにする
- 家具の角や、ぶつかりやすい場所にクッション材を貼る
- 床に物を置かない。コードや小物を片づける
- すべりにくいマットを敷き、通り道を足の感触でわかるようにする
- 夜は足元が見える程度の明かりをつけておく
- 散歩はいつもの道を、リードを短めに持ってゆっくり歩く
- 「ストップ」「段差」など、短い声かけを決めて家族で同じ言葉を使う
- 処方された目薬は、決められた回数を守ってさす。続けにくいときは病院に相談する
- 目をこすらないよう、気にするときはエリザベスカラーについて病院に相談する
鈴のついたおもちゃや、においのするおやつを使った遊びは、見えにくい犬でも楽しめます。家族が出かけるときや帰ってきたときも、ひと声かけてあげると安心します。
見えにくさから夜に落ち着かなくなる犬もいます。夜鳴きが気になるときはシニア犬の夜鳴きも読んでみてください。
犬の白内障の治療費は?
費用は、検査の内容、目薬か手術か、入院日数、病院によって大きく変わります。全国でそろった公的な統計は見つかっていません。参考として、ペット保険会社が提供した治療費の例を紹介します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 診察 | 1,500円 |
| 入院(5泊6日) | 15,000円 |
| 検査 | 27,000円 |
| 全身麻酔 | 25,000円 |
| 手術 | 435,000円 |
| 点滴 | 12,000円 |
| 処置 | 9,000円 |
| 注射 | 2,700円 |
| お薬 | 5,600円 |
| 合計 | 532,800円 |
出典:価格.com保険「犬の白内障」(獣医師 三宅亜希 監修)に掲載の治療費例(第一アイペット損害保険の提供。ボストン・テリア3歳、手術1回・入院6日)(2026年10月23日に確認)。実際の支払い例や平均を示すものではありません。
手術を考えるときは、片目か両目か、術前の検査や術後の通院が含まれているかを確かめて、見積もりを出してもらいましょう。
これは1つの例で、平均ではありません。手術の前には、術前検査、手術・入院、術後の通院や目薬まで含めた見積もりを出してもらいましょう。ペット保険に入っている場合は、補償の対象になるかを保険会社に確かめてください。保険の選び方はシニア犬のペット保険にまとめています。
病院で聞くこと
目の診察では、聞きたいことを事前に書き出しておくと落ち着いて話せます。記事の最後に、印刷して使える「病院で聞くことリスト」を用意しています。特に、次の3つは最初に確かめておくと安心です。
- 今の状態:白内障か別の変化か、片目か両目か、どのくらい進んでいるか
- 家でしてほしいこと:目薬の有無とさし方、気をつけて見ておくこと
- すぐ電話してほしい様子:どんな目の変化があったら、次の予約を待たずに連絡すればいいか
今の愛犬の暮らしの状態を整理するために、介護ステージチェックも使ってみてください。目の様子で急いだほうがいいか迷ったら、すぐ病院か確かめるも参考にしてください。
よくある質問
犬の白内障は、寿命に関係しますか?
白内障そのものが寿命を決めるわけではありません。ただ、白内障は糖尿病などほかの病気が背景にあることもあるため、目の変化に気づいたら全身の状態も含めて診てもらうと安心です。愛犬のこれからについては、かかりつけの獣医師に相談してください。
目が白っぽいのは、全部白内障ですか?
年をとった犬では、核硬化症という加齢による変化で、目が青白っぽく見えることがあります。白内障とは別のものとされていますが、見た目だけで飼い主が区別するのはむずかしいため、動物病院で診てもらいましょう。
白内障は目薬やサプリで治りますか?
にごった水晶体を元の透明に戻す方法は、今のところないとされています。目薬などは、進み具合や合併症に合わせて獣医師が判断するものです。市販のサプリなどを使う前に、かかりつけの獣医師に相談してください。
シニア犬でも白内障の手術はできますか?
手術は全身麻酔で行い、術後も点眼や通院が続くため、年齢だけでなく、心臓や腎臓など全身の状態、目のほかの病気の有無、点眼に協力できるかなどをふまえて判断されます。できるかどうかは、眼科をみている動物病院で相談してください。
白内障の手術費用はどのくらいですか?
病院や入院日数で大きく変わります。ペット保険会社が提供した例では、手術1回・入院6日で合計532,800円というケースが紹介されています(平均ではありません)。手術を考えるときは、事前に見積もりを出してもらいましょう。
白内障について、病院で聞くことリスト
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- 白内障か、核硬化症など別の変化か
- 今どのくらい進んでいるか(片目か両目か)
- ほかの目の病気(ぶどう膜炎・緑内障など)が起きていないか
- 糖尿病など、全身の検査が必要か
- 目薬が必要か。さし方と回数
- 手術を考えられる状態か。できる病院はどこか
- 手術の費用の見込み(検査・入院・術後の通院)
- すぐ電話してほしい目の様子(痛がる・赤い・急に見えない など)
- 次の検査はいつか
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-hakunaisho/
参考にした情報
- MSD Veterinary Manual「Diseases of the Lens in Animals」
- オリコン ペット保険「犬の白内障」(ガイア動物病院 院長 松田唯 監修)
- 価格.com保険「犬の白内障」(獣医師 三宅亜希 監修、治療費例は第一アイペット損害保険の提供)
- 日本獣医師会 会報「解説・報告(最近の動物医療)」犬の白内障手術について
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
- 出典と数字を確認し、確認できなかった点の書き方を直しました。
内容の誤りや古い情報にお気づきの方は、お問い合わせからお知らせください。
この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。