犬の脂肪腫とは?気づくサインと検査の流れ、家での過ごし方
この記事の監修:獣医師 氏名非公開
体に関わる記事(受診の目安・家でのケアなど)は、獣医師が内容を確認しています。氏名は公開していません。
この記事のポイント
- 犬の脂肪腫とは、脂肪の細胞が増えてできる、皮膚の下のしこりのことです。犬でよく見られる良性の腫瘍のひとつとされ、年をとった犬や太り気味の犬に多いと説明されています。
- やわらかく、皮膚の下で動くしこりとして見つかることが多い一方、ほかの腫瘍も似た感じになることがあり、さわった感じや見た目だけでは脂肪腫と決められないとされています。
- 新しいしこりは、小さくても一度病院で診てもらいましょう。病院では細い針で細胞をとる検査などで調べるのが一般的です。急に大きくなる、かたくなる、痛がる、歩きにくそうなときは早めに相談を。
- 脂肪腫と言われて様子を見る場合も、大きさ・かたさ・場所を写真と定規で記録し、変化があれば再受診します。
犬の脂肪腫は、脂肪の細胞からできる皮膚の下のしこりで、犬でよく見られる良性の腫瘍のひとつとされ、年をとった犬や太り気味の犬に多いと説明されています。やわらかく、皮膚の下で動くしこりとして見つかることが多いのですが、ほかの腫瘍も似た感じになることがあり、さわった感じや見た目だけでは脂肪腫と決められません。新しいしこりに気づいたら、小さくても一度動物病院で診てもらい、必要な検査で確かめてもらいましょう。急に大きくなる、かたくなる、痛がる、歩きにくそうにするときは、早めに相談してください。
このページでは、どんな病気か、気づくサイン、早めに相談したいサイン、病院で行われること、シニア犬で気をつけたいこと、家での記録と過ごし方、費用の考え方を順に紹介します。しこりが脂肪腫かどうかの推測はしません。迷ったら、かかりつけの動物病院に相談してください。
犬の脂肪腫とは?どんな病気?
犬の脂肪腫(しぼうしゅ)とは、脂肪の細胞が増えてできる腫瘍のことです。多くは皮膚のすぐ下にでき、ふれると丸いしこりとしてわかります。
獣医師が監修した解説では、脂肪腫は脂肪細胞が原因の良性腫瘍で、中齢以降に多く見られるとされています。米国のコーネル大学獣医学部の解説でも、犬でもっともよく見られる良性腫瘍のひとつとされ、1つだけのことも、いくつもできることもあると説明されています。
脂肪腫にもいくつかのタイプがある
海外の獣医大学などの解説では、脂肪のしこりには次のようなものがあると説明されています。
| 種類 | どんなものか |
|---|---|
| 脂肪腫(ふつうのもの) | 皮膚の下にできる、ゆっくり大きくなる良性のしこり。胴体や足に多い |
| 筋肉の間などにできるもの | 筋肉と筋肉の間など、深いところにできることがある。かたく感じることもある |
| 浸潤性脂肪腫 | まわりの筋肉などに入りこむように大きくなるタイプ。ほかの場所に広がるものではないが、とりきるのがむずかしく、再発しやすいとされる |
| 脂肪肉腫 | 脂肪の細胞からできる、まれな悪性腫瘍。まわりの組織に入りこみやすいとされる |
出典:Cornell University Riney Canine Health Center「Lipomas in dogs」、Texas A&M College of Veterinary Medicine「Fatty tumors are nothing to fear」、Canadian Veterinary Medical Association「Lipomas in Dogs」、University of Guelph Animal Health Laboratory「Infiltrative lipoma」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
カナダの大学の検査機関の報告では、過去10年に犬と猫で脂肪腫と診断されたもののうち、8〜9%が浸潤性のものだったとされています。また、米国のテキサスA&M大学の解説では、浸潤性のものは針で細胞をとる検査だけではふつうの脂肪腫と見分けられず、CTなどの画像検査や手術で確かめると説明されています。
かかりやすい犬
コーネル大学の解説では、年をとった犬、太り気味の犬、ラブラドール・レトリーバーなど一部の犬種に多いとされています。カナダ獣医師会の解説でも、年をとった犬に多く、太り気味・肥満の犬でできやすいと説明されています。若い犬や中年の犬にできることもあります。
犬の脂肪腫の症状は?気づくサイン
脂肪腫は、多くの場合、痛みなどの症状がなく、なでているときやシャンプーのときに「しこり」として気づくことがほとんどです。海外の獣医大学などの解説では、次のような特徴が挙げられています。
| よく説明される特徴 | どんな様子か |
|---|---|
| やわらかい | ふにゃっとしている。大きくなるにつれてかたく感じることもある |
| 動く | 皮膚の下で、指で押すと少し動く |
| 丸い | 丸いことが多いが、形がいびつなこともある |
| ゆっくり大きくなる | 何か月〜何年かけて少しずつ大きくなる。とても大きくなることもある |
| 痛がらない | さわっても痛がらないことが多い |
| できやすい場所 | 胸やお腹、わき腹などの胴体、足 |
出典:Cornell University Riney Canine Health Center「Lipomas in dogs」、Texas A&M College of Veterinary Medicine「Fatty tumors are nothing to fear」、PDSA「Skin lumps on dogs」、Canadian Veterinary Medical Association「Lipomas in Dogs」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
「やわらかくて動くから脂肪腫」とは決められない
ここがいちばん大切なところです。上の表は、脂肪腫によく見られる特徴です。表にあてはまるからといって、脂肪腫だとは決められません。
- テキサスA&M大学の外科腫瘍学の専門医は、さわった感じを判断の手がかりにしてはいけないと話しています。
- コーネル大学の解説でも、似た感じのほかの腫瘍ではないことを確かめるために、検査がすすめられることが多いとされています。
- 国内の獣医師が監修した解説では、良性か悪性かは見た目だけでは判断できないため、大きさや愛犬の様子に関係なく、病院で検査を受けることがすすめられています。
たとえば、皮膚の腫瘍の中でよく見られる肥満細胞腫も、脂肪のかたまりのようにやわらかく見えることがあると説明されています。くわしくは犬の肥満細胞腫にまとめています。家族やインターネットの情報で「たぶん脂肪だから大丈夫」と決めずに、一度病院で確かめてもらいましょう。
早めに病院に相談したほうがいいサインは?
脂肪腫と言われたしこりも、まだ診てもらっていないしこりも、次のようなときは、次の予約を待たずに早めに動物病院に電話してください。
こんなときは、早めに動物病院に電話してください
- 新しいしこりに気づいた(小さくても、まだ診てもらっていないもの)
- しこりが数週間で目に見えて大きくなった
- 前よりかたくなった、動かなくなった、形が変わった
- しこりが赤くなった、出血している、ただれている
- さわると痛がる、しきりになめる
- わきの下や足のつけ根などのしこりで、歩き方がおかしい、足を引きずる
- しこりのほかに、元気・食欲がない、体重が減ったなどの変化がある
カナダ獣医師会の解説では、脂肪腫はふつうとてもゆっくり大きくなるため、急に大きさが変わったときは獣医師に診てもらうべきとされています。コーネル大学の解説でも、とらずに様子を見る場合は、大きさ・かたさ・痛がる様子の変化に気をつけるよう説明されています。
病院ではどんな検査・治療をする?
検査や治療の内容は、しこりの場所や大きさ、愛犬の状態、病院によって違います。ここでは、獣医師の解説や海外の獣医大学の資料で紹介されている一般的な流れを紹介します。
検査の流れ
- 問診・体の診察:しこりの場所、大きさ、かたさ、動くかどうか、ほかにしこりがないかを確かめる
- 細い針で細胞をとる検査(細胞診):しこりに細い針を刺して細胞を少しとり、顕微鏡で見る。麻酔をせずにできることが多い
- 切りとって調べる検査(病理検査):はっきりさせる必要があるときや、手術でとったときに、専門の病理医が組織を調べる
- 画像検査:深いところにある、まわりに入りこんでいる疑いがあるときなどに、超音波やCTなどで広がりを見ることがある
国内の獣医師が監修した解説では、細い針で細胞をとる方法でもある程度どんな腫瘍かがわかることがあり、確定するには切除して病理検査をする必要があるとされています。どの検査をするかは、しこりの様子と愛犬の体への負担を考えて獣医師が判断します。
脂肪腫と言われたら:様子を見るか、とるか
| 選択肢 | 検討されることがある場合 |
|---|---|
| 様子を見る | 検査で脂肪腫と確かめられ、生活に支障がない場合。大きさなどの変化を定期的に確かめる |
| 手術でとる | わきの下や足など動きのじゃまになる場所にある、大きくなってきた、筋肉の間など深いところにある、浸潤性のものが疑われる場合など |
出典:Cornell University Riney Canine Health Center「Lipomas in dogs」、Texas A&M College of Veterinary Medicine「Fatty tumors are nothing to fear」、Canadian Veterinary Medical Association「Lipomas in Dogs」をもとに編集部作成(2026年10月23日に確認)
テキサスA&M大学の解説では、多くの脂肪腫は手術を必要とせず、大きさの変化を見守ることが多いとされています。コーネル大学の解説では、わきの下にできたものは足の動きをさまたげることがあるため、とることがすすめられる場合があり、大きくなる前にとることで手術のあとのトラブルを減らせることもあると説明されています。
シニア犬の脂肪腫で気をつけたいこと
しこりが増えても、新しいものはひとつずつ
年をとると、体のあちこちにしこりが見つかることが増えます。PDSAは、すでに問題のないしこりがある犬でも、新しいしこりは別のものの可能性があるので、ひとつずつ診てもらうことをすすめています。「前に脂肪腫と言われたのと同じだろう」と決めず、新しいものは病院で伝えましょう。どのしこりが「いつ、どの検査で、何と言われたか」を記録しておくと、診察がスムーズです。
手術をするか迷うとき
年をとった犬では、心臓や腎臓などの持病によって、麻酔の負担も考える必要があります。とった場合ととらなかった場合に考えられること、手術の前に行う検査、費用を獣医師に聞いたうえで、家族で決めてかまいません。
体重を見守る
太り気味であることは、脂肪腫ができやすい要因のひとつとされています。体重は、年をとった犬の足腰や心臓などのためにも大切です。目標の体重やごはんの量は、獣医師と相談して決めましょう。体重を減らせばしこりが小さくなるかどうかは、このページでは確かな情報を確認できていません。
定期的な健康診断のときに、記録しておいたしこりの写真と地図を見せて、一緒に確認してもらうのもよい方法です。健康診断についてはシニア犬の健康診断にまとめています。
脂肪腫と言われたら、寿命に影響する?
「脂肪腫 寿命」と調べる方もいると思います。脂肪腫は一般に良性の腫瘍とされていますが、しこりが本当に脂肪腫かどうか、どこにできているか、大きさ、ほかの病気、年齢などで、考えることは一頭一頭違います。このページでは、寿命への影響の数字はお伝えしていません。
不安なときは、かかりつけの獣医師に次のことを聞いてみてください。
- このしこりは、どの検査で脂肪腫と確かめられたか
- 様子を見る場合、どのくらいの間隔で、何を確かめるか
- どう変わったら、もう一度受診したほうがいいか
犬の年齢の目安は犬の平均寿命にもまとめています。
脂肪腫がある犬との家での過ごし方
家でできること
- しこりの大きさ・かたさ・場所を、決めた間隔(月1回など)で記録する
- 写真は、同じ距離・同じ角度で、定規を添えて撮る
- 体の図にしこりの場所と番号を書いた「しこりの地図」をつくる
- 自分で針を刺す、つぶす、もむ、市販薬を塗ることはしない
- 首輪やハーネス、服がしこりにこすれないよう、位置や種類を見直す
- トリミングのときは、トリマーさんにしこりの場所を伝えておく
- わきの下や足のしこりがある場合は、歩き方や立ち上がり方の変化を見ておく
- 体重を月1回量り、ごはんやおやつの量は病院と相談した量を守る
- 大きくなった、かたくなった、痛がるなどの変化があれば、病院に電話する
しこりを見つけると心配になりますが、記録して、病院で確かめてもらう。それだけで飼い主としてできることは十分にしています。毎日なでるときに全身をさわる習慣をつけておくと、小さな変化にも早く気づけますし、愛犬にとっても安心の時間になります。記録の取り方は犬のイボ・しこりでもくわしく紹介しています。
脂肪腫の検査や手術にかかる費用は?
費用は、検査の内容(細胞診、病理検査、画像検査)、手術の有無と範囲、体の大きさ、病院によって大きく変わります。脂肪腫だけの全国でそろった公的な統計は見つかっていません。
検査や手術の費用は、腫瘍の種類や大きさ、治療の内容、病院によって大きく変わります。出典のはっきりした統計は見つからなかったので、検査や手術の前に見積もりを出してもらいましょう。
検査の前に、「細胞診でいくらか」「手術をする場合はいくらか(麻酔前の検査や入院を含めて)」を聞いておくと安心です。ペット保険に入っている場合は、補償の対象になるかを保険会社に確かめましょう。保険の選び方はシニア犬のペット保険にまとめています。
病院で聞くこと
受診のときは、次のことを聞いておくと、家での見守り方が考えやすくなります。この記事の最後に、印刷できる記録メモも用意しています。
- このしこりは、どんな検査で何がわかったか
- 様子を見るか、とるか。それぞれのよいところと負担
- 様子を見る場合、家で何を、どのくらいの間隔で確かめるか
- どう変わったら、すぐ連絡したほうがいいか
- 次の受診・検査はいつか
- 費用の見込み
ひとりで聞くのが不安なときは、メモを持っていく、家族と一緒に行く、説明をメモしてよいか聞く、といった方法もあります。症状ごとに急いだほうがいいか迷ったら、すぐ病院か確かめるも参考にしてください。
よくある質問
やわらかくて動くしこりなら、脂肪腫と考えていいですか?
やわらかく動くことは脂肪腫によく見られる特徴とされていますが、ほかの腫瘍も似た感じになることがあると説明されています。米国の獣医大学も、さわった感じを判断の手がかりにしてはいけないとしています。脂肪腫かどうかは、病院で細胞を調べるなどして確かめてもらいましょう。
脂肪腫は、とったほうがいいですか?
脂肪腫と確かめられたものは、多くは手術をせずに様子を見ることがあると説明されています。わきの下など動きのじゃまになる場所にできた、大きくなってきた、筋肉の間に入りこんでいる、といった場合には手術が検討されることがあります。愛犬の場合どうするかは、年齢や体の状態をふまえて獣医師と相談してください。
脂肪腫は、寿命に影響しますか?
脂肪腫は一般に良性の腫瘍とされていますが、しこりが本当に脂肪腫かどうか、どこにできているか、大きさ、ほかの病気などによって考えることは変わります。このページでは寿命への影響の数字はお伝えしていません。気になるときは、かかりつけの獣医師に聞いてみてください。
脂肪腫がいくつもできています。全部検査が必要ですか?
英国の動物病院チャリティ(PDSA)は、すでに問題のないしこりがある犬でも、新しいしこりは別のものの可能性があるため、ひとつずつ診てもらうことをすすめています。どれをどう調べるかは、獣医師と相談して決めましょう。
ダイエットをすれば脂肪腫は小さくなりますか?
太り気味であることは脂肪腫ができやすい要因のひとつとされていますが、体重を減らせばしこりが小さくなるかについて、このページでは確かな情報を確認できていません。体重の管理は、年をとった犬の足腰や体全体のためにも大切なので、目標の体重やごはんの量は獣医師と相談してください。
脂肪腫・しこりの記録メモ(病院に見せる用)
印刷して、終わったものに印をつけて使えます。
- しこりに気づいた日
- 場所(体の図に番号をつけて印をつける)
- 大きさ(定規で縦・横をmmで。毎回同じ測り方で)
- かたさ(やわらかい/かたい)と、前回からの変化
- 皮膚の下で動くか、下にくっついている感じがあるか
- 歩き方や足の動かし方に変化がないか
- さわるといやがる・痛がるか、なめるか
- 写真(同じ距離・同じ角度で、定規を添えて)
- 体重(月1回)
- 病院で「脂肪腫」と言われたしこりの番号と、その日付・検査の内容
いぬのながいき手帖 https://inu-nagaiki.com/articles/inu-shibosyu/
参考にした情報
- 価格.com保険「犬のしこり」(獣医師 三宅亜希 監修)
- Cornell University College of Veterinary Medicine, Riney Canine Health Center「Lipomas in dogs」
- Texas A&M College of Veterinary Medicine & Biomedical Sciences「Fatty tumors are nothing to fear」(Pet Talk, 2018年9月6日)
- Canadian Veterinary Medical Association「Lipomas in Dogs」
- University of Guelph Animal Health Laboratory「Infiltrative lipoma: An entity to keep in mind」(AHL Newsletter 2025;29(4))
- PDSA「Skin lumps on dogs」
- オリコン ペット保険「犬の手術費用」(まさの森・動物病院 院長 安田賢 監修)
制度や料金は変わることがあります。最新の情報は、各機関・施設の公式サイトや窓口でご確認ください。
この記事の更新履歴
- 獣医師の監修を経て公開しました。
- 元データを確かめられなかった費用の数字を削りました。
内容の誤りや古い情報にお気づきの方は、お問い合わせからお知らせください。
この記事を書いた人
老犬の介護・預け先・お別れについて、環境省・厚生労働省・自治体などの公的な情報と、獣医師の監修をもとに記事を作成しています。受診の目安など体に関わる内容は、獣医師の確認を経たものだけを公開します。